うちの「はじめてのおつかい」
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:鹿内智治(ライティング・ゼミ日曜コース)
うちには今年小学校にあがる息子がいる。ここまで育ってきてくれて本当に嬉しく思う。幼稚園のとき、ドキッとすることをよく起こしたものだ。友達に噛みついたり、喧嘩して怪我して帰ってきたり、おでこに大きなかさぶたを作って帰ってきたりした。そんな元気で、やんちゃな息子も数か月には小学生である。嬉しい反面、不安もあった。それは、
「ひとりで、ちゃんと行けるの?」
ということだ。幼稚園のあいだ、ずっと親が送り迎えをしていた。だから、子どもがひとりになる時間はほぼなかった。小学校に上がると、登校班というのがあるらしく、近所の小学生たちが集まって、行きは小学校に向かう。親が付き添うこともある。だから、行きは誰かの目がある。でも帰りは、みんなバラバラになる。クラブ活動、居残り、習い事で小学生たちは忙しい。そんなときに、ひとり帰って来れるのか?そもそも、ちゃんとひとり目的の場所に安全に歩いて行けるのか、心配だった。
「そうだ、あの番組パクろう」
妻と相談して、はじめてのおつかいをしてみようとなった。「はじめてのおつかい」の番組はご存知だろうか。年末や新春に必ずやる。未就学の子どもたちが、親御さんから、言われたおつかいをなんとか頑張ってこなすのを隠し撮りしているドキュメンタリーである。可愛らしいエピソードや、事件が起って、笑ったり、泣いたりできる番組である。私は結構好きだった。それをパクろうと思った。
さっそく計画を練った。まず、信号をひとりで手をあげてちゃんと渡れるのか気になった。普段幼稚園に向かうとき、信号を見て止まったり渡ったりできている。それは、私がそうしてるからではなく、信号の色を見れて判断できていると横から見て思う。ならば、ひとりでできるのか気になった。次に、信号はないが、横断歩道だけあるところで、しっかり左右を見て、渡れるか気になった。加えて、最近財布を持つようになったので、お金を数えて払えるか気になった。さらに、自分で決めたものを買ってこれるのか。それらを全てできるか確認するため、近くのコンビニでポケモンのおかしを買ってくるようにお願いしてみた。
「いいよ! できるよ!」
嬉しそうな顔をして答えが返ってきた。一人っ子だからか、大人扱いをすると、とても喜ぶ。
おつかい当日(正確にはおつかいではなかった)。コンビニまでは片道400メートルほど。途中、信号付き横断歩道、信号なし横断歩道がある。道は、直線ではなく、曲がっていて、全体を見渡せる場所はない。念のため私は、信号付き横断歩道で見張ることにした。ここからでは、コンビニの入り口と家の入り口は見えないのが。
「今出ました」
妻からラインが入った。ドキドキしてきた。ちゃんと歩けるのか?家に続く道に車が何台か入っていった。大丈夫か、事故に合ってないか急に心配になった。「なら、なんでこんなことさせてるんだ」とツッコミを入れていた。子離れできてないことに気付かされた。
数分後、息子が現れた。ぴょんぴょん跳ねながら、やってきた。そうとう楽しいようだ。ポケモンが買えるからか、ひとりでおつかいをしているからか分からない。私が何も言わなくても、赤信号をちゃんと止まれた。青信号になって、先に進んでいった。「頑張れ!」と声かけたら、手を振り返してきた。
トコトコを歩いていき、コンビニに向かっていった。私の場所から、入り口は見えない。入ったかどうか分からない。息子が見えなくなった。とたん、また不安がぶり返してきた。
嫌な映像を思い出してしまった。ツイッターで見た、中国の防犯カメラに映った子どもの誘拐のシーンだ。いろんな場所の一瞬の出来事が、連続して出ていた。どれも未然に防げていたが、親としてどれもハッとさせられた。
「うちの子は大丈夫か?」
コンビニにつづく道に車がどんどん入っていく。車に変な人が乗っていたら。止まってる車の扉が急に開いたら。コンビニのなかに変な人がいたら。想像したら、急に恐くなった。
「確認せねば!」
横断歩道を急いで渡った。コンビニの入り口が見えるところまで走った。大丈夫なのか?
入り口が見えた。息子はいなかった。ちゃんと入れたのか。どうなのだ。
コンビニに入ってしまうか。でも、ちゃんと買えていたら?
どうするか、迷っていると、入り口が開いた。
息子が笑顔で出てきた。ポケモンのお菓子を開けようとしていた。
良かった。大丈夫だった。ホッとした。
すぐにマズいと思った。
こんなところにいたことを気付かれては恥ずかしい。
心配して見ていたことがバレたくない。
元の場所に早く戻らねばと思った。急いで走って戻った。
しばらくすると、息子が歩いてくるのが見えた。私が入り口を見ていたことには気付いてない様子だった。良かった。何事もなく、笑顔で近づいてきた。目が合った。ポケモンを見せつけてきた。
「すごいじゃん!」
ハイタッチをした。息子は得意げだった。
今の息子なら、通学は大丈夫だと思った。
それより私のこころの準備ができてなかったようだ。
はじめてのおつかいで、子どもの成長がよく分かった。
加えて、親としての未熟さもよく分かった。
かわいい子には旅をさせようと思う。
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