管理栄養士は主役になれない
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:加藤有加里(ライティング・ゼミ平日コース)
いつも医療ドラマで主役になるのは、医師や看護師。
管理栄養士が主役のものはほとんど見たことがない。
過去には、タニタ社員食堂がはやったとき、タレントの優香が栄養士役で映画化されたことはあった。でもそれ以来、管理栄養士が主役になることはあまりない。
私は現在、地方のクリニックで管理栄養士をしている。
私が管理栄養士をしているというと、
「給食のおばさんをやっているんだよね?」
そんな風に言われることもある。
医師や看護師の仕事は誰でもイメージしやすいのだろう。
医師は、診察や手術、カンファレンスなど、容易に想像がつく。手術のシーンはよくドラマでも描かれており、見ている私たちもハラハラドキドキして見入ってしまう。
看護師も診察の介助や注射、点滴、入院患者さんの看護といろいろと想像がつく。実際にドラマに出てくるのもそんなシーンだ。
管理栄養士はというと……、
その前に管理栄養士と栄養士の2つの資格があることを説明しておきたい。
管理栄養士は厚生労働大臣の免許を受けた国家資格であり、病気の方に栄養指導や給食管理、栄養管理を行っている。栄養士は都道府県知事の免許を受けた資格で、健康な方に栄養指導や給食管理を行っている。病院やクリニックでの栄養指導は、通常、管理栄養士が行っている。
このように2つの資格があることを知っている人も少ないかもしれない。
実は、病院やクリニック以外にも活躍の場が多い。例えば学校給食もそうだ。誰もが食べてきた給食も管理栄養士が関わっている。年齢に合わせ成長期に必要な栄養素を考えながら、献立を立てている。高齢者や障がい者の方たちが集まる福祉施設にも管理栄養士がいる。食べ物が飲み込みづらい方や障がいの症状に合わせた栄養管理を行い、サポートしているのだ。行政で働く管理栄養士もおり、市町村や保健センターに勤務し地域の方の健康を担っている。スポーツジムで働き、ダイエットや健康管理のサポートをしている管理栄養士もいる。他には企業や大学での研究職もある。
これだけ仕事が多岐に渡るとなると、管理栄養士といえばこれだ! というイメージは私でもつかみにくい。
最初に取り上げた、「給食のおばさん」というイメージもあながち間違いではない。
私が総合病院に勤めていたころは、厨房勤務だったので、毎日朝昼晩と患者さんの食事を作り続けた。ごはんの係りのときは、ひたすら入院患者さん200人分のごはんを量りを使いながら盛り付けていた。一人ずつ量が違うため、量る必要があったのだ。毎日やっていると量らなくてもごはんの重さが分かるようになってきた。ただ、これがドラマの主人公になるかと言われれば、難しいことはよく分かる。黙々とごはんを盛り付けている。そんなシーンは見ていても飽きそうだ。
厨房の床が濡れていたため、思いっきり転んでしまったこともある。運よく骨折は免れたが、転んだ時に打撲したおしりの痛みに数日間悩まされた。厨房で働いているとよくあることだが熱湯を足にかけてしまい、やけどをしてしまったこともある。
できあがった食事を患者さんのもとに配膳するときは、美味しく食べていただけるだろうかという緊張もあるが、患者さんと顔を合わせることができる貴重な時間でもあった。中には、いつもありがとうと握手を求めてくれた患者さんもいた。空になった食器を見ると嬉しくなったが、ほとんど食べずにそのまま食器が返ってきたときは、体調が悪いのかな、食事が美味しくなかったのかなと心配になったものだった。
現在の職場では、入院施設はないため、外来での栄養指導を主に行っている。生活習慣病の方の食事の相談や、ダイエットの相談もしている。患者さんの検査結果が良くなっていくのをみると、私も本当に嬉しい。患者さんと一緒になって喜ぶこともある。数値が悪くなったり、患者さんの元気がないときは、何が原因なの考えるが、なかなかすぐに答えが出ず悩むこともある。食べているものが良くないのか、ふだんの生活で病気に影響していることはないか、あらゆることを考え、アドバイスを行っていく。モチベーションが続かない患者さんには、目標を一緒に考え、サポートもする。栄養指導がないときもあるので、医療事務の仕事も行っている。さらにはクリニック内の掃除から買い物まで何でもやっている。
私でさえも、いろいろな管理栄養士の仕事をしてきたのだから、一般の人にはなかなかこの仕事について想像しにくいことも納得できる。
とても地味でドラマや映画に取り上げられることはないが、自分と関わる人の健康を願い、サポートできる喜びを感じることができる職業だ。これからもきっと主役になることはないだろうけれど、そんな地味な仕事も私にとっては、とても大好きな仕事だ。少しでも多くの人に、こんな仕事があるのだと知ってもらいたいし、もっと身近に感じてもらえたら嬉しい。そして、気軽に管理栄養士に相談してもらい、皆が健康になる社会ができたらと考えている。
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