「さあ、明日から再開だ」
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【2月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:更谷重之(ライティング・ゼミ冬休み集中コース)
「さあ、明日から仕事だ」
職場における私のお昼ご飯は、いつも自家製お弁当である。
米は、毎朝炊き立てを冷ましてからタッパに詰める。
出来るだけ、朝の準備時間は短縮したい。
そのために、出来ることは前の晩に済ませておくのが、私の流儀だ。
というわけで、毎晩就寝前のルーティンが、今日からまた始まる。
お米を研ぐ。
シャッシャッと研ぐ。
米の研ぎ方一つでも、味に違いが出るようだ。
京都の居酒屋でバイトしていた時によく叱責された。
「それは研いでるんとちゃう。洗ってるだけや」
メリハリをつけて。
時にやさしく、時に素早く。
全体を満遍なく研ぎ終えたら、タイマーON。一丁上がりである。
さて、これで明日の準備は終わったか。
いや、アイロンがけがまだだった。
形状記憶シャツだからって、油断はできないぞ。
アイロンのりをシュッと一吹き。
わずかに体重を預けつつ、一つ一つ皺を伸ばす。
毎晩何年も続けていると、一連の動作に無駄が無くなってくる。
さあ終わった。
ところで、ライティング課題の文章はどうなった。
そうだ、何一つ書けていなかった。
今日こそは、早めに書くと決めていたのに。書き始めても、ボツ、ボツ、ボツの山。
リーダビリティってなんじゃらほい。
読み手の価値を設定する?
私の文章にそんな価値があるんだろうか。私の人生に、第三者に読んでもらえるような魅力が、あっただろうか。
空しく時間だけが過ぎてゆく。
気づけば、締切期限が迫る。迫る。絶望迫る。
私は、書くことに藻掻いている。
今日は珍しく一日よく出歩いた。
課題文に書くネタを、探すためだ。
嬉しい出会いが、一つあった。
図書館で、ある一冊の本と出会えたのだ。
「あなたしか撮れない写真~写真表現の面白さ」
著者は、飯島幸永氏。
私にしか書けない文章を、ぼんやりと模索していた私にとって、無視できないタイトルだった。気づけば、近くの丸い読書椅子に座って読みふけっていた。
「心を無にして、被写体のイメージを膨らまそう」
素人には意味不明の文章だ。
撮影のプロが綴る、秘伝のタレとも言うべき技法なのかもしれない。ともあれ、一朝一夕に真似できる境地ではないだろう。
しかし、なぜか閉じるボタンが押せない。
理屈ではなく、私の心に寄り添う文章。優しく理知的な問いかけの一句一句から、目が離せない。
これは、家に帰ってもう少し読み進めたいから、借りることにした。
しまった、図書カードがない。
これだから、行き当たりばったりの散策は、困るんだ。しょうがないから、本は明日借りることにした。
写真の書籍に興味を抱いたきっかけ、それは写真とライティングに何か共通項があるような気がしたことだ。
撮影は、被写体の一瞬を、様々な角度から切り取る技法だと言う。
ライティングも、書くと決めたテーマを、自分なりの角度で切り取って文章化する。
言うまでもなく、表現テクニックは全く違う。
しかし、モノを見る眼力というか、感受性のようなものが無ければ良い作品にならない部分はとても似ているように思う。
思えば、天狼院ライティングゼミでは様々な表現技法を習った。
そして、ゼミ受講生を含めて天狼院に関わる皆様の、良い文章をひたすら読み漁った。
その中で気づいたことは、やはり素材。
技法は、味付けの塩こしょうのようなもので、勿論重要なのだがそれだけでは人を感動させられない。美味しくならない。
その点、WEB天狼院書店にアップされた文章は、書き手が本当に心を揺さぶられたテーマであることが分かる。
心揺さぶる体験を経なければ、読み手にとって価値ある文章とはならない。
それが私の出した暫定的な答えだ。
心揺さぶるとは、しかし難題である。
名作「自分の感受性くらい」でお馴染みの詩人、茨木のりこさんは言う。
「パサパサに乾いていく心を ひとのせいにはするな みずから水やりを怠っておいて」この言葉に、私は何度叱咤されたことだろう。
ことにデジタル全盛の現代において、ライトな(軽い)感動はそこここに転がっている。
感動は、演出という雅な包装に包まれて、画面の向こうからやって来る。
咀嚼の必要すらなく、勝手に体内へと流れ込んでくる。
ひと時、枝葉を濡らすスプレーには成り得ているだろう。
しかし、詩はそれを水やりと認めない。
水やりの大切さ。分かっているつもりなのだが、言うほど簡単なことではない。
だからこそ、ライティングは現代において一層価値あることだ。ライティングを通して、私は価値ある体験を得たい。願わくば、それを第三者に伝え、世に広めたい。
そのために。
恥ずかしくても、納得いかなくても、まずは課題提出をやりきってみせる。
9回与えられた提出機会は、決して強制されたものではない。
厳しくてしんどい、チャンスなのだ。
奇しくも、そのタイミングは令和2年の幕開けと重なった。
この一年を最高の一年とするために、明日もまた文章と向き合おう。
今日は駄文を書き綴っても、明日は感動に打ち震える素敵な出来事を綴れる、可能性がある。
やり切った先に、何が得られるのか。
やり切ってみないと、分からないじゃないか。
「さあ、明日から再開だ」
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