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ゴールデンロックがもたらした奇跡

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:AI(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「そうだ、ゴールデンロックを見に行こう」
そう思い立った数日後、ゴールデンロックがあるミャンマー行きの飛行機に乗っていた。
 
昨年、職場の人間関係に悩み、心も体も疲れ切っていた。ある日、ドクターストップがかかり、会社を休むよう伝えられた。そんな時、
「少し気分転換に旅行に出かけてみたら?自然や違う風景を見るだけでも気持ちが楽になると思うよ。」
と主治医からお達しがあった。『会社休んで旅行って?』と思ったが、ストレスにまみれ、視野が狭くなっていた私には、少し今の環境から離れて心を浄化させることも必要なのかと感じた。
 
休職まで1週間。
商店街を歩いていると、‟ゴールデンロック“の写真が目に映った。小学生だった頃、社会科の授業でゴールデンロックの写真を見て、とても感動したことを思い出した。落ちそうで落ちない絶壁に黄金に輝く石があり、その石を崇拝に世界中から熱心な仏教徒が訪れる。子ども心にいつかその石を見てみたいなと思った。思い出に浸っていたら、この石を無性に見たくなった。
『この石を見れば、何か変わるかも…』
それから6日後、ミャンマー行きの飛行機に乗った。
 
日本を出発して約10時間。悪天候による飛行機の遅延やトラブルにも見舞われたが、無事にホテルまでたどり着き、翌日のゴールデンロック行きに備えた。
 
早朝、タクシーに乗ってバスターミナルへ向かった。ヤンゴン市内からゴールデンロックの麓の町まで片道約4時間。どんなバス旅になるのか、わくわくしながらバスに乗り込むと、そのバス、なんと日本の中古バス。車内には“頑張ろう、石巻”のステッカーが貼られ、なんだか嬉しくなった。車窓からの景色を楽しみながら、麓の町に辿り着いた。
バスが到着する前からトイレを我慢しており、バスが止まった瞬間、急いでトイレに駆け込んだ。そこで、カメラをバスの中に忘れたことに気付く。バスがまだ停まっているだろうと呑気に考えていた。しかし、バスはもう走り去っていたのだ…
 
ガーン…
ちびまる子ちゃんになった気分…
 
私は写真を撮ることが大好きで、遠出の際はカメラを必ず持ち歩いている。バスに置き忘れてしまったのは、一眼レフレンズのカメラ。『私のカメラちゃん…』と心の中で叫んだ。幸いなことに、デジカメも持ち合わせていた。大事なカメラを置き忘れたショックは大きかったが、もう一台カメラもあることだし、先に進むことにした。
 
ゴールデンロックには麓の町から1時間ほど乗合トラックで向かう。トラック乗り場に到着すると、そこにはオレンジの袈裟を来たお坊さんたちがトラックに乗って出発を待っていた。そこに、日本人でアロハシャツを着た私が合流。日本人を見る機会が少ないのか、それともアロハシャツが珍しいのか、お坊さんたちが私を見るなり、そわそわ?し始めた。こちらもオレンジ色の袈裟を来たお坊さんたちに囲まれ、そわそわ(笑)しばらくすると、隣に女性グループがやってきた。その女性が「どこから来たの?」と笑顔で英語で話しかけてくれた。私もすかさず、出身地を聞く。すると女性は「ミャンマーの○○から来たよ」と答えてくれた。
『ミャンマーの人! しかも英語が話せる!』
そこで、私は女性にバスの中にカメラを忘れたこと、バスの会社の人が英語を話せないことを伝えると、
「それは大変! あなたの大切なカメラがあるがバス会社に聞いてみるわ」
と女性はその場でバス会社に電話をかけてくれた。電話を終えた女性はカメラの忘れ物がなかったか、後で折り返しの電話があると伝えてくれた。隣に座っただけなのに、とても優しい女性。トラックは満員になり、バス会社からの折り返し電話がかかってくることを祈ってトラックは出発した。急こう配が激しい山道。まるでジェットコースターに匹敵するぐらいのスリルを味わいながら、山道を登って行った。そこで、女性の携帯電話が鳴り響いた。バス会社からの折り返しの電話だった!私のカメラがバスにあったとの連絡が入った。女性は
「あなたのカメラをバス会社で預かっている。明日の朝、取りに来てね」
女性に感謝するとともに、まさか日本以外の国で忘れものが返ってくるとは思わなかったので、私の喜びは頂点に達していた。女性にお礼を伝え、30分後、ようやくゴールデンロックの入口に到着。
 
私が一人で来ていることもあり、その女性グループはゴールデンロックまで案内してくれた。たまたまバスで隣になっただけなのに、ゴールデンロックの歴史やお参りの仕方、私が宿泊するホテルまで連れて行ってくれた。見ず知らずの人間にここまで優しく出来る人。人の優しさに触れた瞬間だった。
 
お目当てのゴールデンロックは…神々しく輝き、その美しさに心が奪われた。先ほどの女性が教えてくれたが、仏教徒であれば死ぬまでに訪れたい聖地だと行っていた。ここを訪れる人は熱心に祈りを捧げていた。その日は長い時間、ゴールデンロックを眺めて過ごした。
翌朝、カメラを預かってもらっている麓のバス会社へ。高校生ぐらいの男の子が私のカメラを持ってやってきた。
「あーカメラー」と思わず、日本語で叫んだ。男の子もなんだか嬉しそう。男の子にお礼を伝え、私はバスに乗り込んだ。一先ず、カメラの電源を入れた。すると、そこには男の子たちが撮影したであろう動画が二つ残されていた。『カメラも返ってきたことだし、まぁいいかっ(笑)』。そんなことを思いながら、バスに座っていると、後ろからお坊さんが話しかけてくれた。
英語も巧みに話す、ミャンマー人のお坊さん。お坊さんの英語は少し癖があったが、お坊さんとの会話を楽しんだ。お坊さんに「次どこにいくの?」と聞かれ、私は○○に行くと伝えると、なんとそこはお坊さんが所属したお寺であることが判明。ここでも奇跡が起こる。ガイドブックにも載っているその町は、徒歩で歩いて回れる距離だと思っていた。お坊さんは徒歩で歩くことは出来ないということを教えてくれた。すると、お坊さんはバイクタクシーを安くチャーターしてくれ、私が行きたい先々を運転手に伝え、さらには所属する寺院を特別に案内してくれた。
 
急遽、ミャンマーにやってきた。そこで新たな発見や気分転換が出来たらいいなと思っていたが、私の予想をはるかに上回る出来事が起こった。実はミャンマーではここで紹介した出来事以外にも、人々の優しさに触れ合う機会がたくさんあった。日本を出発するまで、やる気も感動も起きず、ただただふさぎ込んでいた。たまたま目にした“ゴールデンロック”。この石は、心を浄化してくれる以外に優しさをもたらしてくれる不思議な力があると思った。
 
 
 
 
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2020-03-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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