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妄想と現実の間に


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記事:下田直人(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「また、言いたいことを言えなかった」
さよならと手を振って電車に乗り込んだ後、そんな言葉が身体中を満たしてくる。
それからは、最寄駅に着くまで、後悔の嵐だ。
 
「なんで、いつもこうなっちゃうんだろう」
そんな言葉が頭の中で何度も何度も繰り返す。
 
今日会ったら、「こんなことを伝えたいな」「こんなことを話題にしてみたいな」「こんなことを確認してみたいな」、会う前はそんなことをたくさん思っている。
 
でも、実際に会ってみると、そんなことを話す気が失せてしまうのだ。
それは、毎度毎度のこと。
 
彼女とのデートの時もそうだし、友達と会う時もそうだ。
親と食事をする時もそうだし、ビジネスで会食する時もそうだ。
 
多くの場合で、その人を前にすると、聞いてみたいと思っていたことが、すごくちっぽけなことのような気がして、話すという行為を起こす気すらなくなってしまう。
 
でも、本当はちっぽけなことではない。
例えば、彼女に、「僕は、お互い時間をやり繰りしてもう少し会う時間を増やしたいと思っているが、君はどう思うか?」ということだったり、「この前、ちょっと怒っているみたいだったけれど、僕の何が悪かったの?」ということだったりする。
ビジネスの会食の場面では、「そろそろ契約が終わるが、ぜひ契約を継続させて欲しい。その場合、御社にこんなメリットを与えられると思うが如何だろうか?」と確認することだったりする。
 
とても大切なことだし、それがはっきりしないと、あとで自分自身が、非常に気を揉むことだとわかっている。それなのに、その場になると、大したことじゃないような気になるのだ。
 
そして、別れたあと、冒頭の電車の中のように、後悔と落ち込みが交互にやってくることになる。
それは、はっきりさせたいことがはっきりしなかった気持ち悪さでもあるが、それ以上に、また同じことを繰り返した自分への嫌悪に対しての方が強い。
 
なんでこんな風になるのだろう。
 
いつも嫌な気持ちにはなるのに、そこを掘り下げる考えてみることはしなかった。
実際は、掘り下げると、本当は知りたくない現実を知りそうな気がして、それすら避けていたのだと思う。
 
それでも、ある時、そんな心を退けて、気持ちの奥底を掘り下げてみた。
 
とはいうものの、実はそんな深くまで掘り下げなくてもわかっていたことだった。
 
話す気すら失せる原因は、自分が想像していた答えと違う答えが返ってくるのが怖いからだ。
 
「今日、こんなことを聞いてみよう」
そう思っている時には、それに対してどんな答えが返ってきて欲しいのか、すでに頭の中で想像している。正しくは、「妄想している」かもしれない。
 
その想像(妄想)は、客観的事実からくるものというよりかは、願望に近いものである。
そのことも自分でわかっている。
だからこそ、それと全く逆の答えが返ってくるのが怖いのだ。
 
なんとも気の小さい自分。
 
そうである。
話して、想像と違う答えが返ってくることを怖がっている自分がそこにいる。
実際会った時の相手の反応から、「気の小さい自分」を自分自身が目の当たりにするのが怖いのだ。
 
この恐怖が、話す気を失くさせている。
 
それを知って、よく受け入れた時に、僕は決めた。
「開き直ってみよう!」と。
 
勇気がいったけれど、気の小さい自分を認めよう。
希望的観測で想像している自分を認めよう。
 
「それでいいじゃないか」と思うようにした。
 
気が小さくても生きていける。
希望的観測を妄想している間は楽しさでいっぱいだ。その時間は、まさにエンターテイメントだ。
 
そう思った時、自分の心の中にあった、なんだか固くて暗くて重い物体が消え去った瞬間だった。
 
それからの自分は大きく変わった。
 
そう言いたい。
 
しかし、実は、そんなには変わっていないかもしれない。
いまだに、人を目の前にしたら、話す気が失せていることもよくある。
別れた後に、後悔することもよくある。
 
ただ、ひとつだけ変わったとしたら、何となく、「そんな自分も自分らしくていいかな」と思えるようになったことだ。まだ、何となくだけれども。
 
それは、人から見たら、少しの進歩かもしれないが、自分の中では大きな進歩だと思っている。
 
 
 
 
***

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2020-06-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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