ホラー映画と三種の神器
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:石川サチ子(ライティング・ゼミ日曜コース)
それは、ホラー映画の始まりを感じさせた。
午前10時半過ぎだというのに、阪急梅田駅からJR大阪駅へ抜ける歩道橋は、ガラガラ。
いつもなら大きなスーツケースをゴロゴロ引いた人たちの群が邪魔して全く前に進まない。わずか数十メートルの距離しかないのに渡り終えるまで5分以上かかることもある。
しかし、今日はほとんど人がいないから1分くらいで通り抜けられた。
途中、右手に見えるヨドバシカメラも入り口が閉まっているのが見えた。普段なら、その歩道橋から店に続く通路の辺りは、人が詰まっているような感じだった。人っ子一人いない。
JR大阪駅構内にあるルクアも閉まっている。エレベーターを降りたすぐ横にあるブックスタジオ書店も閉店していた。
紀伊国屋書店も閉まっていた。入り口には、どの店も「5月6日まで休業のお知らせ」が張り出されていた。
非常が事態宣言が発令され、大阪が事業者に自粛要請を出した初日だった。
あれだけ賑わっていた街がこれほどまでに閑散とするなんて。一ヶ月ほど前まで想像すらできなかった。
主要な都市はロックダウンし、グローバルに飛び交っていた、人、物、エネルギー、お金の動きが止まった。
コロナウイルスの怖さよりも、その後の経済の冷え込みの方が怖いと思った。
所有していた株も、マイナスになり、あれよあれよと思っているうちに50万円以上減った。
現実がホラー映画になっていた。
***
今年2月くらいから、コロナウイルスの危険が毎日のようにテレビや新聞で報道されるようになった。
その頃から、私は違和感を感じていたた。
コロナウイルスは、毎年流行する新型インフルエンザよりも患者数が少ないのに、世界中が戦々恐々としている。
この過剰なまでの反応を冷ややかな目で見ていた。疑いを持つようになっていた。
世界中を恐怖に陥れているコロナウイルスは、自然界でできたウイルスではなく、もしかしたら誰かが意図的に作ってバラマいたのかもしれない。
そしてこのコロナウイルスの正体は、殺傷能力のある細菌兵器ではないのか。
そうでも考えないと、つじつまが合わない、と思った。
コロナウイルス感染がいったん終息した頃、世界経済はバランスを失い、倒産する会社や実業者が増える。
その結果、世界中の人たちは、怒りの矛先を、コロナウイルスを意図的に作った人(あるいは国)へ向けて悪者に仕立てる。
その悪者は、人なのか、国ぐるみなのか分からないが、世界中から袋たたきにあうに違いない。
きな臭い。実にきな臭い。
人類は、3度目の過ちを犯してしまうのか?
過ちのその先には、SF映画の世界が待っている。
世界が完全にリセットされる。そして人々は5Gに電波支配され、心身ともに完全に支配者の操り人形になる。
私たちは、1%以下の人たちに操られ、利益を吸い取られたあげくに、過酷な奴隷生活を強いられる。
***
元々ものごとを悲観的に考えるてしまう癖があるから、こんな妄想を始めてしまうととことんまで膨らませてしまう。
新緑が青青と茂る季節なのに。
気づけば、ツバメが今年もやってきて、一生懸命巣作りしているのに。
勝手に作り上げた妄想で、発狂しそうになっていた。
それで久々に「夜と霧」の本を読み返した。
「夜と霧」は、有名な本なので知っている人も多いと思うが、念のため簡単に紹介しておく。アウシュピッツ収容所で生き延びた精神科医が、当時の環境と人間心理の変化を記録したノンフィクションだ。
最初に読んだのが大学時代。何の授業か忘れたが課題図書として指定され、買って読んでみたものの、遠い世界の出来事のように感じ、全く共感できず、理解しようともしていなかった。
授業の課題だとはいえ、このような暗い本をわざわざ読んで憂鬱にならねばらなないのか、分からなくなった。途中で読むのを止めた。
後で、あらすじを誰かに教えてもらった。
今回改めて最初から最後まで読んでみた。
大学時代に感じた暗さは、全くなかった。
むしろ、今の状況と重なり、たった一つの問いの答えを探していた。
その問いとは、「過酷な環境でを生き延びられる人間の精神的な強さは、どのようにしたら得られるのか」
その答えを知りたかった。
アウシュピッツ収容所という人類史上最も残酷だと言われる環境で、生き延びた人たち。彼らの精神力の強さは何によるものなのか。
そこで分かったのが、過酷な環境でも生き延びられる人間の精神力の元は三つあった。
その三つとは、
「愛する人がいる」
「未来に希望を持っている」
「過去に豊かな経験をし、心の宝物がある」。
「愛する人がいる」ということは、精神的な支えとなる人がいる。愛する人を思う気持ちが人を強くさせる。どんなに苦しい中にあっても、その人の苦しみを愛する人の代わりにやっていると思うことで、どんなに理不尽な苦しみにも意味付けして耐えられる。
「未来に希望を持つ」というのはトリックのようなもので、過酷な状況にいても、その環境を乗り越えた先の未来は明るい、そう考えると、トリックにかかったみたいに、苦しい現実を耐えられる。
「過去の豊かな経験、心の宝物」があると、その思い出が、どんなに苦しい環境でも生きる支えになる。
改めて思う。
人は、外の環境に左右される弱々しい存在ではない。
生物兵器や経済的な混乱などの一人の人間の力では、どうにもできないような環境でも、実は一人一人力を持っている。
その力は、「人を愛する」「未来に希望を持つ」「豊かな経験、心の宝物」という三種の神器だ。
一人一人が、この神器の力を使えば、外の世界すらも買えていける。
ホラー映画のような世界を楽園に変える力がある。
***
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