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【募集】「読み人」なんて、ずっと来なければいいのに。《大学生限定・『月刊天狼院書店』編集部員募集》


読み部

 

天狼院書店スタッフ川代です。

「だってさー、おかしいじゃん。なんで戻ってきたの? 二人ともちゃんとした会社入ってたのにさ」

朝10時の天狼院オープン前、スタッフだけで行われた戦略会議のとき、三浦さんが私と石坂くんを指差してそう言った。

「え、いやあ、その」

思わず、横にいた石坂くんと顔を見合わせる。彼はニヤリと笑って私の方を見ていて、ああきっと同じ事を考えているんだろうなと直感でわかった。

「いやー、やっぱりMだからだよね。ここに残ってるメンバーみんな」

そう言って、三浦さんも、同じ顔をしてニヤリと笑う。

「結局Mが一番強いんだよ、痛みを喜びに変えられるっていうのは」

いや、正真正銘のどMのあなたに言われると説得力ものすごいんですけど、あたしは別にあなたほどMじゃないんですけど、ただ痛みを乗り越えた先の達成感が好きなだけなんですけど、と心の中でつぶやきながらも、なるほど、私はMなのかもしれないと、納得した。
けれど、Mだから、という理由だけで納得していいのかというと、それも違う気がする。

戦略会議が終わった後も、しばらくずっと、三浦さんの言葉が耳の奥でこだましていた。

なんで戻ってきたの?

そう改めて、店主であるあなたに聞かれても、困る。
ライターになりたいからとか、書くことを仕事にしたいとか、天狼院にいる人が好きとか、それらしい理由を口で説明しようとすれば、まあそれなりに思いつくのだけれど、なんというか、それだけじゃなくて、やっぱり一番強いのは、衝動だった。

うまく言葉じゃ表現できないような、何か、もやもやとした、けれどものすごく強い、衝動。
こうした方がいい人生になるとか、安定しているとか、楽しいとか、お金がもらえるとか、そういうありとあらゆる理屈を百個並べられたとしても、どんなにすごい交渉術を持っているビジネスマンや弁護士に説得されたとしても、きっと揺るがないであろう、衝動だ。

この衝動さえなければきっと、私は天狼院への道を選んでいなかった。もともと私は臆病で、周りの目を気にしてしまって、何が何でも不幸せな人生を送りたくないというタイプの人間なのだ。そうだ、そもそも大学生の頃に天狼院に出会っていなければ、こんな厄介な感情を、欲求を、衝動を、覚えることなんかなかったのに。

なんなんだろうね、このわけわかんないやつ、と石坂くんに聞くと、「あれだよね、アドレナリンだよね。この興奮一回味わうともうダメだよね」とさっきよりもっとニヤニヤした顔で言った。

やだもう結局石坂くんもMじゃん、きもーいと、わざとらしく引いてみせたけれど、内心では、彼の気持ちがよくわかった。

おそらく天狼院は、私の人生の命運を分けた。

天狼院に出会っていなかったら、こんなに苦しまずに済んだ。
天狼院に出会っていなかったら、こんなに必死にならなくて済んだ。
天狼院に出会っていなかったら、毎回毎回周りのスタッフが活躍するたびに、焦ったりせずに済んだ。
天狼院に出会っていなかったら、みんなに置いて行かれないように集中して本を読まなくて済んだ。
天狼院に出会っていなかったら、こんなにがむしゃらに文章を書かなくて済んだ。
天狼院に出会っていなかったら、こんなに自分の感情と、向き合わなくても済んだ。

天狼院に出会っていなかったら……本を読むことがこんなに面白いのだと、書くことがこんなに面白いのだと、生きることがこんなに面白いのだと、知らずに、済んだ。

そうだ、こんなに面白い世界を知ってしまったから、私はもう後戻りができなくなった。
どうしてくれるんだ。もう怒ったよ、三浦さん。
あたし、こんなに負けず嫌いな人間じゃなかったはずなのに。

そうだ、みんなそうだ。
一度も外に出ずに天狼院の店長をやっているなっちゃんだって、
就職する道も選べたのに、結局は天狼院に残った海鈴だって、
大企業で働いていたまむさんだって、
ものすごい才能あるデザイナーの長澤さんだって、
ちゃんと会社で楽しく働いていた、石坂くんや、私だって。

みんな、Mだから残ってるってのもあるけど、それだけじゃない。
死ぬほど、本当に死ぬほど、負けず嫌いだから天狼院にいる。

まるでワンピースの麦わら海賊団みたいに、荒くれ者ばかりのグランドラインで、必死になって、いつも死ぬ気でボロボロになってでもラスボスと戦いに行くルフィについていく船員みたいに。
お互いに、一番強いのは俺だと主張しながらも、ルフィを守りたい気持ちは同じ。

そんな感じで、天狼院にいるような気がする。

友情、努力、勝利で大いなる夢を掴みとろうとしている、どこの少年ジャンプだよとつっこみたくなるような、そういう熱い気持ちの人が、天狼院には集まる。今いる学生インターンの子たちだって、そう。きっとこれからもそんな風に今にも沸騰しそうな野心をふつふつと燃やしている人が集まるのだろう。

