メディアグランプリ

モテない甘党男子のバレンタインマーケティング


大場さん 甘党

記事:大場理仁(ライティング・ゼミ)

 

今年もバレンタインがやってきた。

女子率の高い大学に通っていたとしても、春休みに突入しているため、その恩恵は受けられない。チョコはもらえないのだ。さほどモテない私がチョコをもらえる確率はこれによってなくなった。だけれども、そんなことは実際にはどうでもいいのだ。世の中のリア充のみなさま、勝手に盛り上がってください。大きく盛り上がれば盛り上がるほど甘党は嬉しいのです。飲食店が年末年始に一気に稼いでいくのと同じように、イベントの裏側にはおトクが満載なのだから。

バレンタインが盛り上がってくるとゴディバだとかのチョコの会社が続々とバレンタインチョコを用意し始める。今年はこれがオススメですよとお昼の情報番組も伝えてくる。まるでファッションの今年のトレンドでもあるかのように。そして、情報番組に出演する若い女の子が「かわいいー」と大変よくできたリアクションをして、男性も「これは嬉しいですね」なんていうコメントをしていく。

年末年始でお金を使い果たしたのをうっすらと頭の中に入れておきながら、このくらいの出費ならいいかと思える金額で買えるものがチョコレートというものだったのではないかと思えるほど、巧妙にバレンタイン戦略を企業が仕組んでいっている。

ちょこっと買っても1万円になることはないし、板チョコを買ってきて家で大量に作ったら相当な金額をセーブできる。買っている側としてはイベントに低予算で乗っかれるということはいいことだが、売る側としてはたくさんの人にお金を払ってもらえるから、それでごっそりと稼ぐことが十分にできるのだ。どちらにとっても嬉しい状態が作られている。

バレンタインが近づけば近づくほどに女の子たちが「今年はどうする?」と会話をしていくから、自分だけそれに乗っからないことがはばかれていって、買ってしまう。ファッションで今年の流行はこれですと言われて、自分だけそのアイテムを持っていないのが周りからオシャレじゃないと思われるのがイヤで高い買い物をしてしまうのと同じ心理なのかもしれない。

そうして、当日を迎えて、バレンタイン一色に街が染まる。チョコレート会社のマーケティング戦略に便乗して、あらゆる会社がバレンタインイベントを行う。飲食店もなぜかバレンタイン限定メニューがあるし、服屋ではバレンタインセールがあり、どこかのイベントに行けば、チョコプレゼントなんてのもやっている。どの業界も年末年始で使い果たしていて紐を強く締めている財布のお金を引っ張り出そうと躍起になっている。その結果として、びっくりするくらいの経済効果が出ている。

ただし、バレンタインが終わるとその熱はさっと冷めていく。

ここがモテない甘党男子の狙い目だ。ターゲットはバレンタイン限定で企業が作りまくって売れなかったチョコである。驚くほど安く買える。バレンタインの時でも、もちろんバレンタインセールで安かったのだが、さらに安くなっている。甘党にとってはチョコは常備食であり、いかに美味しいチョコをつかれた時に用意しておくかということは大きな問題なのである。それを満たすことができるのが、このバレンタイン後なのである。

洋服も7月と1月にセールをしていて、多くの人たちがここぞとばかりに買っているが、実は本当に安く買うには別の場所があるのだ。それは問屋とか卸しとかいう場所だ。人気のあるブランドでも売り切ることができなかった洋服というのは、そうした場所に集まっていってブランド側は赤字でもそこで現金化しておき、問屋はその服をブランド物の激安商品として販売するのだ。必ず流行りものにはこうした場所が存在している。それを狙えば、本当の意味で「最安」で買うことができるのだ。こうして、私のバレンタイン後の爆買いが今年も始まっていく。高級チョコを値段を気にせずに買うことができ、おいしく食べることができる。

これで一ヶ月くらいは満足な生活をすることができる。
やっぱり、イベントごとは当事者になるのではなく、一番得する場所にいるのが一番だと思う。だけれど、なぜだろうか……こういうチョコを買ってもどこか心が満足してないのは。モテないとはわかっているが、女の子からチョコをもらう男を見て、ちょっぴり心が沈む自分がいることに気づくとバレンタインの恐ろしさに驚いてしまう。来年は……来年こそは……チョコをくれる彼女を作りたいと心のどこかが大きな声で叫んでいる。

 

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2016-02-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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