プロボノのススメ
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:小島由佳子(ライティングゼミ・GW集中コース)
「ぎゃー!! ぬるぬる! しかも、わーなんか食べられちゃいそうです!! やばい、ど、どうすればいいですかー!?!?」
すると亀山さんが「頭を上から持てば大丈夫ですよー!!」と、アドバイスしてくれた。
「な、なるほど……。(頭をがしっとつかむ)できました!」
これは、昨年の秋、船の上での会話である。
生まれて初めて、腕を食べられそうになりながら、タコの頭をつかんだ。
首都圏で育ち生活する私にとっては、タコの頭をつかむなんて今までに経験したこともなく、それは一大事である。
しかしこれは、ただの漁体験ではない。
その前日から、私は宮城県の牡鹿半島にある、蛤浜という限界集落の起業家である亀山さんの元を訪れていた。
「今回、東北プロボノプロジェクトの一員として来ました小島です、よろしくお願いします!」
そう、先ほどの漁体験はプロボノプロジェクトにおけるフィールドワークの一貫だったのである。
プロボノ、とは「公共善のために」という意味のラテン語から来た言葉で、社会人が仕事を通じて培ったスキルや経験を活用して社会貢献する、ボランティア活動のことを意味するという。
そんなたいそうな意味合いを持つプロジェクトに、一端の社会人である私が参加して何ができるだろうかと思ったこともあったが、東北に一時期住んでいた私にとって、東北は関わりを持ち続けていたい思い入れのある地域でもある。
このプロジェクトの「東北の社会起業家を支援する」という趣旨に賛同し、参加することにした。
まずは蛤浜の起業家亀山さんからのレクチャーから始まった。
彼の経営する「はまぐり堂」という海の見える高台のカフェが人気であるが、それだけでなく様々な事業を行っている。
亀山さんは、その中で、「限界集落であっても持続可能な浜の暮らしの豊かさがあるのではないか。それを未来につなげていきたい」という話をされており、今回もそのためにプロボノメンバーを募ったという。
その言葉通り、このフィールドワークでは、漁以外にも、漁帰りの海辺での朝ごはん、カフェでのランチ、森・浜の散策、鹿の捕り方レクチャーなど、蛤浜でできるあらゆることを体験させてもらった。
中でも印象的だったのが、森を散策しながら行った、少し離れた浜での焚き火と野外ミーティング。
ちょうどよくひらけた、思わず切り取りたくなるような海の風景。
独り占めしたくなるような秘密基地感。
そして、浜の生命を感じる貝殻の山と大きな流木。
「こんなところでテレワークできたら最高だね」
風に吹かれながら亀山さんや、同じく東京から参加している他のプロボノメンバーと、談笑した。
その後、それぞれのメンバーがテーマを設定し進めることになったのだが、
私はこのフィールドワークを通して「こんな漁や野外ミーティングができるコンテンツがあるのに、カフェのことしか伝わっていないのはもったいないな……」と思い、発信力強化を担当することになった。
まずは、様々な体験ができる場所であることをアピールするため、このフィールドワークの経験を記事にしてSNSで発信した。
次に、なんらかの形で「これがあれば蛤浜のことがまるまるわかります」というツールが作れないかと思い、フィールドワークで体験したことをそれぞれ写真とコメントでまとめ、1冊のミニアルバムに仕立てた。
すると、「蛤浜でできる体験のイメージがとてもしやすいね」とプロボノメンバーからも好評で、蛤浜を訪れたことのない方に見せた時にも、「漁もできるんですね、やってみたいと思いました!」という言葉をもらえた。
その言葉だけで、「カフェだけでない蛤浜のイメージが、少しでも伝わったかな」という実感があり、嬉しかった。
さらには、亀山さんたちはまぐり堂のメンバーからも、「季節ごとにこういう冊子が作れたらよりお客さまにも浜の魅力が伝わるね」と、このミニアルバムの新しい活用方法のアイデアが出たりもした。
実は、アプリで写真を選んでコメントを添えるだけで、そのミニアルバムは簡単に誰でも作ることができるのだが、オンラインだけでなく手元に残る物にしてみよう、というアイデアと紙媒体の持つコンテンツ力の強さ、そして編集して発信する、ということの掛け合わせが、この価値を生んでくれたと思う。
普段SNSでの発信くらいしかしてこなかった私でも、
「こうしたらより伝わりやすくなるのではないか」
「こうしたらより多くのお客さまに見てもらえるのではないか」
と客観的な視点で見ることで、紙媒体という新しい提案ができ、
「少しでも役に立てたかな……!?」という達成感があった。
そうか、プロボノって、単なるボランティア活動でも、自分のスキルを披露することでもない。
こういった取り組みを、実業として動いているところで自ら考えて企画実行でき、かつ達成感も感じられる「プチ事業経験」なのでは、とその時気がついた。
実際私も「はまぐり堂の一員として経営者に近い目線で考える」という感覚であった。
いつかこの経験が本業に活かせる日が来るかもしれないし、この達成感の積み重ねは、自信にもつながってくる。
それだけで、とてもハッピーだ。
だからぜひ、みなさんも「プロボノ」という文字を今後見かけたら、単なるボランティアかぁ、とか、そんな特別なスキルないしなぁ、と敬遠せずに「プチ事業経験」ができる場として挑戦してみてほしい。
あなたの新しい活躍のステージが待っているかもしれないから。
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