人生は、モテるか、モテないかだ。
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:川島智賀(ライティング・ゼミ平日コース)
「私がいつも綺麗でいたいのは、あなたが面食いだからよ!」
最近の自分を励ます言葉である。
私がツイッターを始めて、一番最初にフォローした人
故小池一夫さん、漫画家。
小池先生の言葉が私の心に強く刺さった。思わずリツイートしたのがこれだ。
82年間生きてきて、いちばん幸せだったのは、人を好きになる、
人を愛するという感情だ。成功することや、何かを成し遂げるとい
う感情が、人を愛するという感情に勝ることはなかった。死ぬまで
誰かを心の底から愛せるということは本当に幸せなことだなと思う。
この世に生きている価値があると思える。
小池先生の代表作『子連れ狼』はTVドラマ、映画化され、また「小池一夫劇画村塾」では、キャラクター原論を教え、高橋留美子や原哲夫、堀井雄二らを輩出している。
ツイッターでは、日々つぶやかれる言葉は多くの人の支えになり、心を軽くし、その背中を押していた。
2019年4月17日に死去された。83歳だった。
このツイートで、私が刺さったのは、成功することや何かを成し遂げる達成感よりも、人を愛する感情の方が尊いということだ。
愛とかそういうものは普遍的で本質的で、漠然として一見当たり前のことのように感じる。それよりも努力して勝ち取ったものの方が、目の前のこととして嬉しいし価値を感じる。
しかし目標は達成すると、次はまたその上をいかなければいけない。
もちろんそれは悪いことではなく、日本の経済もそのように成長してきたであろうし、人の成長においても、競争したり切磋琢磨することは望ましいことだ。
受験や就活、出世、名誉、名声。
人が努力して勝ち取り、その人を飾るものは数多くあるけど、それらを手に入れた人の空虚な人生の物語が、映画などによくある。
人は成功すればするほど、大切なものを忘れる。
それはなぜか。
人は成功していくと自分の大きさを見誤る。大きく見せようとするし、勘違いする。感謝を忘れる。傲慢になる。
だけど人は、愛する者の前では無力だ。捨てられた子犬のように、おびえ惑う。
相手を知ろうと、心を集中させる。でも内心はドキドキで浮足立つ。
自分の弱さや不安で、胸が苦しくなる。愛おしいと思えば思うほど、自分が小さくなる。
恋の病なんて言葉があるが、特効薬は手に入らない。
私はこの姿をとても美しいと思う。
人を好きになるって、時にはカッコ悪くて不器用にするが、飾れないからピュアな気持ちが残る。心を無防備にするから真剣になる。まっすぐ見つめるから、余計なものを見ない。
人としての原点に立てる気がする。
この思い、気持ちを経験してこそ、人は自分の弱さを知り、他人の痛みを分かるようになる。
小池先生のツイッターに時々登場していた女性がいた。
先生は「家人」と表現されていたが、愛してやまない女性であることは十分に伝わってきたのだが、ある日のツイートに、
正月早々、家人が、「私が綺麗でいたいのは、あなたが面食いだからよ」
と微笑んだ。
というのがある。
なんて素敵なのだろうと思った。
この少し後のツイートには、還暦を過ぎて10㎝のヒールを履いている家人の脚力が凄い。
というのがある。
先生にこれほどまでに愛されていても、なお努力する。自分の質を下げない、家人さんの強さを感じた。女性の鏡だなと思った。
愛されることの尊さは、愛することの尊さとも言える。
恋をして、思うようにならない苛立ちも戸惑いも、すべて自分の肥やしになる。心を揺り動かされるから、自分の無駄なものが削ぎ落され、美しい人になる。
好きな人ができたら、素直にその気持ちを受け入れ、それを原動力に自分力を上げる努力をしよう。いつ誘われてもいいように準備をしておこう。体の手入れはもちろん、気の利いた会話が出来るよう、いろんなアンテナを張っておこう。つまらない人間だと思われないように。
このように成長していくことが、人が生きる上で一番大切だと、おっしゃっているのではないでしょうか。生きる価値があることだと。
子供のころは、愛することや愛されることが、本能として身についていたかもしれないが、大人になってしまうと、それらは能力なのかもしれない。
モテる、モテないは、その人に魅力があるかどうか。
努力し自分を磨くことが需要なカギになる。自分力を鍛え、人生のいろんな場面に遭遇し対応する。本を読む、映画を観る。たくさんの人に出会う。会話力を養う。
そうすれば、強くて優しい奥行きのある心の持ち主となるだろう。魅力ある相手を見つける眼も養える。
まだまだ私は、恋をしていたい。だから愛されるための努力を惜しまない。
豊かな人生は、モテるか、モテないか、ということではないだろうか。
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