メディアグランプリ

『朝食を毎朝作る』のムリゲー感について叫びたい


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:泉田理恵子(ライティング・ゼミGW集中コース)
 
 
朝食を作るのが面倒くさい。
そう思うのは私だけだろうか。
毎日、仕事に行く前にするミッションはいろいろある。布団をあげて、出勤準備をしながら洗濯をまわし、子どもを起こしたり起こしたり起こしたり(姉妹ともに繰り返し眠り込むのでこの表現が一番正しい)。
前日の仕事が遅くて夜の食器の片づけが済んでいない事もある。そんな時はもう朝は戦場だ。そんな中で食事を作るという創造的な作業は本当にすさまじいプレッシャーに満ちて感じられるのだ。少なくとも、私にとっては。
 
こういう話をすると決まって、「難しく考えるから疲れるのよ」と言ってくれる人がある。
「コーンフレークは」「食パン買っとけば」「フルーツとヨーグルトだけでいいじゃない」
……無論、すべて通って来た道だ。
 
考えられる手段はすべて一度はチャレンジしてきた。だが、作っても子どもたちが食べない。用意したままの状態で仕事から帰ったあとも机の上に置いてあったりする。ない時間をやりくりしたのにと哀しくなるし、なんとも微妙な感じになった食材も勿体ないしで翌朝も用意しようという気力が萎える。自分は駄目な母親なのだろうかと切なくなりながら、朝が来るたびからっぽの食卓を横目に、逃げるように出勤する。
 
そんな時だ。『料理が苦痛だ』という本がSNSで紹介されているのを目にしたのは。タイトルを聞いた瞬間に天啓を受けたような気がした。もしかしたら私だけじゃないのか? 料理にまつわる呪縛があれこれあげられている中に、『料理を苦痛に感じた時の解決法は、ズバリ、料理をやめること』というのがあって、また天啓を受けた。
そうか。そうか。そうか。
 
『当たり前にやらなきゃいけない』というプレッシャーにばかり注目していたけれど、料理がそれほど得意じゃない自分が、そもそも『毎日子どもたちが食べたくなるような素敵な朝食を作る』というドラマのお母さんみたいなミッションを、当たり前のようにクリできると考えていた自体、ムリゲーだという事にはじめて気がついたのだ。
 
好きな事でも毎日続けるというのは難しい。ましてや朝食というのは短時間で用意し、しかも食べたくなるクオリティを保ち続けるという難易度の高いチャレンジだ。ロープレで、冒険に出たばかりの初心者の勇者が、いきなり魔王に挑戦したって勝てっこない。自分にそれは無理と気づくことがまず大切だった。勇者になるためには、まずはスライムを倒して、経験を積む必要があったのだ。
 
それと気づいてからは、朝、まずは2合だけご飯を炊くようにした。朝起きて、いろんな用事をしている間に、ごはんだけは炊き上がっている。それで、ラップに包んだおにぎりを作る。具は入れない。塩にぎりだけだ。
実際やってみると、これで十分だった。起きてきた子どもたちは自分の好きなふりかけやノリを用意して勝手に味付けして食べている。スープやみそ汁はインスタントのものがいくつか用意してある。たまに自分で目玉焼きを焼いている時もある。「野菜もたべなきゃ」とか言って、塩ふったキュウリをまるかじりなんかもしている。前日のおかずの残りが活躍するときもある。おにぎりが残っても大丈夫だ。夕方、学校から帰ったあとのムシ養いに丁度良いおやつになっている。
 
なんだ、こんなことで良かったのかと気が抜けるのと同時に、しみじみと思った。
当たり前だ言われている事だろうとなんだろうと、それはあまり重要ではない。
多分、自分にとってそれが「当たり前」なのかどうなのかについて考えることがまず大事なのだ。
 
「当たり前の事ができない」と焦る必要はない。「出来ない事」なら、それはあなたにとっての「当たり前」ではありえない。他の人と同じ事を同じ方法でしようと繰り返しチャレンジし続けては失敗して、自己肯定感を損ない続けるのも不要だ。
多分、大切なのは、自分にとって何が苦手であるのかを理解すること。そして苦手ながらにどうしたら目標との距離を縮められるかについて頭を絞ること。
 
そうやってスライムを倒しているうちに、私たちはきっと気付けば魔王に挑める勇者になっている。私もそれを信じて、明日の朝に向けて炊飯器にお米をセットしようと思う。
 
 
 
 
***
 
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2020-05-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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