それはどうやって持ってくの?
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それはどうやって持ってくの?
大滝陽平(ライティング・ゼミ通信限定コース)
「これ、持っていけないですか!!?」
『また、何かあったか……』
何も起こらないことなどない、空港の中でも保安検査場では特にトラブルがよく起きる。
飛行機に持って入れるものには意外な制限が多いのだ。
今日はどんなものだろうか。
「なんでこれが持っていけないの!! 危ないはずないじゃない!!」
そう思うだろう。私もそう思う。
しかし、飛行機の中へは持っていけないのだ。
楽しく、テーマパークで遊んできたような、
子供がお母さんと約束をして買ってもらったのであろう、おもちゃの銃があった。
「なんで持っていけないの?」
続いて出てくる言葉は大体これだ。
「銃の形をした物品はおもちゃであったとしても、凶器類似品として、
機内への持ち込みは案内できかねます」
こう答えるしかない。
それが凶器になる。そんなことはないだろうと私たちも思っている。
しかしながら、凶器の形をしているというのはだめなものが大半なのだ。
「カウンターで預けてきてください」
そう伝えるしか、方法はないのだ。
預けることが出来れば持っていくことが出来るが、そうではないことも多くある。
「2つないと困る!! 捨てることは出来ない!!」
何か起きているようだ。
行ってみると、そこにはライターが2つある。
使い込まれているオイルライターとどこでも売っていそうなライターがあった。
はて、なんで2つないといけないのだろうか?
話を聴くとオイルライターにはオイルが切れており、火がつかないらしい。
「タバコが吸えないじゃないか どうにかできないのか?」
オイルライターに限らず、喫煙用のライターは1名に対して1個として、定められている。
これは日本の国内線ではどの航空会社でも変わらない。
「同行する方がライターをお持ちでなければ、一時的に預けていただいて、
もしそうでなければ、陸送をお願いしますので、着払い伝票を記載してください」
2つ持って、飛行機に乗せることは出来ない。
まだまだこれくらいは珍しくない。
「せっかく手に入れたのに、捨てないとだめなの?」
無水エタノールと書いてあるボトルを前に、検査員と話しているのが見える。
新型コロナウィルスの消毒・除菌方法として、紹介されて以降、増えた品物だ。
「飛行機を使っての輸送も宅急便等も輸送できないので、
破棄いただくしか方法はありません」
消毒・除菌に使うものだから、問題ないと思われるだろうが、
無水エタノールなどのアルコールは引火する。
運ぶ方法がない以上、捨ててもらうしかないのだ。
とても残念であろうが……。
「これがないと、行く意味がないの!!」
次はなにが起きたのか、見に行くとそこにはフィギュアスケートで履く、
スケート靴があった。
話を聴いてみると試合があるのでどうしても必要らしい。
スケート靴は預ければ持っていくことは出来るのだが、
機内に持っていくことは出来ないのだ。
なぜなら、スケート靴にはブレードというものが装着されているので、ただの靴ではない。
ブレードは凶器になりえるとの判断になるのだ。
しかし、保安検査場の通過締め切り時刻である、20分前を過ぎている。
つまり、手荷物を預ける締め切り時刻も過ぎているのだ。
「申し訳ないのですが、手荷物のお預かり締め切り時刻を過ぎております。
ですので、飛行機に乗って、予定を優先するか、
靴を優先して、予定を変更するか、選択いただきたいです」
乗れないです。すいませんというのは簡単なのだが、
予定は私たち職員がどうすることもできないので、
私たちが出来ることを提示して、選択をするのはあなた自身なのだ。
ドッキリを受けた時のような、衝撃を受ける。
そんな急な驚きを受けることもある。
それがないとどうしようもない、そんな移動の時は確認が必要だ。
『飛行機を安全に飛ばすために』が私たち係員は乗る人たちにとてつもなく厳しい。
≪たぶん大丈夫≫では乗せられないのだ。
「これはいつも使っているから」という言葉だけでは乗せられない。
説明書やホームページに安全であるかを確認できる内容が明記されていないと、
安全であるかを証明するのは持ち込みたい側が準備しなければ、乗せられないのだ。
飛行機を墜落させないためには、何でもやるのが私たち職員であり、
守るべきは法律と規則を守って、安全を守ることが必要なのだ。
わからないことは調べよう。
調べれば出てくるし、それでもわからなければ電話でも確認してほしい。
ただし、電話やメールなどだけではわからないものもある。
電話やメールで対応してくれる職員は空港で実際に飛行機に乗る皆さんと対応していないので、十分に質問に答えられないこともある。
持っていきたいものがあれば、航空会社や国土交通省のホームページを参照したうえで、
相談いただきたい。
空港でドッキリを仕掛けられないために。
***
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