メディアグランプリ

横文字コンプレックス


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:宇野朱美(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
「ロックダウン」最近のテレビを騒がせている言葉だ。
私が初めて耳にしたのは小池都知事の会見だったと思う。
「なんだそれ」と私は思った。
皆が知っている言葉のように「ロックダウン」という言葉を使う小池都知事に違和感を覚えた。
 
翌朝の小池都知事の会見を報道するニュース番組でも当然のように「ロックダウン」という言葉が使われた。さも今まで使っていたかのような顔をして世間に「ロックダウン」という言葉が溢れた。
 
情報社会の現代、意味は調べればすぐ分かる。分かるけれども、違和感がぬぐえなかった。
SNSでも「ロックダウン」という言葉がよく見られた。それを見るたびに「その言葉、今まで使ってたのか……!?」と思った。
そう思いながらも、実際に人と話す時には「私知ってましたよー」という顔をしている自分がいた。「知らない」と言うことは恥ずかしかった。
 
一緒に住むシェアハウスのメンバーの会話の中でも横文字が飛び交ったりすると、私は、意味が分からず、机の下に隠したスマホで必死に意味を調べたりしてしまう。みんなが知っている体で進む会話の中で「その意味なんですか」と言う勇気が無く、曖昧に笑いながら「こんな意味かな? 」と目測しながら進む会話の内容はさっぱり頭に入って来なかった。
 
なぜ恥ずかしいと思ってしまうのだろう。
なぜ「その言葉はどういう意味なんですか?」と言えないんだろう、
会話の流れを止めてしまうからだろうか。
多分、自分だけ知識がないことを晒すのが恥ずかしいと感じてしまうから。だからこっそり調べて、「知っていましたよー」という顔をしてしまう。そして、意味が分かると、自分もどや顔で使ってしまうんだろうと思う。
 
先日、仕事の場面で自分が担当している事業の一般向けパンフレットを作成した。若い世代に見てもらいたいと思って作成していた為、職場の若手に見てもらったところ、ある女性に「ここの言葉が分かりません……」と言われた。
それは「リモートワーク」という言葉だった。
私はその言葉を「在宅で仕事をする」に言いかえることもできたのに、すごく固く古臭いイメージになる感じがして、響きも恰好良い「リモートワーク」という言葉を使った。
日頃、シェハウスの会話の中では分からない側の立場にいるので、言葉選びは気を付けなければと思っていたのに、気が付けば私も当たり前の顔をして使う側になっていた。
ショックと同時に、意見を求められて「この言葉が分かりません」と言える彼女の素直さにもドキリとさせられた。
私だったら言えただろうか。
分からない言葉があったとしても適当に流してしまったのではないだろうか。
「知らない」と言えずに虚勢を張っている自分が恥ずかしかった。
 
どうしてそんな風に虚勢を張ってしまうのか。それは、分からない横文字を使われると見下されたように感じてしまったり、知らない自分を恥ずかしく感じてしまう横文字コンプレックスだからだと思う。
けれど、「ロックダウン」の言葉の広がりで感じるように、世間も横文字コンプレックスなのではないだろうか。
日本人は良くも悪くも、外からやって来た新しいモノに対して大手を上げて飛びつく。そして、みんなが当たり前に使っていると、それを知りませんていうのはちょっと恥ずかしくて、ニュアンスで理解した気になって使うようになっていないだろうか。
 
それが悪い訳ではないけれど、例えばニュースは、見ている人全員に情報を伝えることが目的なので、全員が分かるような言葉を使わなければならない。私が友人と話すときと、実家のおばあちゃんと話すときとでは言葉の選び方が変わってくるのと同じだ。
そして注意しなければならないのは、日頃から横文字で話すことに慣れてしまうことだと思う。そうなると、横文字が通じない人とは会話が成り立たなくなってしまうし、分からない人のコンプレックスを刺激して心証が悪くなってしまうこともある。どんなに素晴らしいことを語っていても、伝わらなければ意味がないのだ。伝えたい相手のことを考えて、分かりやすい言葉を選ぶことというのは、会話の中でも文章を書くときでも初歩の注意点なのだ。
レオナルドダヴィンチの素晴らしさは、天才的な頭脳を持ちながら、その発想を回りの人間に分かりやすく伝える技術も持っていたところだと聞いたことがある。天才的な頭脳を持っていても、誰も理解できなければ意味がないモノになってしまうのだ。
それを心掛けながら、私も「伝えること」をしていきたいと思う。
 
 
 
 
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2020-04-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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