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社会に出てもなかなか使わない「二次関数」を中学校で学習する理由


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記事:庄島圭一(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「算数は解けるのに数学は解けない」
「小学校のころはもっと点数が良かったのに、どうして中学校になると成績が下がったんだろう」
なんて疑問、中学生の子を持つ親なら一度は感じたことがあるのではないだろうか。
 
小学校でこれまでやってきた算数という学問は、中学校から数学という名前に変わる。
急にxやyという文字だったり、「方程式」「関数」「図形」だったりという難しそうな言葉が出てくる。中学数学に苦手意識があり、勉強が嫌い、とか、楽しくないという声をよく耳にする。
 
勉強が嫌いな子ほど「社会に出てから方程式とか二次関数とか使わないからできなくて構わない」という言葉を口にするイメージがある。少なくとも僕は中学生の頃、この言葉を口にした記憶がある。当時は全く意味が解らない問題を、なんで50分も時間を使って考えないといけないんだ、と不満しかなかった。
 
確かに、放物線を使って何かを作るような仕事をしているわけではない僕は、二次関数を社会で使った記憶がない。平方根なんて学習したけど、社会に出て8年、生活の中でルート(√)なんて使ったことがない。正直、15年前の「どうせ使わないじゃないか」という自分の言葉はいまだに間違っていないと考えている。
 
おそらく、中学生相手に勉強を教える仕事に就かなければ、僕は一生当時の記憶を思い出すことはなかっただろうし、「勉強ができることと大人になって経済的な成功を掴むことは全く関係がない」なんて暴論を振りかざしていただろう。勉強なんてしなくていい、人を見ろ、社会を見ろ、なんて言って、
子どもに選ばせない親になっていたかもしれない。
 
ところがそうはならなかった。仕事で2年ほど、子どもと接しながら勉強する意味を考える時間があった。更に不思議なことに、数学の情報を収集する中で、学生時代に学んだはずの数学を、社会人になって学び直す人が多いということを知った。技術の進歩によって生活がビックデータという数値に変わることになり、人の行動が統計になる時代が来た。ビジネスに応用ができるからといって、社会人が改めて数学を学習しているのだ。この時期の経験を通して僕は、中学校で二次関数を学習したほうがいいと考えるようになった。
 
数学は、すべての問題解決の基礎である。
 
「皿の上にリンゴが1個あります。もう1個リンゴを持ってきました。りんごはいくつになりましたか」などと問題からスタートした学習が、どんどんと複雑になっていく。分数になったり、小数になったり、負の数になったり、文字が出てきたり。脳の発達に伴い問題も抽象化していくなかで、「それって社会に出ても使わないじゃん」という問題と、中学校以降たくさん闘っていかなければならない。
 
中学校時代は「こんなに難しくて社会に出ても使わない学問を、なぜ勉強しないといけないのか」と考えていた僕だったのに、社会に出てからは「数学が面白い。だって問題と答えがあるんだから。」と言えるようになった。毎日、何から手を付けていいのかわからない問題ばかりだし、答えもこれでいいのかわからないし、という中で仕事をしている。中学数学は答えが最初から決まっていて、その答えに到達するルートは限られている。うまくいけば正解だし、途中でミスをすれば不正解。こんなシンプルな話はない。もし、当時の学生に戻れるのなら、当時とは比べ物にならないくらい勉強を楽しく行えるだろう。そのくらい社会で仕事をするということの大変さを痛感した。
 
働くという漢字は「人のために動く」と書く。目の前の人が何に困っているのか。どうすれば喜んでもらえるか、正解がない中で問題を設定し、仮説を立て、解決提案を行い、相手の反応によって価値になるかならないか、がわかる。同じサービスを提供していても、人によって受け取り方が変わり、満足という正解にも、不満という不正解にもなるのだ。なんてめんどくさい話だろうか。社会に出て働くということを普段から行っている人が大半だとは思うが、毎日、答えがない中で、頭で考え、手を動かし、正解かどうかもわからない中で、昨日よりも良い明日に向かって頑張っているのだ。こう考えると改めて、感謝と敬意を感じずにはいられない。
 
この仮説検証のプロセスを、学生時代の数学で一度体感しているのだ。抽象的な文字や方程式を相手に、与えられた問題文から情報を抜き出し、どうすれば解決できるかを考える。その問題解決の練習として、数学が機能しているのだ。
 
二次関数に限らず、数学が苦手になる理由にの一つに、「計算はできるけど文章題ができない」というものがある。文章題で求められるのは、計算力よりも「条件から、正しい式が立てられるかどうか」である。情報を整理し、答えにたどり着く仮説を立て、正しい式が立てられれば9割正解できたといってもいい。解決のために式を立てることが難しく、その練習を二次関数や方程式の文章題を通して行っているのだ。
 
社会に出たら、確かに二次関数を使う職業は限られてくる。しかし、二次関数よりも難しい問題と日々向き合うことになる。だから、中学生のうちに、問題と答えがはっきりしているうちに、考え方を理解し、解く練習を行っておいたほうがいい。大人になってから、大きな利子となってきっと返ってくるのだから。
 
 
 
 
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2019-11-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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