体重計に乗るのをやめたら痩せました
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記事:ちゃんなな(ライティング・ゼミ5月開講通信限定コース)
いつもそれは、出先で突然判明する。
帰省先の実家、旅行先のホテルの脱衣所、銭湯。
自宅以外の風呂上がりに体重計が目に入ると、わたしはつい乗ってしまうのだ。
「やばい。結構太った……」
いろいろと言い訳は思いつく。
「実家でだらだらして、餅をちょっと食べたから一時的なものだろう」
「旅行先だからって調子に乗ってあれこれ食べすぎたせいだ」
だが家に帰ってからホコリまみれの体重計を引っ張り出して測ってみても、もちろん変化はない。翌日も、翌々日も。
これは胃の中身の問題じゃない。体脂肪が増えているのだ。
そしてようやく決意する。
「よーし、ダイエットだ!」
食べる量を減らす。糖質制限。筋トレ。ちょっと走る。
我慢しているし当然減るだろう、と思いながら毎日体重計に乗るが体重は変わらない。それどころか増える日もある。
「なんで減らないんだ! もうダイエットなんてやめてやる!」
開始から諦めるまで、わずか2週間。
……この一連の流れを、人生で何度繰り返しただろうか?
もう三十路も近いのに、私はダイエットに成功したことが一度もなかった。
今年、そんな私は外出自粛と在宅勤務による運動不足を理由とした「コロナ太り」に直撃した。
ダイエットに飽きるとまた自宅で体重計に乗らなくなる私も、TwitterやInstagramにあふれる「太った」の声に、さすがに嫌な予感がして、おそるおそる測ってみたら、やはり。
理想とする体重から+3.5kgの値が出ていた。
「昨日飲みすぎたせいで、身体に水分が溜まっているだけ」という言い訳も思いついたけれど、ビールを一度に3.5kgも飲めるだろうか。
観念した私はベッドに入る前、人生で何度目かの宣言を夫に言い渡した。
「やっぱり太ってたわ。明日からダイエットする」
どうせまた、三日坊主になる。
同じ過ちを繰り返さないために、今回のダイエットでは「みんチャレ」という習慣づけのためのスマホアプリを導入した。
「みんチャレ」ユーザーは5人1組で1つのチャットルームに入り、習慣化したいタスクを実行したら報告する。私の場合は「体重計測」のチャットルームで、毎日体重計の数字を写真に撮って報告した。
アプリが連続投稿日数をカウントしてくれるので、記録更新のために頑張ろうという気持ちになる。何より同じチャットルームのユーザー同士、励まし合うことで継続につながる。なかなかうまいつくりのアプリである。
実際、私は1ヶ月以上体重計測を継続することができた。
同じアプリの「筋トレ」チャットルームにも入り、そちらも順調に続けることができた。
勢いづいた私は、エクササイズゲームのフィットボクシングを始め、食べ物にも気をつけて、炭水化物はできるだけ豆腐や全粒粉のパンに置き換えた。
すると、徐々に腹筋が割れてきたではないか。
三日坊主を克服し、今度こそダイエットは成功するように見えた。
だが体重が減らないのだ。
同じチャットルームのAさんやKさんが目標体重に徐々に近づいているにも関わらず、私の体重は一進一退。
今日は0.3kg痩せたと思ったら、翌日は0.5kg増えている。長い期間で見たら減っているかと思いきやそうでもない。
イライラが止まらない。
開始から1ヶ月ほど経ったある日、
「こんなに減らないなら、もうダイエット止めようかな」と夫に弱音を吐いた。
「うん、止めた方がいいよ。体重のことばっかり気にして大変そうだよ。別に痩せなくてもいいよ」
そう言ってほしかったのだ。
ところが返事は意外なものだった。
「ダイエット止めるまえに、毎日体重計に乗るの、やめたら?」
夫はそう言った。
「えっ、なんで」
「だって『やばい、太った!』って気づくのは、久しぶりに体重を測るからでしょう。毎日測っていたら焦るほど大きな変化にはならないじゃない。減量も同じで、ちょっとずつ減っていても毎日測ると差が少なすぎて見えないんだよ。大丈夫。きっと体重は減っているから、しばらく測らなくてもいいんじゃない」
夫の言うことはもっともだった。
思い返せばこれまでずっと、ダイエット中の私はいつも数日で変化が出ることに期待して、毎日体重計に乗って一喜一憂していた。
そんなに急に、目に見えて100g単位で体重が減ったら誰も苦労しないのに。
それから私は「みんチャレ」のチャットルームを退出し、体重計を片付けた。
毎日体重計に乗って、変化が見えないことにイライラすることがなくなって、嫌なことが一つ減った。
でも運動と食事制限はやめなかった。
するとどうだろう。最後の計測から3週間ぶりに測ると、最初の体重から1.5kg減っていた。
日々の努力のおかげで、着実に目標に近づいていたのだ。
やっぱり、私のダイエットを邪魔していたのは体重計だったのだ。
「ダイエット、いつも続かないんですよね……」という方は、食事や運動を見直す前に、体重計を仕舞うことから始めてみてはいかがだろうか。
***
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