『ガイアの夜明け』最新がん治療で命を救う《READING LIFE EXTRA》
二人に一人ががんになると言われている今、決して他人ごとではありません。
実に多くの人の、未来を容赦なく奪ってきたがんですが、これは決して天災ではありません。
戦いようによっては、克服することができる。現に、初期のがんの5年生存率は90%を超えています。
問題は、進行してしまったがんですが、これに関しても、助かる可能性が、着実に高まってきているのです。
『がんワクチン治療革命』(講談社)の著者でもある、中村祐輔シカゴ大学医学部教授が研究する「ペプチドワクチン」もその可能性の一つであり、また、今回『ガイアの夜明け』で紹介された治療法も、人類が手にした武器の一つです。
特に京都大学の小野公二教授の取り組みがすばらしい。
京都大学にある原子炉を使って、ホウ素と放射線の中の中性子線で末期がんを狙い撃ちにする「BNCT(ホウ素中性子捕獲療法)」という方法を研究しています。
がん細胞に好んで集まりやすいホウ素をまずはホウ素化合物にして点滴し、それに原子炉から発生する中性子を照射してホウ素の核で核反応を起こし、ホウ素が集まったがん細胞だけを消滅させてしまうという方法です。
番組では最先端の医療機器、サイバーナイフも取り上げていました。
放射線であるX線でがん細胞を狙い撃ちで攻撃して消滅させるという医療機器です。
新百合ヶ丘総合病院には、サイバーナイフの進化形があります。
これまでのサイバーナイフは、呼吸器などの動く臓器には使いにくかったのですが、この最新型は、呼吸に合わせて追いかけてX線を照射させることができます。そうして、正確にがんを攻撃することができるようになったのです。
1台6億円の、この最新型のサーバーナイフは、国内で8台導入されているということです。
これまでは余命宣告をしなければならなかった状況でも、
「もう一度治り切ることを目標に頑張りましょう」
と、先生方が言えるようになってきたと言います。
また、名古屋大学医学部のウイルス学研究室では、「HF10」というヘルペス・ウイルスの一種を使って、がんを撃退する研究が進められています。
「HF10」は、がん細胞に好んで感染して、正常な細胞にはほとんど感染しないという性質を持っていると言います。つまり、がん細胞をピンポイントで狙い撃ちできるということです。
タカラバイオという会社がこの特許を取得しています。
アメリカで、すでに商品化に向けて動いていて、具体的には2018年度末の商品化を目指して開発を進めているということです。
この様に、先生たちの絶え間ない努力によって、医療は確実に進歩しています。少しずつではありますが、人類はがんを着実に克服しようとしているのかもしれません。平均寿命が伸びている背景には、こういった先生方の努力があることは、間違いないようです。