学校が二度、つぶれた
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記事:AI(ライティング・ゼミ平日コース)
2016年4月某日、私はロンドンの語学学校にいた。授業が始まって数分後、校長先生が教室にやってきて、先生に何かを伝えた。そして、先生は私たちにこう伝えた。
「この授業をもって、学校は閉鎖します……」
『えっ……? また……?』
私はロンドンで、二度も学校が閉鎖するという事態に立ち会った……
5歳の時、『ロンドン橋』の歌をきっかけにイギリスが大好きになった。それから約25年の月日を経て、語学留学をきっかけにロンドンでの生活がスタートした。学校では様々な国籍、職業、年齢の友達ができ、充実した生活を送っていたが、英語には苦戦していた。
私の英語の弱点は、発音だった。発音が悪すぎて、英語が伝わらないことが多かった。発音が改善されなくて悩んでいた時、友人から発音矯正を目的とした学校があることを教えてくれた。その学校は1日2時間から受講でき、しかも学費が安かった。午前は今までの学校に通い、午後の時間を使って、発音矯正の学校に3月間の予定で通うことにした。発音矯正の学校での効果は絶大で、短期間でネイティブの発音が出来るようになった。そして、この学校最終日、事件が起きた。2015年10月21日、忘れられない1日になった……
学校の最終日ということもあり、いつもより早く学校に行くことにした。すると、学校の前は人でごった返していた。校内で何か事件でもあったのかと言わんばかり、生徒たちも先生たちも外に出ていた。すると、私を見つけたエクアドル人の友人が駆け寄ってきて、
「学校から届いたメール見た?」
と言った。
「まだ見てない」
と私。
「今日で学校が閉校したんだよ……」
「えっーーー!?」
思わず、絶叫した。突然、学校が閉鎖したのだ。
意味が分からなかった。
しばらく呆然と立ち尽くしていると、日本人の友人が私の隣にやってきて、
「銀行口座が凍結して、今日で学校を閉めざる終えなくなったらしい。先生たちも今日で職を失ったんだって……」
と。先生たちは学校がなくなることを事前に知っていたのかと友人に尋ねると、
「先生たちも、今朝学校に来て、閉校する事実を知らされたみたいだよ」
と……
朝、出勤して、学校が今日で終わることを知らされるとは……学校が閉まるということは先生たちもその日を持って、仕事を失った。なんと酷だろう。
学校の前には、私の担当の先生もいた。先生は60代前後の男性で、先生とはラグビーの話をしては盛り上がった。ちょうどその頃、イギリスでラグビーワールドカップが開催されていた。いつもは笑顔で私たちを迎え入れてくれる先生だが、この日は目に涙が光っていた。先生は他の先生と比べ、年齢も上だったので、この先の不安でいっぱいのようだった……先生にかける言葉が見つからなかったが、今までの感謝を伝えた。
私は翌日から3週間のヨーロッパ周遊の旅に出かけたため、その後の学校の対応が詳しく知らないが、先生たちの給料は未払い、生徒たちへの返金も時間がかかるという噂が回ってきた。生徒の中には返金を求めて、裁判を起こすと立ち上がった人もいたようだった……こんなことが起こるとは思いもしなかった。
3週間の旅を終え、ロンドンに戻ってきた。再び、語学学校で英語の勉強に励んだ。ちなみに私が戻った学校は、発音矯正と並行して通っていた学校だ。その学校には翌年の2016年4月までお世話になった。
卒業まであと1週間を迎えたある日。授業中にも関わらず、校長先生が教室に来て、先生を呼び出した。数分後、先生が教室に戻ってきた。なんだか先生の様子がおかしい。嫌な予感がした。そして、先生が口を開いた。
「この時間を持って、学校は閉校します……」
『またっ!? この学校も今日で終わりなの?』
突然の発言に、生徒たちがざわつき始めた。先生に説明を求め出した。すると先生は、
「私も今、聞いたばっかりなんだ。詳しいことはわからないが、私たち教員も、今、解雇
を言い渡された……申し訳ないのだが、今日はこれで授業は終わり。状況が落ち着いた
ら学校から連絡が入るからそれまで待っていてほしい……」
なんと、この学校も突如、閉鎖された。二度も学校の閉鎖に遭い、私は貧乏神なのかと自分を疑った……それから3日後、生徒たちが学校に召集された。生徒たちに授業料の返金のこと、受け入れ先の学校が用意できたことなどの話があった。前回閉校した学校では次の学校は自分たちで探すようにと冷たい対応だったが、この学校は諸々対応してくれた。生徒たちも安堵した様子だった。突然の別れは寂しいものだったが、この日、最後に学校でお別れパーティーが開かれた。私は、学校事務のスタッフにロンドンでは突然学校が閉鎖することがよくあるのかと尋ねた。すると、
「学校がつぶれるなんて、今まで経験したこともないよ。あなた2回も経験しているな
んて、逆にすごいわ!」
と、事務のスタッフ……確かに二度も学校の閉校に立ち会った人はなかなかいないだろう。この経験は一生、忘れない。
最近のコロナウイルスの影響による緊急事態宣言もそうだが、人生、何が起こるかわからない。何が起きても、楽しむ気持ちを忘れてはいけないと強く思う、今日この頃だ。
***
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