年賀状は自分への贈り物だ
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記事:hikari(ライティング・ゼミ冬休み集中コース)
『年賀状は、贈り物だと思う』
このキャッチコピーをご存知の方も多いだろう。これは、2007年の日本郵政の広告コピー である。
これはとてもうまく言ったものだと思う。年賀状を贈り物として捉えると、年賀状を出すことも書くことも“やってみよう”と思えるから不思議である。この短いキャッチコピーの中に、年賀状を出したいと促すような魅力がたくさん詰まっている。
新聞記事でこのキャッチコピーを、恥ずかしながら昨年末に知った。
年賀状を、出すのはもうやめようかと思っていた矢先に出会ってしまい、あんなに嫌々書いていた年賀状作成が、実に楽しくて仕方なくなったのだ。
私は、字がとても下手であり、コンプレックスでもあった。習字の時間は、筆を持つ手や、爪の中まで真っ黒になり、名前を書く細い文字などは到底みれたものではなかった。
習字だけではなく普段の手書きの字すら、とても読めたものではない。
ラブレターを書こうものなら、おそらく字の下手さから振られるであろう。
私のように字が下手な方にも、朗報がある。
“筆文字アート”というものを見つけたのだ。
字が汚いというコンプレックスがある方にこそ、是非トライしてみてほしいものである。
ここでポイントなのは、ぺんてるから販売されている筆ペンを使うことである。特に、水性顔料が使われている、持ちて部分がグレーの筆ペンがおすすめである。
この筆ペンの何がすごいかと言うと、書いたそばからインクが即座に乾くのである。
文字がにじむことも、手でインクを引っ張ってしまい、用紙を汚す心配もない。それなのに、鮮やかな濃い黒色が発色されるのだ。
この筆文字アートの更にすごい所は、“人間だもの”でもお馴染みの、相田みつをさんのような味わいのある文字が書けるのである。
文字を文字として捉えて書くのではなく、文字を1つの記号と捉えて書くと、味わい深い字に大変身するのだ。
文字の縦部分だけをすごく太くしてみたり、書き順を敢えて変えて書いてみると、途端に文字がアートに変身する。まさに、文字を筆ペンでアートするのだ。
これは、字が下手な人ほど味わいのある文字を書ける傾向にある。
習字などを習っている方は、文字を書く基礎ができているからこそ、枠を外して自由自在に文字を書くことに苦戦しやすいのだ。
この魔法の筆ペンで、大きな丸を書き、その中に目と口を書き込めば、1つの絵が完成する。そこに、色鉛筆やパステルで色をつけると、もっともらしいアートにもなり得る。
年賀状の宛名も、この筆ペンで書けば、下手くそなりに味わいのある一枚に仕上がるだろう。
近年はデジタル化が進み、年賀状も印刷がほとんどである。宛名も裏面も全て印刷ということも、そう珍しくはない。DMのような味気ない年賀状をもらっても、何の感動も生まれてきやしない。正月早々にモヤモヤとしていたのだ。
形だけのやり取りなら、いっそのこと止めてしまおうと思い、年賀状を出すことをやめようと思っていたのである。
しかし、このキャッチコピーに出会ってしまい、私の中の何かに火がついたのである。
年賀状の捉え方をもう一度探ってみた。
年賀状が贈り物であるなら、このハガキ1枚にどのような贈り物を詰め込もうか? とワクワクしてきたのだ。
たかが年賀状1枚かもしれないが、思い返せば、年賀状にはたくさんの個性が詰まっていると思う。
「この人、普段の字からは想像できなかったけれど、筆を握ると実は達筆だったんだな」
「この人、絵がすっごく上手!」
「犬を飼っているのか! ペットのことが大好きなんだな」
など、普段から伺い知れない新たな一面やセンスを知れる機会でもあるからだ。
ハガキ1枚分のキャンバスには、書き手の個性が詰まっているのだ。
20代であれば、「結婚しました」などといったウエディング写真入りの年賀状も増えてくる時期だろう。
30代になれば、そこに家族が増えた家族写真に変化していく。“2歳になりました”“来年から小学生です”
毎年、成長していく姿に、幸せのお裾分けをいただけた気分にもなる。
旅先で撮った写真入りのものや、可愛らしいペットであったり、アーティスティックなデザインのものや、版画や手書きの年賀状もある。
全面がデジタル印刷であっても、どのようなテイストの絵をチョイスするのかにも個性が宿る。そこに、“来年こそは会いたいね!”“元気でやっていますか?”など、一言でも添えてあれば、貰った側も嬉しくなるものだ。
手書きの文字が添えてあると、途端に特別感が生まれる、と思っている。
それは、送る相手だけに添えた言葉であるからだ。そこには、書き手の“心と時間”という手間ものっている。
ハガキサイズのキャンバスに何を描くのか、それは自分自身を表現するツールに1つでもあると思う。
何がやりたいのか分からない……、と自分探しをしている方も多いだろう。
そんな方にこそ、身近な年賀状というキャンパスの中に、自分を探してみてはいかがだろうか。
自分はどのようなものが好きで、何が得意で、何を大切にしているのか等を知れるヒントが散りばめられていると思う。
年賀状を贈り物として捉えると、私はある一つのことをやってみたくなった。
私は趣味でタロットカードをやっている。そこで思いついたのが、お遊び感覚のおみくじを書き添えることだった。
一人一人の、その一年の運勢を占い、“ひかりのプチおみくじ”と銘打ってメッセージを書き入れてみようと思ったのだ。
これをやって書いている時間が、何ともワクワクして楽しかったのである。
そして、何よりも自分自身への贈り物だとも感じた。
どの様な年賀状にしたいのか、どの様なものを贈りたいのか、と思いを馳せる時間こそが、自分自身への最大のギフトだと気づいたのである。
それはまるで、誕生日のプレゼント選びにも似ている。相手の喜ぶ顔を想像して、あれこれプレゼントを選ぶ瞬間のように感じた。
デジタル化が進む時代であるからこそ、余計に手間をかけた手書きの贈り物は新鮮である。
年賀状には、書き手側にも贈り物がある。
一つ目は、相手を思いあれこれと想いを巡らせる時間。
二つ目は、“自分を知る”という、自分の内面を探求する時間である。
三つ目は、ハガキサイズに自己表現した自分を発表する(相手に送る)勇気を得られる。
時間と心を込めて、どんなものをキャンパスに描きたいか、考える時間はとても贅沢なのかもしれない。
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