おばあちゃんの教え
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:守屋洋美(ライティング・ゼミ冬休み集中コース)
2020年冬、3年ぶりに実家で過ごす年末年始。
前回は、フランスにいた。その前は、エジプトにいた。
長い休みになると、どうしても放浪してしまう。
今年はコロナ禍でほとんど行けなかったが、行ったことのない国に行くのが好きだ。
お気に入りの国を再訪するのも好きだ。
体がいくつあっても足りない。
一体誰に似たんや?
両親は、新婚旅行も『沖縄』で父は海外赴任を断るほどの日本好き(というか家好き)。
母も初のパスポートを55歳で、しかも私に無理やり取らされたくらいのハコイリムスメ。
(ちなみにわたしも箱入りです、地球という名の。)
ほな、誰に似たんやろ?
皆に言われる人がいる。
今はもう亡くなってしまった、母方の祖母だ。
いつも呼んでいたように、親しみを以ておばあちゃんと呼ばせてもらいたい。
おばあちゃんとは、私が7歳の時から27歳で実家を出るまで、約20年間一緒に住んでいた。
お料理が好きで、踊りが好きで、家に人を招くのが好きな人だった。
おじいちゃんがなくなった後は解放されたかのようにさらに明るくなり(じいちゃん、ごめん。)、
世界中旅行に出かけていた。
やれオーストラリアやら、やれハワイやら。
似てると言われる分、喧嘩もいっぱいした。
私が反抗期の絶頂にいた中二の頃、立候補した生徒会副会長に落ちたことについて
ざまぁみろ!と溜飲が下がる思いやったと5年後に言われたくらいに私は生意気やったらしい。(どんな恨み買ったんや?)
そんな、いつもおもしろ明るかったおばあちゃんに初めて戦争の話を聞いたのは、幼稚園の時だった。
私はその夜、敵軍が飛行機で攻めてくる気がして、怖くてこわくてなかなか寝つけなかった。
平和な日本をぼんやり生きる6歳の心では受け止められなかった。
それから何度か、おばあちゃんに戦争の体験談を聞いた。
おばあちゃんは大阪の中でも都会に住んでいて、空襲を体験したこと。本当は防空壕に逃げるはずが逃げ
遅れて橋の下にいたせいで助かったこと。非難するはずだった防空壕は黒焦げになっており、友達の骨を拾ったこと。拾った骨を入れるものがなくて、お弁当箱に入れて帰ったこと。
助けてくれた橋は肥後橋らしく、何十年たった後も、その近くを通るのを嫌がっていた。
不二家の工場が空襲に遭った後は、みんなで工場に残っている原料を取りに行ったこと。(食うに困る当時のことです、ご容赦ください。。)米兵がくれた『チーズ』という食べ物を知らず、体に擦り付けては『なんやこの、泡立たへん石鹸は!』とぼやいていたこと。
みんなお腹を空かせていたこと。白いお米をお腹いっぱい食べるのが夢だったこと。
現代社会では玄米は体にいいと言われていても、戦争を思い出すから、絶対食べたくないといっていた。
思い出すのも辛かっただろうに、おばあちゃんは自分の体験をたくさん話してくれた。
亡くなる前は、ボランティアで小学校でも講演していた。
ニュースや記事でで戦争の体験談を見聞きするとき、今でも後悔していることを思い出す。
大学の卒業旅行で、東南アジアを友人とバックパックで放浪していた時のこと。
途中で降り立ったのが『ベトナム』だった。今から10年ちょっと前。
あまり下調べもせず、ゲリラ戦争跡地のクチトンネルに行ってツアーに参加した。
ガイドはベトナム人、言語は英語で、いろんな国の人が参加していた。
ガイドのお兄さんは色々教えてくれた。国民の平均年齢が27歳であること。(今はどうなんだろう)
地下で生活するにあたり、料理をしても煙が分散してでていくこと、昼間は畑を耕していたこと。
色んな説明をし終わった後で、ガイドのお兄さんはこう言った。
『今君たちが見て感じている以上に、本当に、ほんっとうに辛い経験だったんだ。。
だから、ぼくたち国民はみんな、早く忘れたいと思っている。
今は、生活をより良くしていくことを一番に考えている』と。
お兄さんの言うことは最もだと思った。
こんなにつらい体験、誰も覚えていたくない。そしてそれよりも、明日に向かって生きていきたいと。
だけど私はこうも思った。
『もし、誰もこのことを記録せず、忘れるよう努力し続けて時が経ってしまったらどうなるんだろう。』と。
『もしかしたら…過去の過ちを繰り返してしまうのではないか』と。
覚えておくのは辛い。
だけど、二度と繰り返さないために忘れてほしくない人もきっといっぱいいる。そういう人が声を上げたときは、しっかりと耳を傾けてほしい。うちのおばあちゃんがやってるように。
お兄さんにそう言いたかった。
そのツアーにご一緒していた、いろんな国の方々にも伝えたかった。
ただ当時の私は自分の英語にそこまで自信がなく、恥をかくのが嫌で
不満そうな顔でそのツアーを終えただけだった。
聞くは一時の恥、聞かぬは一緒の恥ということわざがあるけれど、
拙い英語で伝えるは一時の恥、思いを伝えられないのは一生の心残りだと思った。
悔しかった。伝えられないではなく、伝えなかった自分が。
あの日から、英語の勉強を欠かさないと共に、どんなに拙くても言葉で伝える努力をしている。
気付けば『誰とでも物怖じせず、じゃんじゃんコミュニケーション取る人』という八方美人化のレッテルを
貼られている気がせんでもないが、またひとつ、おばあちゃんに近づいた気がして嬉しいのである。
ただね、恋心だけは伝えられず、独り身のままだわ、ばあちゃん。
***
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