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引っ越しで物と向き合う


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記事:ゆーすけ(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
引っ越しはとにかくやることが多い。新しい土地での住居を探すところから始まり、引っ越し業者の手配や電気、ガス、水道、インターネットの解約や引っ越し先での契約手続き、免許書や住民票等のお役所申請関係などなど。考えただけでも嫌気がさす。
私は今まで社会人になってから三回引っ越しを経験した。働いている会社が全国転勤型の業務形態であり、会社から転勤を言い渡される度に引っ越しとなるため、これから何度も引っ越しをしなければならないだろう。そう思うと、若干、今後の人生に対して絶望を覚える。
しかし一方で引っ越しをしている中で気づかされることもある。
引っ越し準備の中でもっとも時間と体力を必要とするのが、部屋の片づけだと私は思っている。今までクローゼットに押し込んでおいた物たちを引っ張りだして、一度部屋中を物であふれさせ、それを段ボールにひたすら詰め込んでゆく。詰め込んでいきながら、要らないものが出てくると「これを機に!」ということでゴミ箱に捨て、逆に要るものは「これからもよろしく!」ってことで大切に段ボールにしまう。そのようにして持ち物たちをどんどん選別していく。
そうした作業をしていると、中には、「なんでこんなもの今までとっておいたのか?」と思ってしまうものや、逆に「これは今までずっと使わずにしまっておいたけど、なんで使ってなかったのだろう? 次の家に行ったときは使おう!」と思うものなんかも出てくる。また、洋服を衣装ダンスから段ボールに詰め替えたりするときなんかは、「あ、このTシャツお気に入りでずっと着ていたけどだいぶよれてきちゃったな。そろそろ捨てるか」とか、「このジーンズは十数年履いているけど、まだまだ使えそうだぞ!」といったことを考えたりもする。そうして自分の持ち物たちと少しずつ向き合っていく。
持ち物たちを一つ一つ手に取ってみる機会は、毎日に忙殺されている状態ではなかなか訪れない。そのため、引っ越しという半ば強制的な機会を与えられると、始めたときは「あー。めんどくせーな。とっとと終わらせてしまおう」と思ってしまうかもしれないが、やっているうちに新しい発見が出てきて、少しずつではあるが楽しくなってくる。そうしてどんどん物たちが片付いてゆき、終わった頃には自分の持ち物が少しスリムになっている。本当に必要な物たちだけを残して。
私の場合は何気なく買ったものは、間違いなく、引っ越し準備の過程で捨ててしまう。「安いから!」とか「必要になるかも?」とか「○○に行った記念として!」と思って衝動的に買ったものはまず残らない。逆に私の手元に残っているものと言えば、何軒も家具店を巡ってようやく「これだ!」と思って購入したローテーブルや、高校の頃大切な人にもらったマグカップなど、本当に思い入れのあるものばかりである。引っ越し準備をするたびに、こうした物への愛着度合いを再認識し、「これからも大事にしていこう」という気持ちが溢れてくる。そして、(引っ越し業者に壊されてはたまらないから)自分の手で壊れないように厳重に梱包して大事にしまい、次の家でも大事に使う。
 
このようにして、準備は進んで、引っ越し当日を迎える。引っ越し業者さんに段ボールや大型家具をトラックに積んでもらい、積み残しがないか最後にもう一度トイレやお風呂も含めて点検しなければならないが、そこで自分は最も大きな持ち物と向き合う。それは……自分が今まで住んでいた部屋である。
家具が運びだされた自分の部屋はがらんとしていて、少し寂しい。最初にその部屋を探して決めたときに、物が何も置かれていない状態は見ているはずなのに、改めて何もない自分の部屋だった部屋を見てみると、「こんなにうちって広かったっけ?」って気持ちになる。物がないから音が吸収されず、咳払いをしてみると響き方が少し変な感じがしたりする。それすらもすこし寂しい。今までそこにあった物を思い出しつつ、その部屋で過ごした様々な思い出を振り返る。友達を呼んで、朝まで飲んでそのまま昼過ぎまで寝倒したこともあっただろうし、その部屋に恋人を呼んだこともあったかもしれない。ひょっとしたら、なんかの拍子に食べ物や飲み物をひっくり返してしまい、いまだにそれが床のしみになっているかもしれない。
いずれにせよ、自分はそうして最後に自分の部屋と向き合う。今までありがとうという感謝を込めつつ。そして、次の部屋も大切に使わせてもらおうと思いつつ。
 
今引っ越しを検討されている方もいるかもしれない。また、私と同じように転勤族でこれから何回も引っ越しをされる方もいらっしゃるかもしれない。引っ越しはかなり大変だけれども、いい機会と思って、じっくり自分の物たちと向き合ってみてはいかがだろうか。
 
 
 
 
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2020-07-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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