ペットは家族? いや、とんでもない。
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:南 章子(ライティング・ゼミ平日コース)
「やめてーーー!!!」
私は叫んだ。
大声で叫んだ。
泣きながら、その時に出る一番大きな声で叫んだ。
「触らんといて!」
「みんな、どっか行って!!」
手の中に、動かなくなった小さなインコのピーちゃんを抱えながら……
ピーちゃんは私が小1の時にうちに来た黄色いセキセイインコ。
私が小学生になり、私と2つ上の兄で世話ができるようになった、という事でようやくOKが出た初ペットである。
フワフワ真ん丸の黄色い可愛い子だった。本当にかわいくて仕方なかった。
ピーちゃんはまだ赤ちゃんだったので、お湯でふやかした粟を小さなスプーンで口に運んで食べさせてあげないといけないし、それを2時間おきにあげるので、夜中も起きてお世話をした。
私はまだ不慣れでバラバラと粟を落としてしまい、大人の何倍もかかってご飯を食べさせていた。
それでもピーちゃんは一生懸命食べてくれた。
そしてすくすくと育ち、元気に飛びまわる立派なインコになった。
ピーちゃんは、私が毎朝カゴを覗くと、ピイピイ鳴きながら飛んできて、甘えてくる。
カゴから出すと、部屋をぐるっと飛んで、すぐに私の肩に乗ってくる。
そして嬉しそうに私の髪をくちばしでなでてくれる。
「早くしないと、遅刻するよー」
母に促されて、ピーちゃんをかごに戻し、ランドセルを背負う。
「ピイ、ピイ」
「いってきまーす、ピーちゃん!」
それがいつもの朝の風景だった。
でも、その日は違った…
「ピーちゃん、おはよー!」
朝、カゴを覗いてみると、ピーちゃんが飛んでこない。
「あれ?」
覗いてみる。ピーちゃんがいない。
いや違う!
よく見ると、カゴ奥の床に黄色いピーちゃんの身体があった。
「ピーちゃん、ピーちゃん」
何度呼んでも、動かない。
「おかーさん!」
朝ご飯の支度におわれている母を呼びに行った。
「どうしたの? 忙しいんだけど」
「ピーちゃんが……」
母が手を拭きながらピーちゃんのいる部屋に来てくれた。
「あ……」
母は、一言言った後に、
「お母さんがみてあげるから、早く用意しなさい」
そういった。
何のことだか解らなかった。
「ねえ、ピーちゃんは? ねえ、ピーちゃんどうしたの」
しばしの沈黙の後、母が言った。
「死んでしまってるね」
私は、
耳がキーンとなった。
息ができなくなった。
手先がスーッと冷たくなった…
何が起きているか理解できなくて、慌ててピーちゃんを抱いた。
でも…
いつものフワフワしたピーちゃんと違った。足が伸びたまま、固まっていた。
「ピーちゃ…」
ショックで声が上手く出せない。かすれた声で呼んだ。でも動かない。
なでても、なでても身体は固いまま……
「学校に行ってる間に、片づけておくから」
パニックになった私は、
「やめてーーー!!!」
大声で叫んだ。さっきまで声も出せなかったのに、だ。
慌てて、父も兄も飛んできた。
兄はすぐに事を悟ったのか、大泣きし始めた。
その兄の涙につられて私も大声で泣いた…
「触らんといて!」
「みんな、どっか行って!!」
鳴きながら大声で叫んでいた。
「そのままだと、ピーちゃんが可哀想だよ」
その母の言葉に、私はようやく我に返った。
母がピンクのハンカチを用意してくれてそれでピーちゃんの身体を包んだ。
「帰ってくるまでこのままにしておくから、学校行ってきて」
私は朝ご飯も食べず、ランドセルを背負った。
いつものピーちゃんの鳴き声はなかった。
その日は、学校から猛ダッシュで帰宅した。
玄関を開けるといつもはピーちゃんの声がするのに、今日はしない…
リビングに行くと小さな箱の中に、ピンクのハンカチに包まれたピーちゃんが眠っていた。
「おかえり」
母が迎えてくれたけれど、私は、ただいまの一言が言えなかった。
そのあと、兄の帰りを待って、母と三人で裏庭にピーちゃんのお墓を作った。
「ピーちゃんのおはか」
と書いたアイスの棒を立てて、ずっと泣きながら手を合わせた。
それから私は、毎日そのお墓に行って、学校の帰りに摘んだお花を供えて手を合わせた。
毎日窓からピーちゃんのお墓を見て泣いた。
家じゅう、どこを探してもピーちゃんはいなかった。母が鳥カゴを片づける時も大泣きした。
「私が悪いんだ……。 私のせいでピーちゃんは死んだんだ」
という気持ちが止まらなくなった。
私がもっと早く起きていれば、
私がちゃんとお世話をしていれば、
私が、私が……
苦しくて悲しくて、ご飯を食べられなくなった……
そんな憔悴しきった私に、母が教えてくれた。
「辛いね、悲しいね。でもね、あなたが悲しむ姿を見たらピーちゃんが悲しむよ。ピーちゃんは、姿は見えなくなったけど、いつも近くで見守ってくれているよ」
その時に……
カーテンから、何かがフワフワと降りてきた……
それが、ゆっくりと私の肩に乗った……
黄色い小さな羽だった。
「ピーちゃん」
すぐに分かった。ピーちゃんが私の肩に乗ってきたんだ。
次の日から私は泣かなくなった。
泣く代わりに、ピーちゃんがうちに来た日の嬉しかった事や、ピーちゃんが初めて飛んだ日のことや、その他いっぱい、いっぱい幸せだった日のことを思い出してお礼を言った。
小さな黄色い羽根は、私の筆箱にいつも入れていた、私のお守りだった。
その後、たくさんのペットを迎え、幸せな時間をいっぱい共有した。最後には、悲しい別れを何度も経験し、そのたびに号泣した。でも、その後は、その子たちが悲しまないように一生懸命生きることにした。
お別れは悲しいけれど、いつも助けてもらっている。
今まで、色んな大変なことを乗り越えられたのは、みんなが守ってくれてるからだって私は今でも信じている。
ペットは家族? いや、とんでもない。
私には、神様です。
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