【私的福岡・番外編】九州の「孤島」で見つけた宝物
担当:Ryosuke Koike(ライティング・ラボ)
九州は本州から見れば別の「島」であるが、その九州内にはたくさんの離島・孤島がある。
時間に余裕ができた私は、ずっと前から行ってみたいと思っていた「孤島」へ旅に出ることにした。
旅はいい。
日常生活では目にしたことのない風景を見ることができる。
食べたり飲んだりしたことのない食事を楽しむことができる。
煩わしい悩みごとや考えごとを(一時的にせよ)忘れることができる。
今、その時その時を味わう余裕を取り戻してきて、私に与えてくれるのだ。
東京の天狼院でも、大人の修学旅行と称して色々な人達と旅に出かける、「天狼院旅部」が人気を博しているのもわかる気がする。
今回の旅はせっかくの機会なので、飛行機を使用せず時間をかけて行くことにした。
「孤島」へ向かう旅路では、終始天気がよかった。絶好の旅日和である。
福岡からは南の方にあるこの「孤島」では、福岡ですするラーメンとは異なる種類の麺や、福岡では見かけない地元民から愛されるビールなど、違った食文化を体験することができる。わざと朝食を抜いてきた頭の中はグルメでいっぱいだった。
早朝から出発し昼過ぎには到着した。
島に降り立ち、海辺の方を見渡してみる。空との境界が溶けそうな青い海。じりじりと降り注ぐ太陽の熱も、海から吹く風でいくぶんか和らいでいた。
まちなみも、ビルや高層マンションで埋め尽くされた福岡とは違い、まだゆったりとしている。
私は、すっかり縮こまった胃袋を広げるため、事前に調べておいたレストランへと足を運んだ。
エアコンの効いた室内の席に通され、注文して待つこと20分。
目の前のテーブルには、メニュー表に書いてある値段にしてはボリュームのある肉料理が運ばれてきた。
早速一口食べてみる。
作り立てなので当然熱い。それ以上に肉が「厚」い。
厚いながらも柔らかさをもつジューシーな肉と、サクッとした食感の衣と、添えられたとろとろのソースに、体中の感覚という感覚がもっていかれてしまった。
私はいつの間にか目を閉じて味わっていた。こんなとき、視覚はもはや邪魔だ。
何切れか食べて目を開けると、傍に女性の店員が笑って立っていた。
「そんなにおいしそうに食べるんですね」
どうやら食べながら笑みをこぼしていたらしい。
会計を済ませて店の外に出たときには、お腹のタンクは満タンになっていた。
やっぱり発祥の地は味が別格だ。
チキン南蛮うまいなー。
車に乗り込み、出発時は満タンだったガソリンの残量を確認して次の目的地へと向かった。
陸の孤島「延岡」。
福岡県民でもなじみの薄いこの街のことを、関東圏ではどれだけの人が知っているだろうか。
延岡市は、福岡の南東に、もっとわかりやすく言えば大分の南の方に位置する宮崎県の都市である。関東圏から飛行機で福岡を経由せずに行くなら、大分空港か宮崎空港に降り立ち、レンタカーや電車を利用することになる。
最近になってようやく高速道路がつながり、福岡からも行きやすくなった。
そのような事情からか、延岡市は自虐的に「孤島」としての魅力を伝えている。
その魅力は、これまで外に伝えられず長年熟成されてきただけのことはある。
花の香りとほのかな味が口元に広がるビールや、夏みかんの甘酸っぱさが喉元を通りすぎるビールなど、バリエーション豊かな「地ビール」。
たっぷりの挽肉と卵、唐辛子で赤く染まったスープの中に、ニンニクがまるごと入った「辛麺」。不思議な食感の麺と選べる辛さに、体中から水分が噴き出てくるも、箸は止まらない。
チキン南蛮をはじめ、食に関しては福岡に引けを取ってはいない。
シュノーケリングやシーカヤックなど、福岡にないものもある。
延岡にはみんなの知らない「宝物」が眠っているのだ。
今まで、福岡以外の九州の観光地を尋ねられたら何と答えただろう。
大草原がどこまでも広がる熊本、阿蘇。
おしゃれな温泉街となった大分、湯布院。
1000万ドルの夜景が眼前に広がる長崎。
有田焼など陶磁器の佐賀。
湾内に雄大な桜島がある鹿児島。
宮崎は……。
ここまで書いておきながら、本当に伝えたいことは別にある。
今回の旅は、実は仕事上で関係のあるイベントへの参加を兼ねてのものだったが、参加者に知り合いがあまりいなかった。福岡以外の地で、知っている人の少ないイベントに参加して楽しめるのだろうかという、ちょっとした不安があった。
しかし、そんな不安はイベントで色々な人と一緒になるうちに、いつの間にか消えていた。
あらためて感じた、人とつながることの楽しさ、大切さ。
もちろん観光地をめぐる旅は、非日常な世界が体験できてリフレッシュになる。
一方、「人に出会う」旅というのも、普段会えない、又は会ったことのない人との時間の共有を通じて、昔を懐かしんだり、逆に新しい感覚が養われたりする。そして、次の出会いへともつながっていく。
旅での人との出会いは、次の旅への始まりなのだ。
高速道路がつながったとはいえ、福岡から3~4時間。
延岡は今でもやっぱり「孤島」だと思う。
それでも、今回の旅は私に大切なものを気付かせてくれた。
関東圏の方へ。
福岡に来たとき時間に余裕があるなら、延岡まで足を「延」ばしてみませんか?
***
この記事は、ライティングラボにご参加いただいたお客様に書いていただいております。
ライティング・ラボのメンバーになり直近のイベントに参加していただくか、年間パスポートをお持ちであれば、記事を寄稿していただき、店主三浦のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
【天狼院書店へのお問い合わせ】
TEL:03-6914-3618
【天狼院公式Facebookページ】 天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。イベントの参加申し込みもこちらが便利です。
【天狼院のメルマガのご登録はこちらから】
【有料メルマガのご登録はこちらから】