メディアグランプリ

スマホを捨てて、街へ出よう


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:杉本 知隆(ライティング・ゼミ特講)
 
 
スケートを滑れるようになるにはどうしたらいいか、と聞かれたら、今は迷わずこう答える。
「まずはスマホを置いて、実際に滑ってみましょう」
 
近くの公園にスケートリンクが出来た。これまでスケートとは無縁だった私にとっては興味の無い話であったが、6歳の娘をその公園に連れて行ったとき、スケートリンクを見つけた娘のスイッチが入ってしまった。その日は準備が不十分だったので、日を改めて連れていくことにした。
 
しかし、少し困ったことがある。
 
6歳児は、親が一緒に付き添わなければならないのだが、私は未経験者。優雅に滑れる自信がないばかりか、すってんころりんと転びまわるのを想像するだけで恥ずかしい思いになる。こども向けのスケート教室ならば、親が滑らずに済むが、親が興味ないものを子供に習わされるのに、高い金額を払うのも気が引けた。そもそもスケート場に行く話をうやむやにできないかと数日様子をみていたが、娘がスケート熱から冷める様子も無く、仕方がなく覚悟を決めていくことにした。
一方で、親も子も未経験でも何とかなるという自信もあった。スマホがあるからだ。
料理も趣味の園芸も大体のことはスマホで片づけてきた。
しかし、いつでも調べられると高をくくりすぎたせいか、結局スケート場に行く当日まで事前の下調べをせずに行くこととなった。
 
当日は案の定、大惨事。
私はよちよちとバランスを取りながら、壁伝いに歩くのが精一杯。娘はというと、果敢にも自分で進もうとするが、2、3歩進んでは転び、2、3歩進んでは転びを繰り返し、もはや滑っているというよりも転がりながら進んでいる状態であった。
まずい。親子ともどもセンスのかけらもないかもしれないぞ。
焦った私は、一人リンク外にでて、もう一度スケートの滑り方をスマホで調べた。
 
まずは、足を逆ハの字にして立って、バランスをとる。
ペンギンのイメージで、右足、左足交互に足を前に出して歩くことからはじめよう。
 
さすがは,インターネット。わかりやすい解説が出てくる。
よし気を取り直して,娘の方に向かうと、娘の笑顔が見えた。
 
「お父さん、出来たー」
 
いや、出来てはいない。出来てはいないのだが、確実に進歩している。先ほどとは比べられないくらいに、滑れているのだ。私がしこしことスマホで調べている間に、娘は身体で滑り方を覚えていたのである。その滑り方があっているかどうかは分からない。きっとプロが教えた方が早く覚えられるし、正確な滑りになるのだろう。でも、少なくとも私が、付け焼き刃の知識で教えるよりも早く、そして子どもが楽しめる程度には滑れるようになっているのである。
 
あぁ、これはまるでマシュマロチャレンジだ。
 
会社で受けた研修を思い出した。マシュマロチャレンジは、チームの連携を学ぶグループワークだ。マシュマロと割り箸とあといくつかの部材を利用して、工作物を作る。より高い工作物を作ったチームが勝ち。
「このマシュマロとそのマシュマロを箸で繋げれば強度が確保出来る」
グループに、建築や物理に強いメンバーがいたので、比較的好成績を収めた。
 
うまくいったことに満足していると講師の先生が言う。
「このマシュマロチャレンジにはネタばらしがあります」
 
先生は続けた。
「実は、このマシュマロチャレンジですが、子どもの方が成功しやすいというデータがあります。大人は、どうやってつくろうかと『設計』からはじめます。はじめから大きいものをつくろうとしてバランスを崩して失敗するのです。一方、子どもは、簡単に出来る小さなものからつくります。それを積み上げて大きくするのです」
 
そう、子供は試行錯誤を繰り返し、小さな成功体験を積み上げて、答えを導くのである。
今、目の前で起きている光景はまさにこれだった。
娘は何度も滑っては転ぶのを繰り返して、滑り方を体得していった。一方自分は、はじめから、カッコよく滑ること、あるいは転けてしまうことを恥ずかしがるあまりに、スマホで調べることに終始してしまったのだ。
つまり、研修での学びを全く活かすことが出来ていなかったのである。
 
トライアンドエラーを繰り返すことは、ビジネスでも人生でも重要だ。言われればそのとおりなんだけど、実生活に活かそうと思うと難しい。難しくしているのは、スマホの存在だと思う。
 
スマホがあれば、いつでも、どこでも、なんだって調べられる。なんでも調べられるがゆえに、すべて答えが分かってしまう気がすることが問題なのだ。
仕事でもそうだ。調べられるから、スマートにこなそうと思うあまり、「知らない」ということに対しておっくうになっている気がする。実際、インターネットで調べたことより、経験者に教えてもらった方が身になることが多々ある。
スマホで調べられることは答えとは限らないし、経験してみないと分からないと出来ないことも多いのだ。
そのことを、娘のスケートが教えてくれた。
スマホで調べられるのは、答えではない、ヒントである。解の公式は自分で考え、経験し、導き出す必要があるのだ。
 
娘とは今度またスケートに行く約束をした。今度はどんな滑りが出来るのか、今から楽しみである。
 
 
 
 
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2020-01-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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