餃子とビールでつくる丁寧な暮らし
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記事:堀紗章子(ライティング・ゼミ 日曜コース)
私の幸せ、1500円で買えた。
金曜日×食欲×餃子=幸福
一人中華屋でビール片手にフードファイト。
餃子2種とチャーハンとスープを食らい最高の気分。私の中の何かが満たされた。
この1週間、ダイエットという目的と、加えて部屋にゴキブリが大量発生したせいで家で料理する気もしっかり食事をとる気も失せた為、毎日スープやサラダチキンみたいなもので済ませていた。
胃の隙間は埋まっても何も満たされた心地はしない。
そもそも栄養があるのか怪しいほどのラインナップ。
シンプルに、ただ生きる為に食べていた。
そんな一週間を終えた金曜日、食欲に身を委ねて大好きな餃子を食べ尽くす。
一口一口があまりにも幸せで、久しぶりに食べ物を味わっている実感を得た。
有線から流れる流行りのJPOPもすんなり耳に入ってくる。
視界がワントーン明るさを増した気がした。
今ならいろんなことを許せそうだ。
お腹いっぱい食べるというのは人の心を本当に豊かにすると思う。
遅刻しそうな時の朝ごはんや、ダイエットだからとほんの数口で終わらせてしまう夕食。
それらでは得られない、食べる喜び。
餃子の肉汁を噛み締めながら、「あー、美味しいなあ」と思って食べる食事の素晴らしさ。
今自分が何を食べているかをしっかりと自覚して、そのありがたみを感じて、味わって、こんなにも食事とは幸せな時間だったのか。
実際、食事を楽しめる人ほど幸福度も高い傾向にあるらしい。
炭水化物は「セロトニン」という幸福感を高めるホルモンの分泌を促すと言われるし、食事をしっかりとって楽しむことができれば誰でも手軽に幸福度を高められるのだ。
忙しさにかまけて忘れることは色々あるけれど、食で得られる幸せを忘れたら損であることは間違いない。
社会人として忙しない日々を送っていると、どうしても自分の生活が疎かになることが多々ある。
そんな中、しっかり料理を作ったり、毎朝観葉植物に水をやったりして「丁寧な暮らし」を送る人々をみると尊敬の眼差しで見てしまう。
しかし、ビール片手にふと思った。
金曜日の餃子とビールもある意味「丁寧な暮らし」と言えるのではないか。
雑誌や動画配信サイトなどで大袈裟に「丁寧な暮らし」と掲げられてしまうと、色白で細身で無地のシャツが似合う黒髪の女性をイメージしてしまい、自分と比較してはギャップをしみじみ痛感し、他人事として受け止めてしまっていた。
しかし実は、色白でもなく普通体型で柄シャツを着ている私のような人間でも、知らず知らず「丁寧な暮らし」を実践しているのだと思う。
そもそも「丁寧な暮らし」と聞くとどうしてもミニマリストだとか、観葉植物だとか、そういったものが主軸となった生活スタイルをイメージしてしまい、その定義が何なのかというところに目を向けていなかった気がする。
今、自分なりに言うならば、「生活の些細なことで自分の幸福度を上げていく暮らし」と定義付けたい。
ミニマリストのように物を持たない暮らしも、観葉植物に囲まれる暮らしも、その人にとって幸福感を得られることだからそうしているのであって、逆にそこに何もメリットを感じない人が同じような生活スタイルを続けたとしても、「今、丁寧な暮らしをして幸福度が上がっています」とは言わないだろう。
例えば、趣味として毎日ジムに通って筋トレに励むサラリーマンも、好きでやっている限りその人にとっては幸福感を高める行為だ。
週末一人でキャンプへ行く人も、毎日寝る前に好きな漫画を読む人もそうだ。
大事なのは自分にとっての幸福度を上げようとする暮らし方かどうかと言う事だと思う。
人がそれを丁寧な暮らしだと言ったから行うのではなく、自分をどうご機嫌にするかを考えた末、自分なりの生活スタイルに少し幸福度を上げるエッセンスが盛り込まれるのが理想的だ。
だから、金曜日の夜、一週間働いた自分を労い好きな物を食べビールを飲む、そんな生活の一部も自分を幸せにする為の行為になっていれば、十分「丁寧な暮らし」になるのだろう。
普段の生活で疎かにしていた「食」と向き合い、何を食べるかで悩んだり、一つ一つ味わって食べる事で、気持ちを満たす。それは朝日を浴びながら観葉植物に水をやる事や、仕事終わりにジムでリフレッシュする事と同等である。
「自分なりの丁寧な暮らし」として考えれば、とても簡単にできる気がした。
私はモデルでもないし動画配信サイトでおしゃれなモーニングルーティーンを人に見せるわけでもない。そんな自分にとって、たくさんの植物で部屋を彩ったりあえて物を持たなかったりすることが幸福度を上げる生活スタイルかと言うとそうではない。
週末、好きな物を食べてお酒を飲んで、その時間を最高だと思えることが、私の幸福度を上げる。
これこそが私にとっての「丁寧な暮らし」だ。
これからも時々自分のご機嫌とりをして、日々の幸福度を上げていきたいと思う。
《終わり》
***
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