時間泥棒はこれを読め
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:高木信幸(ライティング・ゼミ 冬休み集中コース)
「そうそう、そうなんだよ」
と、お日柄のよいこの日に一冊の本を読みながら、その本の内容に激しく共感させられずにはいられなかった。
僕が常日頃思っていることと全く同じことがそこに表現されていた。
ちょっと考えてみて欲しい。
あなたにとって、時間とはなんでしょうか?
仮に、あなたの寿命が80年で今、30歳だとする。
そうすると、残された時間は50年、つまり438000時間だ。
笑っていても泣いていても、怒っていても、悲しんでいても、時間は一刻と寿命に向かって進んでいく。
ということは、時間とは命そのものなんではないだろうか。
と僕は考える。
だから、人の時間を奪うことは、大罪だ。
時間に遅れる、待ち合わせをすっぽかす、人を待たせる、そして、下手なスピーチをする。
僕は、話が長い人、つまらない人、退屈な人が苦手だ。
なぜなら、聞いている人の貴重な時間を奪っているからだ。
でも、そういう人に限って、その意識はない。
自分の話したいことを、話したいように喋って、聞き手が辟易としている様子なんて感じる感性もなく、一方的に話す。
聞き手の命の時間を奪っていることに何の罪悪感もないんだ。
僕には、結婚式場で勤めていた経験がある。
結婚式では、決まって新郎新婦にゆかりある人がスピーチをする。
そのスピーチがつまらないのなんの。
特に乾杯のスピーチで話が長いのは最悪だ。
ゲストは全員起立をして、片手にシャンパングラスを持っている。
それも関わらず、平気で長々とスピーチをする。
料理もどんどん冷めていく。
披露宴の時間も押していく。
シャンパングラスを持ったゲストの手はプルプルしてくる。
その場にいるゲストも会場スタッフも含めて、全員の心の中はきっと「はやくしろよ」だ。
僕は、サービス精神の欠如だと思っている。
たった一人のつまらない話のために、これだけ大勢の人に影響を与えているといことなんて思いもしないんだろう。
もちろん、中には素晴らしいスピーチをする方もいる。
スピーチの冒頭で聴衆の心を掴み、笑いもしっかりと入れて、ちゃんと新郎新婦の人柄やその人との関係性がわかり、最後にはほっこりさせて締めくくる、それでいて短く簡潔にまとまっている。
お見事! 天晴! と拍手を送りたくなる。
まさに、聞く価値あり。
結婚式のスピーチに限らない。
人前で話をする機会がある人は、聞き手の命の時間を頂いて話をしているということをもっと真剣に考え方がいいのではないだろうか、と思う。
僕がそんなことを考え出したのは、小学校のときからだ。
いかにも自分が正しいと正論を振りかざし、つまらない話を延々とする教師。
嫌気がさしていた。
大人になってもなんでこんなに、つまらない話を人前で平気でできるんだろう、と不思議で仕方なかった。
そういう人を僕は、時間泥棒だと本気で思っている。
そんなことを考えている僕の目の前に、奇跡の1冊が現れた。
一ページ目を開く。
そこには、スピーチの極意10カ条が書かれていた。
お、そうそう! 俺もそう思ってる! と思える内容だった。
そして、読み進めていくうちに、スピーチでやってはいけない注意点もちりばめられていた。
それにも、心底共感できた。
「そうなんだよ、その通りなんだよ」
まさに、スピーチの教科書だ。
その本の内容を簡潔に言うと、スピーチ下手の主人公がある女性との出会いで、スピーチが劇的にかわり、様々な苦悩や困難を乗り越え人生を変えていく、というものだ。
そして、これは自分にも重なった。
こんな偉そうなことを綴ってはいるが、僕自身も人前で話をするのが下手だった。
小学校の時に、1分間スピーチというものがあって、みんなの前に立ってスピーチをしなければならない。
まず、人前に立つと足が震える。
脇の下から変な汗をかいてくる。
恥ずかしいのと、何を喋ったらいいのかわからないのとで、1分も立たずに自分の席に戻ってしまう有様。
僕は、極力人前で話すことから避けてきた。
仮に人前で話すことがあっても、この地獄のような時間をいかにはやく終わりにするかだけを考え、なるべく短く話すようにしてきた。
スピーチ恐怖症と言ってもいいかもしれない。
でも、あるときから僕の話を聞く人で、こんなことを言う人が出てきた。
「わかりやすいね」と。
僕は、人前で話すのが本当に苦手だった。
わかりにくい話をして聞いている人に「わかりにくい」と思われるのが嫌だった。
だから、人前で話ときは、手短にわかりやすくすることだけを心がけてきた。
その超ネガティブな気持ちから生まれた、人前で話す技術が実は結構評判が良かったことに大人になって気が付いた。
大人になって人前で話す機会が増えたことや、他の人のスピーチを研究することで、上手に話せるコツみたいなものを自分なりに編み出した。
その結果、人前で話をしても緊張したり、何を喋ったらいいんだろ、という気持ちなることはなくなった。
ついには「話が面白い」「感動した」など言ってもらえるようになった。
話が上手くなることで人から認めてもらえ、昇給したり、昇進昇格した。
新しい出会いがあり、素晴らしい世界をみることができた。
要は人生を変えることができた。
人前で話をするスキルってのは、人生を豊かにするために必要不可欠な要素なんだ。
でも、残念ながらそれほど大事なスキルを、しっかり学んでいる人は驚くほど少ない。
もっと、多くの人に人前で話すスキルを学んで欲しいと思っていた。
書店に行けば、数多くの人前で話すスキルについて書かれた本がある。
僕自身、かなりの数の本に目を通した。
でも、どれもピンと来なかった。
そんな中、出会ったのが、この本なのだ。
前置きがだいぶ長くなったが、この本は、他人の命の時間を平気で奪っている、時間泥棒にぜひ読んでもらいたい。
そうすれば、きっと人前で話すということに対する考え方が変わるだろう。
本を読み終えた後、あなたはきっとこう思う。
「あぁ、人前でスピーチをしたい」と。
そして、あなたのスピーチを聞いた聴衆からは
「素晴らしいスピーチだった。感動した」と称賛の声を浴びることになるだろう。
その本のタイトルは
「本日はお日柄もよく」
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