入社3年目の迷える営業社員が、「鬼滅の刃」を観て自分の仕事の価値に気づく話
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:大森瑞希(ラィティング・ゼミ平日コース)
「今の仕事、私には向いてない気がする」
仕事帰りにデパートに寄り、化粧品売り場をぶらぶらしながら考える。
保険会社で営業の仕事を始めてから早3年。
営業マンとしてまだまだな新米の私がこんなことを言うと、先輩方からは「見切りをつけるように言うには早すぎる!」だとか「お前はまだ本当の営業を分かってない!」とか「そもそも根性がない!」とかの叱咤を受けてしまうのかもしれない。
でも、なんだかなぁ……。
向いてないと思う理由は、私自身が保険という商品に好きという気持ちがないのだ。
興味がないというか、思入れがない。
そもそも、保険が超好き! という人なんてほぼいない。
もちろん保険が人生において必要なのは十分わかっている。
病気で入院することになった時、働けなくなった時、死んだ時。
経済的なリスクを被った時に保険金が給付されることは当事者にとって大変ありがたい。
今時、無保険の人の方が珍しい。
しかし、「必要だ」と思う気持ちと「好き」と思う気持ちは違う。
営業社員なのだから、売らなければならないことは分かっている。
決められたノルマもある。
社会の中で必要とされている大事な仕事だということもわかる。
でも、自分が愛情を注げないものを売り続けるのってしんどくないか。
例えば、本や化粧品、ゲームやお菓子など、本当に自分が好きなものだったら、営業するのが楽しくなるだろう。
トークに力が入って、お客さんにも「この商品お勧めですよ!」って心の底から言えるに違いない。
ほら、目の前の美容部員さんだってあんなにキラキラした顔でグロスを紹介してる。
私は営業してる時、一体どんな顔をしてるだろう。
こんなことを考えている時点で、私はやっぱりダメ営業マンなのかも。
そんなもやもやをずっと抱えていた。
アニメ「鬼滅の刃」を見るまでは。
「鬼滅の刃」は、ある日、鬼によって家族を惨殺され妹を鬼に変えられてしまった主人公・炭治郎が、かたき討ちの為に鬼狩りとなり、妹と旅に出るファンタジーの物語だ。
私の一番好きなキャラクターは我妻善逸(あがつま ぜんいつ)。
彼が私の中にある保険の価値観を変えてくれた。
我妻善逸は主人公の仲間の一人。
普段は人一倍臆病で弱虫なのに、やるときはやるところが好きだ。
心根が優しく、時折、仲間を思うジーンとくるセリフを言うところもギャップがあって良い。
しかし、どこまでいっても主人公ほどの超人的な力は持てず、また、主人公ほど目立たない、いわゆる脇役である。
私は小さい頃から、アニメや漫画では主人公より脇役が好きだった。
普段はそこまで目立たないけれど、物語の要所で主人公を勇気づけたり、
時折はっとするような核心を突いたことを言い、物語が大きく動いたりする。
脇役は、強すぎる主人公には力及ばないことが多いが、凡人ならではのもろさや優しさなど人間らしさがあって共感が持てる。
ワンピースならウソップ。
ハリー・ポッターシリーズならネビル・ロングボトム。
彼らは確かに脇役だけれども、主人公のヒーローズジャーニーを引き立たせるためには、なくてはならない存在だ。
主人公がピンチの時は必ず助けに来る。
その一方で、主人公のオオトリを絶対に横取りすることもない。
絶妙な塩梅なのだ。
会社から帰宅後、Netflixで「鬼滅の刃」を観る。
私は我妻善逸のいつにない強い戦いっぷりを観ながら、その時ふと、保険にも同じことが言えると思った。
自分の人生の主人公は、言うまでもなく自分だ。
主人公の一番の参謀になり得るアイテムはいつだって車や洋服や本のような、自分自身が欲しいと思うもの。
これらは持っておくことで、主人公の人生に彩を与え、毎日が豊かになる。
それに比べ、保険は決して一番の参謀には絶対になり得ない。
持っていても出番が少なすぎるし、もっと言うと出番はない方がいいからだ。
契約したのが随分前だったりすると、加入していたことさえも忘れさられることもあるくらい人生の中で影が薄い。
加えて、出番があろうが無かろうが、毎月保険料は払い続けなければならないから、参謀になり得るどころか、どちらかというとお荷物かもしれない。
いわば究極の脇役である。
でも、この脇役はピンチの時に必ずたすけにくるのだ。
若くしてがんになった時。
愛する人が大けがを負った時。
大事な人が死んでしまった時。
主人公のヒーローズジャーニーに突如予期せぬ事が起こった時だけ、保険はその威力を発揮する。
もちろん保険は、金銭的な面でしか人を救うことが出来ない。
けれど、このような状況の時に、車や洋服はまず役に立たない。
そして、嵐が過ぎ去った後、主人公は前よりもさらに強くなって、冒険を再開するのだ。
さらに、これからも自分に何かがあった時、必ず守ってくれるものがあるという安心感は、人を挑戦に駆り立てやすくする。
「鬼滅の刃」主人公・炭治郎が、様々な危機を乗り越えながら、我妻善逸を含む仲間を信じて、冒険をし、成長していくように。
我妻善逸を観て、私の中の保険に対するぼんやりとした考え方が、少しずつ形を帯びてきた。
保険という商品を「好き」になったわけではない。
けれど、今なら保険がどうして「必要」なのかが私の言葉で言える気がした。
それまでは、ただ単に保険という「モノ」を売っているだけだった。
入社後、たくさん勉強してトークスキルを磨いてきたけど、きっと私の言葉に熱はなかった。
おそらく顔にも表情が無かった。
けれど今は違う。
保険を売るということは、
お客さんの人生の脇役を売っているのだということに気づいた。
そして、それがとても尊いことに、今更ながら改めて感じたのである。
「保険を買うということは、あなたのパーティに我妻善逸やウソップを入れることと同じ。普段はへっぴり腰だけど、いざという時、とっても頼りになるんです」
急にこんな風に話したら、相手はぽかんとするだろう。
でもそう言う時の私の顔は、あの美容部員さんと同じようにイキイキしているはずだ。
私は今日も、人生の究極の脇役を売っている。
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