レディーミツコをちょっとだけ好きになった日
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:蒼井とり(ライティング・ゼミGW集中コース)
今日はレディーミツコの話をしよう。
多くの人がレディーミツコと言われても知らないと思う。
何故ならば過去、レディーミツコの話はタブーだったのだ。
もしかしたらこの話を読んで「それは未だタブーである」と思う人もいるかもしれない。
「恥ずかしい」「穢らわしい」と思う人もいるかもしれない。
でも、今は21世紀。多様性が認められている時代だ。
そろそろ普通の場所で、普通に語っていいはずだ。
だから、今日はレディーミツコこと「生理」の話をしようと思う。
レディーミツコという名前が付いたのは今から20数年前。
高校の部活での隠語として生まれた。
部活はハンドボール部。高校までは野外でのスポーツだ。真面目にやるとバスケットとラグビーを足して2で割ったようなちょっと土臭いハードな競技だった。女子はギリギリ試合に出られる人数しかいなくて、男子部と一緒に練習をしていた。途中でナプキンがずれて、もれていないか気になってくる。
「ちょっとレディーミツコ来た。行ってくるね」
といって、トイレに駆け込むときに使われていた。
思春期ということもある。でも世間的に生理とは隠すもの的な空気がまだ強い時代だった。だから「生理」という言葉をなんとなく使わないことが安心につながっていた。
ただでさえ、大体月1回、時には痛く、時にはかゆく、ひどい時には頭痛や吐き気を伴う厄介な彼女。その上、語ることはタブーとか本当に厄介な女だ。
長年、私は彼女のことが大嫌いだった。
私の場合、特に経血の多さが問題だった。
多い時は1時間でナプキンを取り替えにいかなければならない。仕事などで集中しているときには気づいたら服を汚していることさえあった。
長い人生の中で、交換するのに費やす時間はどれほどのものだろうか?
ナプキンを毎月買わなくてよければ、1回ちょっといいランチが食べに行けるのに。
毎月レディーミツコが私の頭の中で、意地悪く笑っていた。
そんな悩みを持っていた時、「月経カップ」というものと出会った。
きっかけは、一本の映画だった。
「パッドマン 5億人の女性を救った男」というインドの映画。ある男が愛する妻のために低コストな生理用ナプキンを開発するまでのヒューマンストーリー。
時代は変わったものだ。生理がエンタメの話題の一つになっている!
映画の公開のときに、タブー解禁か!? とばかりに今までなかなか得られなかった生理情報が記事として上がっていた。その中に生理期間を快適に過ごすアイテムの一つとして「月経カップ」あったのだ。
早速ネットで購入してみた。
形状は細長いお椀のようで、柔らかい。
これを腟内に入れてカップで経血を受け止めるというものだった。
恐る恐る試してみる。
ネットに書いてある入れ方のコツを参照にしてみたら、思ったよりも簡単に挿入することができた。しかし、ここからが問題だ。
本当に大量の経血を受け止めてくれるのか?
最初はもれたら嫌だ、と思いナプキンと併用してみた。
結果、いつもならばナプキン交換を2、3回する必要があるのに、1回で済んでしまった。説明書には量にもよるが、あふれない限り12時間までは体内に入れておいても大丈夫だった。12時間だったら、遊んで帰ってくるのにも十分の時間だ。初めて生理なのに、気にせずに楽しめた日は、私にとってまさに生理革命の日となった。
そして、医療用シリコンでできているそれは使いまわせる。
水や石鹸で毎日洗える。もし出先などあふれるのが心配ならばトイレに経血を流して、水で流すか、ウエットテッシュで拭いて入れ直せばいいだけ。生理用品のポーチともおさらばできるのだ。
面倒なところも少しだけある。1回の周期が終わったら、もしくは使い始める前に煮沸消毒しなければいけない。私は専用の耐熱容器に沸騰したお湯をはって、電子レンジで5分することで消毒している。
「月経カップ」を導入したことにより、ナプキン交換の時間も、毎月のナプキンにかけるコストまでカットできてしまった。しかも、ナプキンによる蒸れやかゆみともおさらばできたのだ。
すると、レディーミツコと冷静に向かい合う時間が増えた。
毎回ホルモンの変化で気持ちが不安定になることもある、お腹が痛くてしょうがない時もある。でもよく考えてみると、毎月彼女が来るのはいつか子どもを産むための大事な準備のためだった。人類が生き続けるのに必要なことだったのに……。
どうして、過去の私たちはタブーのように語らないといけなかったのかったのだろうか。
そう考えると、今までレディーミツコと隠していたことにちょっとだけ罪悪感が生まれるようになってきた。
ごめんね、レディーミツコ。
あなたが毎月来てくれることに感謝します。
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