ブライダル関係者のちょっと裏話
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
浅倉史歩(ライティング・ゼミ超通信コース)
ブライダルMCとして仕事をするようになって20年くらいになる。
「くらい」というのには訳があって、MCとしてデビューをしても最初の数年は、子供イベントや新製品のナレーターなどの仕事のほうが多くて、ブライダル現場はなかなか踏ませてもらえなかった。
春や秋の忙しいシーズンにちょこっともらえる程度で、年間通しても20本に満たない。
だからその辺りをキャリアに加えるのはどうなんだろうということから、MCデビューしてからは20年だが、ブライダルMCとしてのキャリアには「くらい」をつけるようにしている。
さてその私がこれから結婚式・披露宴を行うという人たちに、お伝えしたいことがある。
多分それは、関係者だけが知る「業界裏事情」。
挙式・披露宴を行うとなると、誰もが必ず某社の有名情報誌を購入する。
体験者の声が集められているサイトをはしごする。
それらを穴が開くほど読んで、自分たちの披露宴を計画していく。
そんな人たちに対して、
「日程を決めるとき、秋の大安はやめたほうがいいかもよ」
理由は、
「どの部署も時間との戦いだし、新人スタッフに担当される確率もほかの時期より高いんだよ」
なーんてこと、表立って書けるわけないじゃん(笑)
だからこそ、ちょっとでも参考にしていただけるとありがたいと思って記す。
まずはホテルの構成だが、チャペル、神殿などの挙式会場、親族写真などを撮影する写真室などは、基本的にホテルにおいて一か所である。
続いて「バンケット」と呼ばれる宴会を行う部屋、これはホテル内にいくつかある。
閑散期には土日でも空いているバンケットもあるが、これが秋の大安となると全部埋まり、
一部屋につき一日2回転することが普通だ。
よって一つのホテルが一日に請負うことができる披露宴の本数は、「バンケット数×2」がマックスとされる。
例えば5バンケット抱えるホテルとなると、一日10組の挙式・披露宴を行えるということだ。
さてここからなのだが、この10組の「式→写真室→披露宴」という流れを、時間をずらして10回行うということを想像してみてほしい。
チャペルや神殿は半々の割合としても、リハーサル、本番合わせて一組につき1時間は必要。次の両家をお迎えするまでに掃除も済ませておかなくてはならない。
写真室ともなると10組の両家が「次々」とやってくる。
つまり件数が多い日にはどの部署も「余裕」がないのだ。
本当は「指輪の交換だけでももう一度リハさせてあげたら……」と思っても、式は定刻でスタートさせなくてはならない。
親族撮影で親戚の子供がぐずってもご機嫌回復まで待っているわけにはいかない。
その両家は
「ちょっとくらい披露宴の開宴が遅れてもいいので、子供が泣き止むまで待ってください」
と言っても、
「いやそうじゃなくて、次の両家の撮影が控えているので」
という具合に、常に「次の両家」を意識して進めていかなくてはならない。
スタッフがいう「時間との戦い」というはこういうことである。
続いて、式・写真を済ませた後の披露宴である。
ここには、
・司会者
・音響スタッフ
・カメラマン
・ヘアメイク
・介添え
・サービススタッフ
などが必要である。
これらのスタッフは、司会者事務所、音響会社、映像会社という具合に外注先から派遣されてくることが多い。
それぞれにメインで動くメンバーというのがほぼ決まっていて、普段はその人たちだけで回している。
この固定メンバーで働くのは非常に心地よく、お互いのやり方を理解しているので、阿吽の呼吸で現場を回すことができる。それは仕事のクオリティにもつながることは間違いない。
ところが件数が多い日には、通常メンバーだけではカバーしきれない。
そう、新人がデビューしたりキャリアの浅いスタッフを使ったりというようなことになるのである。
もっともその子たちにとっては「使ってもらえるチャンス!」とも言うのだが(笑)
冒頭での「春や秋の忙しいシーズンにちょこっともらえる」というのは、こういうことなのだ。
これは司会者事務所のみならず、音響や映像の会社でも似たり寄ったりのことである。
新人ばかりが集まってしまったバンケットは……
はい、なかなかフレッシュでよろしい(笑)
さらに一番人数を必要とするサービススタッフだが、彼らはただお料理を運んでいるだけではない。
グラスが空になっていれば進んでオーダーを聞き、きょろきょろしているおっちゃんを見つけたら即座にビールの栓を抜き、お客さんがコップを倒したらおしぼりを持って駆け付け、さらには新郎新婦の入場の際、音楽のタイミングに合わせて扉を開けるなど、気配り目配りで大忙しなのだ。
このサービススタッフの派遣会社もシーズン前には大量募集をかけるので、現場では「今日初めてです」という若者に遭遇することも珍しくない。下手すればその日のサービススタッフの大半が新人で、バックヤードではピリピリしている責任者の怒号がとびかっているなんてザラである。
もちろんそれも、お客様に失礼のないように必死だからなのだが。
秋の大安ってだいたいどこのホテルもこんな感じ(笑)
ではホテルじゃなくゲストハウスやレストランとなるとどうだろう。
確かにサービスメンバーは固定しているし、一日一組しか受けないこところがほとんどなので安心できる部分は多い。
だからといって、外注スタッフも新人にあたらないとは思っちゃいけない。
なぜならば事務所は、主要メンバーから順に仕事を依頼するのが一般的だからだ。
発注が遅ければ遅いほど、新人に当たる確率が高いってわけ。
と長々書いたけれど、この辺りまでにしておこう。
暴露本っぽくなってしまったが、これでもかなりオブラートに包んだつもりである(笑)
が、ここにきて声を大にして言う。
どの会場でも、「件数が多いから、時間が押してるからクオリティ下がっても仕方ない」などという粗末な考えで仕事をしているスタッフは一人もいない。
私が知っている限り、どこの会場のどの部署にもいない。
そして新人が悪いわけでもない。誰にでも新人時代というのはあるし、新人だからこそ丁寧に慎重に、一つ一つ確認しながら一生懸命やっているというのも事実だ。
また事務所も、一定のレベルに達していなければ絶対デビューはさせない。
だから「秋の大安=仕事のクオリティ低い」なんて誤解はしないでほしい。
すでに「秋の大安」に決行した人たちは、「しまった!」なんて思わないでほしい。
ただ結婚式当日を余裕をもって過ごしたい、ホテルの中で他の新郎新婦とかち合いたくない、できればそこそこの経験者で行ってほしいというのであれば、秋の大安は外して考えてみてね、ということ。
さらに件数が少ない時期って、普段は無理なリクエスト聞いてもらえることあるし、「他いないから、この場所自由に使っていいよ」なんて思わぬサービスしてもらえることもある。
さらに女の子にとって最もつらい「いいなと思ったウェディングドレスは全部予約済だった」なんてリスクもうんと低くなるのだ!
結婚式・披露宴は誰にとっても一世一代の晴れの日、だからこそいろんなことにこだわりたいのが新郎新婦。
そのこだわりの中で、日程についてちょっとでも参考にしてくれたらうれしい。
***
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