能天気で貧乏性の私がライティング・ゼミを受講しようと思ったのは事故みたいなものだったってこと
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:新田賢二(ライティング・ゼミ平日コース)
「あれ? ヤバい。これ、ヤバくね?」
まず第1講を見ながら、そう思った。
「え? プロも受講するようなレベルのゼミなの?」
こちらは、そんなつもりはなかったからだ。もちろん人に見せる文章を書く必要性を感じていたからこそ、このゼミに申し込んだのだけれども、はっきり言って思っていたのとは、全然違うものだったのだ。
それはいち早く投稿された他の受講生の記事を読んでも分かった。
「やべ。マジ、レベルが違うわ」文章をそれなりに書いてきた方々が、もっと上を目指すために申し込むようなゼミなのかもしれないのね。
しかし、今頃気づいても時すでに遅し。お金は全額カード払いしちゃってるわけだし、今更ノコノコ逃げ出すのももったいない。戦わずして逃げるなんて、そんなことはしたくない。「仕事が急に忙しくなっちゃって」みたいな体のいい言い訳をしてフェイドアウトなんて言う手もあるけど、如何せん貧乏性だから、既に支払ってしまったゼミ代がもったいなくて仕方ない。
昨年の秋、弟が末期癌だと宣告された。独身の弟はうちから10分の所に住んでいて、両親が亡くなってから後の10年間、つかず離れずの関係を続けてきた。男兄弟なんかそんなものかなと思いながら、互いに会いたい時だけ会うような関係だった。
そんな弟から久しぶりに電話があったのは9月半ばであった。ちょっと先月から調子が悪いので病院に付き合ってくれないか? とのこと。めったにそんなこと言いださない奴だから、余程体調悪いんだなと思い、その日は有給取って病院に付き添った。そして、その日病院で末期癌を宣告されてしまうのだ。
帰り道、互いに無口であった。何の話をしたのかも覚えていない。でも、「お兄ちゃんが付いているから心配すんな」そんな話をしたような記憶がある。何の保証もない、知識もない、能力もない、アホで能天気なお兄ちゃんはいつも賢い弟にはうざい存在だったに違いないのに、そんな時に気の利いたことも言えずに、やっぱり能天気らしい「お兄ちゃんに任せろ」的な子供みたいな発言に、自分が恥ずかしくなった。
その後の弟の容体は、日に日に悪くなっていく。先生も言っていたっけ。まだ若いから進行が早いよと。その進行のスピードに抗うように有給を取りまくって弟の為に時間とお金と力を尽くした。
その甲斐もなく、もういよいよだな、という時に、私はこの「天狼院ライティング・ゼミ」と出会う。知り合いがカフェ付きの書店でアルバイトを始めたという噂をちょっと前から聞いていて、いつか覗きに行こうと思っていた。休みという休みは弟の為に使っていたからなかなかそんな時間が取れなかったのだけれども、12月末の頃、たまたまポッカリ空いた休日があり、その日に天狼院へとランチをしに行ったのである。
そう、私は天狼院へランチをしに来ただけだったのである。
海沿いのお洒落な集合店舗の2階に、天狼院があった。最初、店前を通り過ぎて隣の店に入ってしまうほど、天狼院は想像していたよりかは、小さな小さな書店カフェであった。
「書店? にしては本少なくない?」それが私の一番最初に感じたこと。
店の入り口は書店のようだけれど、イメージ的に並べられてあるだけで、この店の“ウリ”は絶対何か他にあるはずだな、と斜めから見ているとランチが運ばれてきた。うまいうまいと食べた後、コーヒーをすすっているとそこで勤めている知り合いが近寄ってきてこう言った。
「本を買ってくれたら屋上のテラスに行けるんだけど。絶景だよ」と。何か欲しい本ない?気になるものとかある?と聞かれたので、こう答えた。
「今、仕事で求人広告専用のホームページを作る企画があって、応募者の心を掴むような文章を書きたいなぁって思ってるんだけど」
あぁ、それならいい本あるよ、と2、3冊の本を勧めてくれたので、中でも気になったものを1冊選び購入することに。
レジまで行き、お会計をしている時のこと、知り合いが「人の心を惹きつけるような文章を書きたいんだったら、今ちょうどいいタイミングで、いいゼミあるよ!」と言い出したのである。
紙ペラを見せられて、サラッと説明を受ける。隔週で計8回の講義を受けて、提出物をしっかり出せば、プロのライターになれる力を付けられる夢のようなゼミであった。いやいや、プロって、こちらはそんなレベルは目指していないし、はっきり言って、昔ブログを書いていた時期はあるけれど、文章なんてホント、小学生レベルなのだからせめて大人のレベルで書けるようになりたいなというだけだ。
「これ、私みたいな素人が参加していいレベルなの?」と聞くと、知り合いは「大丈夫。小学生から受講するようなゼミだから」と言った。それなら私でも大丈夫かな、と思いつつ、しかし、私はこの店にランチに来ただけなのだから、まず頭を冷やしてからにしようと、紙ペラをもって一旦店を出る。そのままその場で即決してしまうのを避けた。だって、たった8回の講義を受けるだけでプロのライターになれる(そんなことは言ってない?)なんて、そんな夢のような話に4万円を投資できるほど、貧乏性の私には勇気がなかったし、何より、自問自答する。
「お前、今そんなことしている暇あんの?」
そう、弟のことだった。
でも、もう私が弟のためにしてあげられることは何もなかったし、2021年は何か新しいことを始めたかったし、仕事で文章を書く必要に迫られていたし、もう何が何だか分らんけれど、ココで出会ったが吉日! ええい! 申し込んでしまおう! っと思い、すでに天狼院を出て10kmほど走っていた道をUターンして引き返し、天狼院に駆け戻り、「申し込みますっ!!!」とクレジットカードを差し出したのだ。
年が明けて、弟は天国へと旅立ち、私の生活に静けさが戻った。
そして、先週、ついにライティング・ゼミが始まったのだ。頭から煙が出ているのが分かった。で、気が付いた。
「あれ? ヤバい。これ、ヤバくね?」
第1講を見ながら、そう思ったのだ。
私は能天気だけど貧乏性。いつもなら下調べもせずに万を超える買い物はしない。だけど、天狼院のライティング・ゼミは違った。
たまたま行ったランチで、たまたま知ったゼミは、まるで事故みたいなものだったのに、何も考えずに、天狼院が何なのか、ライティング・ゼミというのが何なのかも一切ググりもせずに、勢いで申し込んでしまったのである。
でもね、本当の事故なら身も心も凹むが、なぜか今、ワクワクしている。この高揚感がズタボロになるのか? 最後まで高揚し続けるかも含めて、この事故を4ヶ月間楽しんでみようと思っている。
***
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