【天狼院STYLE 表参道オープン】天狼院と表参道と私の「5秒間の奇跡」〜「天狼院STYLE表参道」誕生〜
2015年9月11日。
私は、日本のファッションの中心地、表参道にいる。
17時から始まったレセプション・パーティーは19時を回ったころには、招待客で広い店内はいっぱいとなり、服や本を見るどころか、進むのも困難になった。
ボーダーとストライプの様々なファッションに身を包んだ人々の中にあって、私は台風の目の中にいるように、一瞬、無風状態となって、こうつぶやいていた。
「私はとうとう先が見えない世界に来たんだ」
あれは夏のはじまりの頃のことだった。
あの日はもう、見えない力がはたらいたとしか思えなかった。
通り沿いのビルから足早に出て来た二人組とすれ違った。
ふっと、見覚えがあるシルエットだと思った瞬間、突然、呼び止められた。
「あ、夏川さん!」
「三浦さん・・・・・・」
それは、池袋の天狼院書店店主の三浦さんだった。
そして、一緒にいる女性にも見覚えがあった。
「あ、えっと、福岡の?」
その女性は不思議そうに頷いてこう答えた。
「嘉村です」
「三浦さんのブログで見ました」
と、言うと、嘉村さんは安心した表情で微笑んだ。
今度9月にオープンする福岡天狼院の店長だということは、三浦さんの記事や天狼院書店のFacebookページで見て知っていた。
「で、最近何してるの?」
と、三浦さんは私の顔を指して言った。
何か、企みに満ちたように目を輝かせていた。
「いや、最近は特に、ぼーっとしていて」
と、私は言った。
曖昧とした私の表情を見て、三浦さんはひとつ、頷いて、こう言った。
「面白いこと一緒にやる? やるよね!? あとで連絡するから!」
その間、5秒もなかったかもしれない。
そして、嵐のように去っていった。
今覚えば、そのとき、三浦さんの頭の中では、今日、私がこうして表参道の店舗に立っている姿をイメージできていたのかもしれない。
もちろん、そのときの私には、三浦さんが言っていることがまるで理解できなかった。もしかして、今も三浦さんのイメージの20%も理解できていないのかもしれない。
でも、間違いなく面白いことが起きる予感がした。
オープン当初からたまに訪れては本を読まずに同僚とひたすらアツく仕事の話を語り合っていた天狼院。三浦さんと仕事をすることは考えてもいなかったけど、きっと、ほんとに面白いんだろうな。でもうまくいくことは無理矢理じゃなくて自然にうまくいくものだから、引き続き気のむくままに過ごしておこうと思った。
三浦さんから連絡がないままに、数週間が過ぎた。
Facebookを見る限りでは、三浦さんは福岡のことで手一杯のようだった。
気の向くままにすごした結果、自分の望む毎日をこれからもずっとすごしていける自信もお金も、底をつきかけていた。
自暴自棄、とまではいかないけれど、やさぐれた気持ちで深酒したこともあった。
立ち上がりたいのに立ち上がれない。
家に帰りたいのに帰れない。
私はもう、自分の望む人生を生きられないかもしれない。
暗闇が、どんどん私を飲みこんでいった。
ようやく立ち上がって歩き始めたときに、雨が降り始めた。
私はひとり、泣きじゃくりながら家に向かった。
もしかしたらこれが、最後のチャレンジかもしれない。
だったら何をする?
どん底を味わった次の日から、数日間考え続けた。
世界中いろんなところで出会ったひとと、お互いの人生の話をして「またね」って手を振る。私はそんな毎日を送っていきたい。
それなら今、出て行ってしまおう。何もないけど、飛び出してしまおう。着地する場所がないって分かっていても、ジャンプするんだ。
そう決めた。
そして、バンコクにいるひとりの友人に連絡を取った。
「海外に出たいと思っているんです。何でもします。何かお手伝いさせていただけることがある方、いらっしゃいませんか?」
古いけど夕暮れどきの美しいマジックアワーが見える大好きな部屋も離れることにした。
もともと荷物は少なかったけど、これからどこにでも身軽に行けるようにさらにいろいろなものを手放した。
「日本を離れようと思う」
周りにはそう告げ始めていた。
一通のメールが届いたのは、バンコクにある会社の代表とのSkype面談を設定してもらったその日だった。
「さーて、面白いこと、やろう!!! いいポジション、用意したよー」
三浦さんからひさしぶりに連絡があった。
チャンスの神様には前髪さえなかった。
超特急の列車から、面白いことやるから乗りなよ、という声だけが聞こえる。
よく分からないけど、なんだかワクワクする。
周りに、今度はどう説明しようか。
『本屋になります』? いや、『普通の本屋じゃないんです』?
気づけば周りに対する説明を考えている自分がいた。
自分に対する説明は、必要なかった。
天狼院が今から何を成し遂げるのか、私にはまだわからない。
もちろん三浦さんの頭の中には、私たちが思いつかないような大きな構想があるのだろうけど、そこに予定調和に向かうのではなくて、今この瞬間にも、未来はどんどん変化している。進化している。
そして私のように超特急に飛び込む人、これから飛び込んで来る人たちとの科学反応で、これからもどんどん変化を続けるのだろう。
そんな状態を、「先が見えない」という人もいるかもしれない。「不安だ」と感じる人もいるかもしれない。
でも私は、この先が見えない、同じところにいつづける瞬間がひとときもない世界が、たまらなく好きだ。
自分の人生を、世界の未来を、今ここでつくっていっている感じを、たまらなく愛してしまっている。
バンコクにいたかもしれない私が、今日、ファッションの中心地、表参道にいる。
人生って、ほんとによく分からない。
世界はきっとこうやって、ちょっとした奇跡の積み重ねでできているのだろう。
そんな、自分でも予想のつかない展開を味わうことを知ってしまったから、もう楽しむしかないのだと思う。
道があるから踏み出すんじゃなくて、何もないけど、どうしても踏み出したくて足を出す。
なんだか自分の心がワクワクするほうに進んで行く。
そしてそこが道になる。
「自分のスタイル」も、そうやってできていくのかもしれない。
私もこの真っ白な地面に、また一歩、足を踏み出した。
編集:天狼院N-ice
2015年9月12日 天狼院「天狼院STYLE表参道」がオープン致しました。
ファションブランド STYLE TOKYO friends’ home とのコラボ店。
皆様のお越しをお待ちしております。
ー「天狼院STYLE」とはー
天狼院の新しいブランド「天狼院STYLE」
このブランドは「自分のSTYLEを見つけることができる書店」というコンセプトで、様々な業態や他書店さんとコラボして新たな店舗を出していくブランドです。天狼院とコラボしたいというお店さんお待ちしております。
天狼院STYLE表参道 (STYLE TOKYO friends’ home内)
オープン日:2015年9月12日(土)(前日の9月11日にプレオープン)
住所:東京都渋谷区神宮前4-9-8
時間:12:00〜20:00
【天狼院STYLE表参道へのお問い合わせ】
TEL:03-6914-3618
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