母業はAmazon primeを超える
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記事:鈴木ゆうみ(ライティング・ゼミ平日コース)
「マーマ!!!」
寝室から息子に呼ばれ、わたしは寝室へ向かう。夜の家事と、お昼にやり残した仕事を終え、ようやく続きが気になっていた漫画本を開いた時だった。
「はあ……、今日も、か。」
と、頭では思いながら、これ以上泣かれて妹まで起こされたらたまらないと瞬時に脳が察知し考えるよりも先に体は寝室へと向かっていた。
我が家は、夫、息子(3歳)、娘(1歳)そしてわたしの4人家族。
第一子の息子が産まれた時、わたしは専業主婦だった。そして母になった私は「完璧ママ」を求めて彷徨った。
専業主婦なんだから、完母にする。1人時間は諦めます。
離乳食は手作りしなければならない。息子が食べないのは私の作り方が悪いの。
一時保育?仕事してないんだから子供はわたしがみるのが当たり前でしょう?
こうやって、どんどん自分を追い詰めた。それでも目の前にいる我が子はただただ愛おしくで、自分を犠牲にしてでも愛したい存在だった。
自分を犠牲にしていた月日も、あっという間に流れてしまい、愛しい我が子は二人となり、息子はお兄ちゃんになった。妹のことが大好きな息子。
1人より2人の方が楽だ、と思うほどに優しいお兄ちゃんになってくれた息子は大した赤ちゃん返りもなく育ってくれた。
そんな息子も4歳直前となり、保育園から帰宅した車を降りた時、泣きながらこんなことを言った。
「いつもママは妹ちゃんを抱っこしてるでしょ。今日はぼくを抱っこしてお家に帰って。この前も妹ちゃん抱っこで、ぼくが泣きながら歩いて帰ったんだから! 今日は絶対ぼくなんだから! 」
そうだった。つい1週間前も同じことが起こり、その時私は息子に歩かせた。遅れてきた赤ちゃん返り。きっと無理だよなあ〜と思いながら私はこう言った。
「そしたら、今日は妹ちゃんに歩いてもらうようにお願いしてみよっか。ママからお話しするから、息子くんも一緒に言ってくれるかな?」
これがこの時の私が息子にできる最大限の愛情表現だった。感情を剥き出しにしていいのであれば、引きずってでも歩かせるが、それではきっとまた明日も同じことを繰り返してしまう。
私の言葉を聞きながら、息子は妹に話しをするどころか、余計に大きな声で泣き始めた。きっと話しをしても妹が歩くはずがない。どうせ僕が我慢しなきゃいけない。とすでに察知しているかのように。
結局私は泣いている息子を車に残し、娘そして息子と別々に抱っこして帰宅した。
もちろん、優先されなかったと感じたであろう息子は帰宅後も泣き続け、
「妹ちゃんだけ、本当にずるいんだから! ママは意地悪なんだから! 」
と、耳栓したいレベルの大音量で怒った。
この状況、もしかしたら息子を優先して抱っこして連れて帰れば息子は満たされたのかもしれない。でも私はあえて息子を車に残し、2番目にした。
そして、帰宅後のリビングで二人を膝に抱え息子と話しをすることに。
「ママのこと嫌いになった?」
息子はまだ泣きながら
「ぼくが先に抱っこして欲しかった。妹ちゃんはいつもママママ言って、ママもいつも妹ちゃんを抱っこして、本当にずるいんだから! 」
「そっか。抱っこして欲しかったんだね。息子くんが1歳のときはね、ママとパパには息子くんしかいなくてね、どんな時も息子君のことが1番だったんだよ! いっぱい抱っこもしたし、夜ママは寝ずに一晩中抱っこしたことだってあるんだよ! それぐらい本当にたくさんたくさんママと一緒にいたの! 妹ちゃんはどうかな? 」
「でもぼくが赤ちゃんだった時は、ママママって言ってないんだから。」
間違いなく娘より君の方が泣いていたぞ、という気持ちはグッと堪えて、
「そっか、そうかもしれないね。それはもしかしたら、ママには息子くんしかいなくてどんな時も息子くんを1番にできたから、ママって言わなくてもきっとママはいつも息子くんと一緒に居れたのかもしれない。じゃあ、妹ちゃんはどうかな? 」
ぐすんと言いながらも少し落ち着きを取り戻してきた息子。
「ママは息子くんのこと大好きだよ。 そして息子くんのこと大好きなように妹ちゃんも大好きだから。息子くんを抱っこしてあげたあの時のように、今の妹ちゃんも抱っこしてあげたいんだ。」
この会話の答えは息子からは返ってこなかった。けれど泣きながら眠りについてしまった息子の顔を見て、あの日自分を毎日犠牲にした日々は無駄ではなかったかもしれないと思う。あの日の愛をもっと君がわかってくれる為に次はどんな言葉で伝えようか。今この瞬間の涙も包む愛があるから。
そして今晩、君がまた泣いてしまったら駆けつけるからね、と誓う。
時として母親業とは、Amazon prime以上の仕事だと思う。なぜならば、呼ばれれば送料無料で駆けつけ、サービスは全て無料。無給無休でアフターフォローまでついてくる。
こんな偉大な仕事を私は日々任され、全うしている。
たった二人しかいないわたしのクライアントに、明日からも最大のサービスを届けていくよ。
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