ドSこそ大成するセキュリティの世界
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:村人F(ライティング・ゼミ 超通信コース)
「セキュリティ業界の人って、みんな攻めるのが大好きなんですよねー」
マジですか。
情報セキュリティの授業中に教授がそう言っていたが、なかなか衝撃を受けたことを覚えている。
セキュリティ業界は、守りのプロの世界である。
そのため、そこに興味を持つのはMっ気の強い人という先入観が少なからずあったのだ。
それなのにドSが多いというのである。
このギャップもあって、やたらと印象に残っている。
しかし、これを受けて考えてみると、たしかにセキュリティに向いている人は攻め好きのように思える。
実際に守る立場になるとイメージがしやすい。
例えば、美術館にある100億円のダイヤを守っているとしよう。
そのときに守る手段を考えるのが、意外と大変なのである。
なんせ相手がどのように盗みに来るかわからないのだ。
そのため、どこから手を付ければいいか頭を抱えることになるであろう。
だが逆に、ダイヤを盗む方法を考えてと言われたどうなるか。
案外、ポンポンやり方の思いつく人が多いのではないか。
ガラスのケースの中にあったら、ハンマーでぶち壊そう。
でも警備員が周りにいるだろうから、警報機かニセの予告状で目線を逸らそう。
なんなら警備員になりすまして、偽物とすり替えてやろう。
こんな具合に盗む手段はスムーズに出てくるわけだ。
そして、ここが出れば守る手段も一緒に生まれている。
なぜなら、攻め手をやらせなければいいからである。
ハンマーで叩くことを思いついたら、ロケットランチャーでもビクともしないケースに入れればいい、という具合にだ。
そうなると、守る専門のセキュリティ業界には、攻めるの大好きなドS人間のほうが向いているわけだ。
攻める手段を出して貰えば、後はそれを防ぐだけで守れるからである。
「攻撃は最大の防御」という古くからある言葉は、きっとこれを表しているんだろう。
こういう発見もあり、冒頭の教授の言葉はIT系について学んだ大学生活の中で、1番の名言になった。
今でも思い出しニヤニヤ感心することがある。
そして、これを知っているから「なんだかなー」と思うこともある。
オレオレ詐欺のような、ご老人をターゲットにした詐欺の対策広告である。
あの資料を見てみると、ほとんどが「ATMを操作しながら電話するのはやめましょう」のように、やらないほうがいいことを言うだけになっている。
これがセキュリティ的な発想に立つと危ないんじゃないかと思うのである。
なぜなら、騙す側が注意されている手法で襲ってくるわけがないからだ。
これも自分が詐欺をやるつもりで考えれば容易に想像できることである。
このご時世に「オレだよ! オレ!」って息子の名前を聞き出す古典的なやり方が通用するわけないと、すぐに思い至るはずだ。
そのため手段もATMで振り込ませるのではなく、もう1人スタッフを雇ってその人に渡してもらうような形にするという具合に、ちょっとヒネったほうがいいと気付くわけである。
となると、一般的な詐欺対策で使われている「〇〇はしないようにしましょう」という構文は、むしろ逆効果なんじゃないかと思うのだ。
これによって「〇〇をしなければ大丈夫」と勘違いをしてしまうからである。
詐欺に注意して欲しい人を想像してもらいたい。
言われたことを素直に受け止め、100%信じてしまう人になるのではないか。
だから、それ以外の手法で攻められたときに、簡単に騙されてしまうように思うのである。
だから注意喚起をするときに伝えなければいけないのは、「あなたは、あなたをどのように騙しますか?」ということだと考えている。
攻める立場になって考えてみれば、お金を振り込ませる方法がポンポン思いつくわけである。
これによって、「防ぐためには相手の話を注意深く聞かなければいけないな」、「振り込む前に警察に相談したほうがよさそうだ」という風に、守る手段も同時にわかるのである。
そのためCMでも、この論法を使ったほうがいいんじゃないかと思っている。
情報セキュリティの授業で聞いた「セキュリティのプロはドSが多い」という話だったが、色々な方面で応用できる考え方だと感じた。
普通だとウィルス対策や迷惑メールみたいな、コンピュータ絡みでしか使えない技術のように思うかもしれない。
しかし、そのキモがどこにあるのかを考えると、多くの分野で使える武器になるわけだ。
それに気付けただけでも、有意義な大学生活を過ごせたと自信を持って言える。
皆さまも授業中に聞いた印象に残っている言葉はあるだろうか。
それが専門的な話だったら、ぜひ関係ない分野に例えて考えてみていただきたい。
これがポンポン思いつけば、その真の意味を理解できるはずだ。
そして、やってきた分野をもっと好きになること間違いなしである。
***
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