10歳若返る食材に挑戦した涙ぐましい話
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:川島智賀(ライティング・ゼミ平日コース)
「臭っ!」
改めてこんな至近距離で見てみると、嗚咽がする。
これ本当に美味しいって思う人がいるのか?
関西出身の私には、どうも理解ができない。未だに。
それは「納豆」だ。
私の人生で東京暮らしの方が長くなってしまい、身近では納豆は確かにポピュラーな食材だ。旅行をした時など、朝食に納豆を食べていた友達もいた。
スーパーでは納豆売り場の面積が関西の倍、いや3倍はある。
だが私には全く縁のない食べ物だと、決めていた。
新型コロナウイルスの感染拡大で、いろんなデマが飛び、コロナ対策に納豆が効くというのもその一つだ。
「バカじゃん!」
と鼻で笑っていた、私だ。
そんな私が、なぜ天敵とも言える納豆を食べようと思ったのか?
それはずっと家にいて、部屋の片付けを、いや溜まりに溜まった本を整理しようと思い、重い腰を上げたところから始まる。
実は家じゅう本だらけなのである。玄関や台所、クローゼットにも、とにかく家のあちこちに本がある。
「こんなに私って本が好きなんだ!」
と思うほど、持っている洋服の数より圧倒的に本の方が多い。
もう一つ本棚を買うか、処分するかだな~ とか思いながら部屋の隅に、本をカテゴリー別に分け、積み重ねていった。
いろんなジャンルを買っている中でも、身体に関する本が一番多そうで、機械的にテキパキやっていたが、ある一冊の本に釘付けになり、座り込んで真剣に読んでしまった。
5年ほど前に買った本で、一度読んでいるはずなのだが、ほとんど忘れてしまっていた。
タイトルに刺さった私は、5年前とほぼ変わっていないのか。
『老けない人は何を食べているのか』/青春出版社
森 由香子/著
やっぱり「老けない」という言葉には、いつの時代にも女は食いついてしまうのか。思考が無条件に反応してしまう言葉なのだ。
この本の第一章が「肌年齢が若い人は何を食べているのか」というのだが、ここに納豆が出てくるのだ。
シミ、シワ、くすみ、などのお肌の悩みは新陳代謝、つまり「ターンオーバー」が関係する。このターンオーバーは若い人なら28日周期だが、50を越えてる私なら若い人の3倍以上の時間がかかるそうだ。
容赦ない現実!
しかし、同じ年齢でも老ける度合いが変わるという。つまりターンオーバーを活性化することで、老けやすい人と、老けにくい人に分かれるという。
この食材が「納豆」ということだ。
ターンオーバーとは、よく耳にするが何なのか簡単に説明すると、
新しい細胞ができて、表皮の角質に成長し、それが一定の期間で剥がれ落ち、また新しい細胞ができてくるこのサイクルをいう。
つまり肌の細胞が新しく生まれ変わる期間のことで、加齢などによりその期間がどんどん長くなる。
もっと分かりやすく言うと、虫刺されなどによる掻き傷の、比較的浅い傷跡が消える期間のことだ。年を取ると跡になりやすい。
このターンオーバーを促すのにビタミンB群が必要だと、この本には書いてある。
ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、葉酸、といったビタミンB群が豊富に含まれているのが「納豆」なのだ。
恐る恐る表面のフィルムを剥がし、プラスチックの白い蓋を開けてみた。
「臭っ!」
鼻を覆う、眉間にシワが寄る。いったんテーブルに納豆を置くが、深呼吸をして気持ちを整える。
人差し指と親指で残りの3本の指は立ったままでタレを切る、かける。からしも同様に入れる。
抵抗感のまま箸を突っ込んだ。ぐるぐる回す。
「臭っ! 臭っ! 臭っ!」
めまいが起きた。
ねばねばが纏わりつく、ストレスマックスオリックス!
刻みネギを多めに入れた。色取りはキレイ。だが食欲には繋がらない。
5年前にこの本を読んだとき、納豆を食べようとはならなかったんだ。それが不思議だった。
5年の時を経て、事態は深刻になったということか。
それもそうだが、やはり家にいる時間が長く、自分と向き合うことが出来るようになった。
多分5年前も、「納豆食べなきゃ」と思ったはず。だけど仕事の忙しさや、人との約束、やりたい趣味などで後回しになった。
優先順位がずっと下で忘れ去られていたものが、この状況下で思い出された。
ついに今まで嫌いに嫌っていた納豆と、対峙する時がやって来たのだ。
熱々のご飯に3粒くらい乗っけた。
蜘蛛の巣が絡んでるみたいな箸でご飯をすくい、口に入れてみた。
粘着きがご飯を異物と捉える。まだ納豆というガツンが来ない。
? という感じかもしれない。
今度は5,6粒、一気に倍だ。
あー、臭いとほぼ同じ味が口に充満した。
お茶で流し込む。涙目になっているのが分かった。
ネギを、ネギを多めに、さらに食べ続けた。
老けないために無心に食べた。
納豆は、脇役を引き立たせる主役だ。
ネギの食感、苦味がこんなに美味しく感じられたのは、初めてだ。
ベストマッチング!
ネギが居てくれるなら、私は納豆を食べられる。
これで、お肌のターンオーバーが、促される。
食事が原因で、見た目年齢は10歳変わるという。
コロナのおかげで、納豆が食べられるようになった。
もっともっと前向きに、自分と向き合い、自分を磨きたい。
ステイホーム。
***
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