運動音痴の試行錯誤にみる、「苦手」との付き合い方
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:アキ(ライティング・ゼミ日曜コース)
「苦手なこと」と言われて、たいていの人は、ひとつやふたつ、頭に浮かぶものがあるのではないかと思う。そして、それに対する苦手意識を少しでも減らすことが出来たら人生楽なのになぁと思ったことのある人もいるのではなかろうか。
細かいものをあげていくと両手でも足りないような気がするが、私の場合、かなりの年季が入っている大の苦手な分野は、運動である。
根っからのインドア人間な私は、大学を卒業して随分たった今でも、体育の授業をサボって単位を落として卒業出来ないなんていう夢を見るくらいだ。祖父母も、両親も、弟も、人並み以上に運動ができるようであったが、何故か私にだけはその遺伝子が欠落しており、徒競走では学年最下位レベルというなかなかの実績だった。週末のリフレッシュに爽やかにフットサルやテニスやゴルフをする友人が本当にキラキラ輝いて見える。
そんな「苦手」と向きあう角度を変えてみようかと思ったのは、大人になって随分たってからのことである。
あれだけ苦手だった体育の時間から開放された私は、能動的に運動なんてするわけもなく社会人としての日々を送っていた。幸いなことに、健康オタクで食べ物や栄養には割と気を使っているのが功を奏しているのか、体型は10年以上変化がないのだが、昔は軟体動物のように柔らかかった身体が確実に固くなってきている。そして、ずっと痩せ型だった母が、還暦を過ぎた頃からお腹まわりの変化を気にし始めた。これは、まずい。今ならなにか手を打てるかもしれない、と、近所のジムに入会した。
ところが、だ。入会したジムは、自宅から徒歩5分ほどの距離だった。マシンでのトレーニングはそもそも向いていないと思い、やらなくても良いことにした。ターゲットにしたのは、ヨガやピラティスのプログラム。運動はできないけどもともと身体は柔らかいし、これだったら嫌いじゃない。そう思ったのに、なぜかジムに行くまでの心理的ハードルが、自分にとっては非常に高かった。一回行ってしまえばきちんとやり終えるのだが、どうも私にとっては、「ジム」という場所に行くこと自体が、距離の問題ではなく、なかなか難儀なことだったようだ。
結局、ただ会費だけ払ってほとんど行くことのなかったジムを退会して、よくよく考えた。もともと苦手なものなのだ。どこまでもハードルを下げないと、仕事じゃないのに続くわけがない。だったら、何だったら苦にならないだろうか。
そこで思い出したのが、歩くことだ。考え事をしながら、あるいは、ラジオや音楽を聴きながら。周りの景色を眺めて緑の匂いを嗅ぎながら歩くのも良い。休日に買い物をしていても、目的地から目的地への移動でてくてくと歩くことをそれほど負担に感じることはない。
折しも、趣味でライブハウスに足を運ぶ時に汗をかいても良いように、と買った時計がたまたまスマートウォッチで、装着していると歩数をカウントしてくれることに気がついた。1日の目標歩数を設定しておくと、それをクリアした時に、時計のディスプレイの上で花火をあげてくれる。大人になると、なかなか褒められることもないので、小さな頑張りを花火で盛大に祝ってくれるのはなかなか嬉しいものである。
そんなことに気づいてから、紆余曲折を経た私の運動プログラム序章は、仕切り直して、ウォーキングから始まった。
朝が苦手なので、仕事が終わると、職場から自宅まで徒歩40分の距離を、歩いて帰れる日は徒歩で帰ることにした。電車を使った日は、帰りに大きめのスーパーに寄って色々と日用品を買っていると意外に歩いていることに気がついた。今日はあんまり歩かなかったな、という日は、自宅に帰ってからいつもよりも少し多めに屋内を歩きまわったりするようになった。そんな日を重ねると、左腕の小さな画面の中で花火が上がる日が多くなり、スマートウォッチで初期設定されていた目標歩数を、1日1万歩にアップしてみた。気づいたら、雨が降っている日と、予定がある日以外は、自然と歩いて帰るようになった。
次に、挫折してしまったジムの件を振り返ってみた。ヨガやピラティスなど、身体をほぐすことは、運動とカウントして良いのであれば、歩くことの次に嫌いじゃないものだ。であれば、ウォーキング方式で、ハードルを極限まで下げてみよう。5分でも、いや、3分でも良い。寝る前に歯を磨いてベッドに向かう途中で、少しでも良いからまずは継続してみようというチャレンジを現在進めている。
3分でも寝る前に身体を動かしただけで、まず自分を褒める。そんな日々を少しずつ重ねていくと、「今日は少し時間があるので1つだけヨガのポーズを増やしてみようかな」など、本当に少しずつではあるが、その幅が広がってきた。
このような、運動音痴の試行錯誤を経て、感じたことがある。
好きこそものの上手なれの言葉どおり、人間は、好きなものをもっと得意にしていくことがきっと最も効率が良い。私もその手段で、得意な領域をこれまで自分の強みとしてきた。
しかし人間、時には苦手に向き合わなければならないこともあるし、克服したい苦手もあるかもしれない。その時に探してみて欲しい、その「苦手」の中で、どこまでもハードルを下げられるところがないかどうか。そしてもう一つ、どうか忘れないで欲しい、どんなに小さなステップであっても、今日もひとつやり遂げた自分を盛大に褒めてあげることを。
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