チーム天狼院

オーソドックスの極致《天狼院通信》


様々なカメラマンさんに教わってきて、わかってきたことがある。

言い方は人それぞれだけれども、「世界観」「作家性」がプロカメラマンとして重要な要素になると。

たとえば、それはあえてオールドレンズである意味性能を「劣化」させたり、「華」などで飾ったり、日中シンクロなど「光」を華美にさせたり、レタッチで「幻」を構築したりと方法は様々あるだろうけれども、マーケティング的にいえば、その本質は、実にシンプルである。

競合との「差別化」だ。

ところが、「差別化」とは、他が模倣すれば、「差別」にならなくなる。

昨日、レタッチ講座の先生がこんなことを言った。

「最近、Instagramでフィルターかけているひと、あまりみなくなってきましたよね」

たしかに、そうだ。
流行りがけは、随分とInstagramのフィルターでビンテージな雰囲気を出している写真を見た。
最近は、あまり見かけなくなってきた。

それも、おそらく当初「差別」だったものが、みんながやるようになってもはや「差別」ではなくなったものだ。
つまり、この「差別化」は、一過性のものであって、消え行くものだ。

だとすれば、消えないものとは、いったい、何なんだろう。

おそらく、それは「本質的」なものだ。「本質的」なもののみが、流行の淘汰に流されない。
つまり、シンプルにして、オーソドックスなものこそ、残る。

前に、僕の写真の師匠のプロカメラマン榊さんが、初めて僕の写真に対してメッセージをくれた。

それがこの写真だ。

僕にとっては、何の変哲もない、試し撮りの写真だった。

「ちょっと、さき、座ってみて、光を調整するから」

そういって、三枚撮った中のひとつだ。
これを、榊さんは、

「時が封じ込められている。これがポートレートですよ」

と絶賛した。

僕は、もっと「差別化」して、「世界観」を創らないとと焦っていたときのことだったので、ちょっと混乱した。

でも、今なら、ちょっとわかる。

数百年前の肖像画を、僕らは美しいと思う。

それは、きっとオーソドックスだからだ。

ポートレートとは、そもそも、肖像画から来ている。

だとすれば、逆行するようだけれども、僕の目指すところは、そちらの方だ。オーソドックスにして、シンプル。

瞳にピントを丁寧に合わせて、人を肖像画として精緻に描き出す。
そして、その人のその時を、封じ込める。

これしかない。

幸い、僕は「差別化」をどうしてもしなければならない立場にない。カメラマンとして、広大な自由が担保されている。
いやなら、断ることもできる。何ら、政治的なことを気にする必要なく。
そして、僕はコンテストで評価されようなどは微塵も思っていない。

変な言い方だけれども、「世界観」や「作家性」が出てきそうになったら、それを削ろうと思う。意識的に、削ってしまおうと思う。
逆説的に、それを繰り返すことによって、知らないうちに僕の「普通」が、客観的に見た僕の「世界観」や「作家性」になるのかもしれない。

 

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