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いつものねぎ玉牛丼


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記事:武内大輔(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
個人的に吉野家の牛丼が1番好きである。
食事は短時間で済ませることが多いため、牛丼屋さんにはよく足を運ぶ。
職場に近いお店でいつものメニューを頼む。
ねぎ玉牛丼と生野菜サラダ。
私の最近の定番である。
 
私の食べ方を紹介する。
ねぎ玉牛丼は牛丼と玉子とねぎが別れて運ばれてくる。
玉子の白身と黄身を分ける代物も来るが私は使わない。
最初に牛丼のど真ん中のご飯を少し食べて穴を開ける。
そこに玉子を直接放り込む。
そのあとにねぎを満遍なくふりかけて完成である。
 
私はアツアツのご飯が苦手である。
お腹が空いていて一気に牛丼をかきこみたいときアツアツのご飯が邪魔をするのが嫌なのだ。やけどなんかしてしまうとショックを1日引きずってしまう。
なのでご飯を玉子でちょうどいい具合に冷ましておきたい。
ご飯の真ん中に穴を開けるとそこから玉子がアツアツのご飯にしみてちょうど良い温度になる。
玉子を溶いて全体にふりかけることはしない。そこは運に頼っている。
まさしくそれは「玉子占い」である。
いい感じにご飯全体に玉子が行き渡ればその日はいい日。
片方に寄ってしまったらその日はよくない日。
今日の運勢は玉子で占うことができる。
 
いつもねぎ玉牛丼を頼むが同じものは来ない。
実は毎回ちょっと違う。
牛肉の焼き加減、ちょっと焼きすぎて固めの時がある。
牛肉と玉ねぎの割合、玉ねぎがやたら多い日がある。
運んで来る店員さん、明るい人もいれば静かな人もいる。
特に文句があるわけではない。
いつも同じものを食べていれば些細な変化にも気付くのである。
だから同じ日が来ることがないように、同じねぎ玉牛丼はやってこない。
 
私は運転手の仕事をしていて、毎日同じところを走る。
ルーティンワークが多い仕事だ。
ルーティンワークで気をつけることは「慣れ」ゆえのミスである。
単純な作業であっても「慣れ」が生じることでミスにつながる。
 
私は毎日同じところを走るが、
利用していただくお客さまも同じだ。
私がいつもねぎ玉牛丼を食べるように、
お客さまもいつも同じところを走っている。
 
だからお客さまは私以上に運転に敏感であると思う。
いつもと違うことにも気づくだろう。
「いつもより早く着くな」
「ブレーキがいつもよりキツイな」
私は「慣れ」ゆえに自分の視点でしか自分の運転を見ることができない。
一方でお客さまはお客さまの視点から私の運転を見て、感じて、いる。
 
私がねぎ玉牛丼についてちょっとしたことに気づいてしまうように。
お客さまは私の運転のちょっとしたことにも気付くだろう。
しかし、私がねぎ玉牛丼について牛丼屋に何も言わないように、
お客さまも私の運転についてとやかく言うことはない。
何も言わないけど、何か感づいている。
 
それならば、直接お礼を言われなくても
お礼を言いたいと感じさせる運転をしたい。
今日の運転手のブレーキは揺れないな。
発車がスムーズでガタガタしないな。
と思ってもらえるように。
 
私も毎日ねぎ玉牛丼を作っているのだ。
私にとっては「慣れ」たルーティンワークであるが、
私の一挙手一投足がお客さまへ伝わることを忘れてはいけない。
お客さまはその敏感な変化に気付いている。
それならばしっかりと実力を発揮しベストを尽くすことが大切だ。
毎日違う日がやってくる。
最高のねぎ玉牛丼を提供するために、毎日が勝負である。
 
私は元メジャーリーガーの松井秀喜が好きで石川県にある松井秀喜ミュージアムにも行ったことがある。
松井はプロ野球時代、読売巨人軍の4番を務め巨人軍と共に大人気であった。
その時に言った言葉がミュージアムに残されている。
「巨人軍のチケットはなかなか手に入らない。ひょっとしてそのゲームしか見られない少年が来ているかもしれない。だから、せっかく来てくれたファンのために休むわけにはいかない」
私もそのファンの1人であった。
巨人軍のチケットが手に入った。
茨城の地方球場で開かれた試合だった。
ひどい雨で試合の様子はほとんど分からなかったが、
センターの守備についた松井の後ろ姿を見ることができた。
「マツイー!」
と子供の自分は叫んだ。
振り向いてはもらえなかったが、松井の背中は大きかった。
 
私が松井を見ることができたのは、
松井が休まず試合に出たからである。
松井にとってはプロとして当たり前で、
ルーティンワークの一つだったかもしれない。
でも、私にとっては記念日となった。
毎日が誰かにとっての記念日である。
同じ日はやってこない。
だとしたら私にできることは、
ルーティンワークの中で最高のねぎ玉牛丼を
提供できるように努めることである。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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