「カメラと私」
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:清水洋二(ライティング・ゼミ日曜コース)
カメラは私にとっては欠かせないものである。ただ、それは仕事として必要なもので、仕事以外のプライベートでは欠かせないものではない。
(ここでいうカメラとは一眼レフのカメラをさす)
何が言いたいかと言うと、私にとってカメラは単なる仕事道具として必要なだけあって、それ以外の場面では何ら無くても困らないものなのだ。
だからカメラを持ち歩くことはないし、もちろん撮ったりする機会はそれに応じてほとんどない。たまに子供の写真を携帯で撮るぐらいで、それもたまにしかない。
それぐらい私のプライベートではカメラは必要ないものである。
そんな私にとって必要性が少ないカメラについて記事を書こうと思ったかと言うと、数日前にある人にカメラの基礎を教わったことが原因である。
ある人とは仕事でご一緒する機会が多いカメラマン。もう数年来の付き合いで、写真の指示なども言わずとも理解してくれる、信頼の置ける方。そんな方に私から無茶なお願いをして、カメラの基礎を教えて欲しいと懇願をして、ようやく叶ったのが数日前。
どんな内容かを簡単に説明すると、動物園やあるお寺に行って、そこで一緒になって撮影を行い、どのように撮影するかをレクチャーしてもらうという半日。
私は当日までレクチャーということで、技術を教えてもらえるものばかりと思っていた。カメラの設定方法、ピントの合わせ方など。プロのカメラマンだからこそ培ってきたノウハウの一部を教えてもらい、カメラの技術が上がる方法。そんな夢のようなレクチャーになると心を弾ませていた。
簡単に挨拶を済ませて、世間話をしている中、さぁいよいよプロカメラマンによるノウハウを教えるレクチャーが始まると身構えていたところ、思っていないような言葉が飛び込んできた。
「今日技術を教えてもらえると思っているかもしれないが、今の君にとっては写真の技術は必要ない。というより技術は後からいくらでも付いてくる。まずは写真を撮りたくなるかどうか。今日はそれを分かることだけで十分です」
正直、そんな言葉がくるなんて想像もしておらず、何とか振り絞って「はい」とだけ答えるのが精一杯であった。
言うならば精神論。いつもなら「そんな当たり前のこと知っているよ」とイラっとするところであったが、このカメラマンの方は私の性格も重々知っているからこそ出た言葉であり、私の課題が全てこの言葉に表されている。
最初に話した通り、私が仕事以外ではカメラを撮る習慣がないことを踏まえて、いわば諭すように言った言葉。
私は頭の回転が早い方ではないので、理解するまで少し時間が掛かってしまったのだが。
確かに私は今まで写真を撮りたいと思ったこともなく、カメラを持ち歩くなんて持っての他。カメラを持ち歩いている人を見ると「何をカッコつけて」とそんなことを思う人間である。そんな人間が技術だけを教わってからと言って、カメラが上達するわけなんてない。ここまでレクチャーが始まってももの10分ほどの話。最初からカメラマンの方はそんな私の課題を完全に見抜いていたのである。
そしてその後は、動物園に行き写真を撮ることが始まった。そこでただ、撮るだけではなく簡単なテーマが与えられた。それは16枚の動物園のカタログ。
出来ればお客様に買ってもらえるような、そんなカタログを作る為の写真を撮るというテーマ。最初からなかなかハードなテーマだとは思ったが、とにかくまずは撮ろうと思い、思い思いに写真を撮っていく。
今まで動物園に行ったことはあったが、写真を撮ると思って行ったことはなく、そう思うと景色が全く違って見えることを何だか不思議に感じてしまった。
そんな今まで感じたことのような感情の中、写真を撮っているとカメラマンの方から、独り言のようにこのような言葉を話し出した。
「カメラマンをしていると世の中の疑問や不思議なことが考えることが多くなる。そして私はその疑問を解決する為に写真を撮っているだけです。だから動物を撮る時にも、この動物は何で耳が長いのだろうか? なぜこのような模様があるのか? などをまずは観察をすることから始まる。そして自分なりの答えを写真に撮っていく。写真というのはただそれだけなんです」
この言葉を聞いた後に、自分でもふと考えてみた。確かに私は仕事で撮影を行う時には、この商品をどのように写したら特徴が出るだろうかと、角度を微調節で調整しながら写真を撮っている。仕事ではそれはごく当たり前のようにしていることであるが、それはあくまでも仕事として行っているだけであり、それをいざ仕事というフィルターを外すとこんなにも出来ないものなんだと。
そして言われた通りに意識をしながら撮影をしていると、確かに一つ一つのものの見方が変わっていくのを実感する。今まで思ってもいないような疑問がどんどんと出てきて、写真を撮っていった。いつしか私は自ら自分の意思で写真を撮るようになり、写真の面白さに初めて触れたような気がした。
そんな私を見てカメラマンの方からこんな一言。「今日の目標は達成したようですね」
私の写真を撮る姿を見て、少し喜んでいるような顔で呟いた。
このライティングゼミのように、人生が変わる、そんな予感がしている。これからはどこに行くにもカメラを持ち歩くことになりそうだ。
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