いっそ、アーティストなんていなければよかったのに。
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:長尾創真 (ライティング・ゼミ日曜コース)
「芸術ってよくわからん」
いつもそう感じていた。
ピカソの絵は、何がいいのか分からない。
太宰治の文学は、難しくて読みづらい。
ジャズミュージックは、どういいのか分からない。
文化というものの楽しみ方がわからなかった。
これまでぼくは、部活一色の人生だった。
小学校一年生のときに、サッカーを始めてから高校卒業までサッカー一筋。
大学では、ヨット部に入り、ヨット一筋。
芸術に触れる機会が少なかった。
ましてや、芸術に興味を持つことなんてなかった。
中学校の朝の会。
読書の時間があった。
自分の好きな本を持ってきて、自由に読む時間だ。
読みたい本なんてなかったから、「死ぬかと思った」というコミカルかつ、ちょっとえっちな本をブックカバーをかけて読んでいた。
(その本は、先生にばれて没収された)
絵画もわからなかった。
自分で言うのもなんだが、中学校の時、ぼくは勉強ができるほうだった。
成績は5段階評価で、ほとんど「5」。先生から、よく褒められた。
でも、唯一美術が「2」だった。
テストの点は取れるけど、センスはない。
おもしろくない人だったかもしれない。
ぼくは、芸術がわからなかった。
でも、就職してから、そうは言ってられない状況になった。
学生生活が終わってから、芸術に触れる機会が圧倒的に増えたのだ。
自分の周りには、アーティストがうじゃうじゃと現れた。
会社に縛られたくないから、フリーで写真を撮るひと。
壊れた美しい柄の陶器を再利用して、イヤリングを作るひと。
音楽の夢を諦めず、社会人になってもオーディションを受け続けるひと。
これまで出会わなかった人。
いや、これまで目をそらしていたひとが目の前に現れた。
いっそ出会わなければよかった、とさえ思った。
だって、これまでの人生は、十分幸せだったから。
一生懸命努力して、高みを目指した。
そのおかげで、全国の舞台で活躍することもできた。
居心地がよかったし、幸せだった。
でも、自分の知らない世界に触れると、焦る。
なにも知らないことに、焦る。
彼らに、憧れてしまう。
だから、苦しくなる。
自分にできないことをできるひとばかりだから。
自分の能力が無いことに気づいて、辛くなる。
でも、ぼくは見て見ぬ振りして、自分の道を貫けるほど強くない。
どうしても、彼らの輝きに憧れて、アートのことを知りたくなる。
そして、アートを勉強してしまう。
世界を席巻してきたアーティストの存在を知る。
なぜ評価されたのかを知る。
そして、アーティストの定義を知る。
ある本によると
「アーティスト」は、世の中の常識に立ち向かい続けているひとらしい。
音楽の常識、絵の常識、文学の常識、世の中の常識。
それらに真っ向からぶつかり、もがき、問いを立てたひとがアーティスト。
例えば、ピカソ。
ピカソが現れるまで、絵画とは、きれいに書くこと、美しく、見たまま書くことが正しいとされていた。
しかし、ピカソは、崩した絵を書いた。
1人の女性をいろんな方向から見て、それを合体させて、一つの絵に収めた。
「正しい」なんて無いことを、絵画で表現した。
他にも、アーティストは、たくさんいる。
たとえば、QUEEN。
たとえば、レディーガガ。
たとえば、太宰治。
これまで、人が考えてこなかったこと、タブーとされてきたことを成し遂げたひとたちだ。
そのひとたちは、恐怖を感じるほどに、魅力的だ。
彼らは、信念を通しているから、魅力的なんだと思う。
アートを知れば知るほど、おもしろさがわかる。
そして、奥深さがわかる。
アーティストの格好良さがわかる。
そして、思った。
ぼくは、アーティストになりたいのかもしれない。
自分のことを表現できて、常識ではなく自分の信じる道を信じて。
自分が楽しくて、自分がワクワクする人生を生きて。
そんな人になりたいのかもしれない。
だから。
ぼくは、芸術を始めた。
写真、文章を始めた。何か、自分を表現できる人間になりたくて。
ぼくは、スマホを捨てた。
自分の思考を奪うスマホを捨てた。
常識的には、スマホを持つことは、当たり前で、便利かもしれない。
でも、ぼくには要らなかった。
スマホを見ている時の自分は、ダサかったから。
YoutubeとLINEとInstgramを見続ける自分はダサかったから。
常識を捨てた。
自分が、もっと輝けると思う方に賭けた。
世界のアーティストとは、レベルの低いちょっとした常識の破り方かもしれない。
でも、自分は常識を疑って、行動した。
小さな一歩だが、大きな一歩だ。
これから、ぼくは、アーティストになる。
少しずつでいい。
自分が、「わからない」と避けていた、いや、恐れていた、あのアーティストたちに。
少しずつ、近づいてみせる。
***
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