ぶっちゃけ、本当にぶっちゃけて言うが、私はこれ以上新しい船員なんぞ増えなければいいと思っている。
「読み部」なんて本を読んでお金がもらえる「夢の部活」なんてのもできて、それでますますライバルが増えたらどうするんだ、と思っている。
私が大学三年の頃は、ライティングゼミもなくて、まだABCユニットもスタッフだけに教えてくれる秘伝で、書けば書くだけ目立つことができた。
でも今は、ライティングゼミのお客様にも上手い人や才能ある人がめちゃくちゃ増えてきているし、スタッフのライティングレベルもどんどん上がっているし、日に日にライバルが増えて行く。それも、ものすごいスピードで。
どんどん、自分の居場所が少なくなっていく。あんなに広々と寝っ転がっていられるくらいスペースがあったのに、今じゃ、片足でないと立てないくらいに、私の居場所が狭くなっていく。

「メディアグランプリ優勝するぜー!」なんて気合い入れて余裕かましちゃいるが、内心では怖くて怖くて仕方ないのだ。

すでに東京、福岡、今作っている京都も合わせて、どんどんスタッフが増えている。それに伴い、お客様も増えている。
天狼院が大きくなる。
いろんな人に天狼院のことを知ってもらえる。

その事実が嬉しいことは間違いないのに、本気で心の底から天狼院の可能性が広がればいいと思っているのに、なのに、隅っこの方のどこかでは、もうこれ以上優秀で才能のあるやつなんか来なけりゃいいと願っている。

ほら、どれだけ負けず嫌いなんだ、私は。
あーあ、天狼院にうっかり来なけりゃ、こんな意地汚い気持ちも、こんなに負けず嫌いな自分とも、出会うことなんかなかったのに。

なんて、そんなことを言っていてもまあ、仕方がない。
そういう気持ちの悪い自分と折り合いをつけながら、新しく来る仲間を、受け入れていくしかないんだ。

本を読んで、そして書いて、自分の考えをまとめて、自分の感情と向き合う。

本を読んでその感想を書くというのは、そういうことだ。
人が自分の血肉を削って、魂を込めて書いた本は、いわば人の「狂」の塊だ。本という紙の媒体を通してその「狂」を自分の中に染み込ませて、そして自分の中から溢れる「狂」とお腹のなかでぐちゃぐちゃにかき混ぜて新しい「狂」を生み出す。
だから、書くというのはそれほど高尚なものなんかじゃなくて、人から自分のところへ送られてきた「狂」が、うまくまた次の人へと流れ込みやすくするための表現方法に過ぎないのかもしれない。

三浦さんが「リーディング・ハイ」で、この夢の部活でやりたいことは、もしかしたら、そういうことなのかもしれないと思った。

人の「狂」に、言葉通り狂わされた人々は、頭がおかしくなったみたいに次の人へと送り出そうとする。そうすることがまるで使命みたいに、つなげてつなげて、なるべく多くの人へと広がるように。こういう言い方をするとまるで伝染病か何かみたいだけれど。

ぜひ、味わってほしい。
本を通して送られてきた「狂」を、自分の「狂」と一緒に次の人へ送り出して、そして、どんどん「狂」が伝染していく様を、自分で体感してほしい。

さっきから言っているように、ぶっちゃけてしまえば、自分のライバルがこれ以上増えるのは嫌で嫌で仕方がないけれど。
でも三浦さんの策略に乗せられているようで悔しいのだけれど、もっとぶっちゃけて言えば、これから「読み人」がたくさん集まることで、どんな形の、どんな量の、どんな色の「狂」が生まれるのかが、嫌である以上に、楽しみで仕方がないのだ。

そしてその「狂」に迎え撃つべく、私は自分の中の怨念を、もっともっと煮えたぎらせておこうと、こうしてまるで宣戦布告のような、告知文を書いている。

もしかすると、自分のこの手で、化け物みたいな読み手を、書き手を生んでしまうかもしれないという焦りや恐怖を抱きながらも、やっぱりどこかで、わくわくもしているのだ。

そう言ったら、なんだ、やっぱりお前はMじゃないかと、にやりとするであろう三浦さんの顔が思い浮かんで、私もにやりとした。

さて、この記事を読んでいる、若いドM予備軍のみなさん。

一緒ににやにやしましょう。「狂」を煮えたぎらせましょう。

「面白くて面白くてたまらない」という感覚を、ぜひ、味わってほしい。

ご応募、お待ちしております。

 

 

《以下詳細・「読み人」募集要項》

天狼院書店店主の三浦でございます。

発端は、およそ二年前のことでした。

「本を読んで、お金をもらえる仕事があったらいいよね?」

ふと、あるアイデアが頭に浮かび、スタッフにこう言っていました。

生まれて、これまで、本にどれくらい投資してきたかわかりません。
かなりの額が費やされたろうと思います。

もし、本を読んで、たとえば、その本の代金分だけでもお金がもらえるという「夢の仕事」があったら、どうでしょう。

僕だったら、間違いなく入ります。

そんな「夢の仕事」を作ることができないかと、この二年間、事ある毎に考えてきました。
また、様々な方法論を考えました。

昨年末より、その動きが本格的になり、いよいよ、組織としてそれを立ち上げることに決めました。
その「夢の部活」こそが、

「月刊天狼院書店」編集部、通称「読み部」です。

いうなれば、

「本好きの、本好きによる、本好きのための部活」。

天狼院の定義としては、単に本を「読む(リーディング)」だけでは、読書はまだ不完全なんですね。
読んだ後に「書く(ライティング)」ことによって、はじめて読書が完結すると考えます。

まるで「タンポポの種」のように、読んでふわふわと頭の表層を浮遊しているものを、書くことによって地面に定着させる。

そうすることによって、はじめて、種は根づき、やがて実がなると思うんです。

そんな本質的な読書を、楽しみながらやるのが、「月刊天狼院書店」編集部、通称「読み部」です。

今回、そこで本を読むためのスタッフ「読み人(よみびと)」を、大募集することにいたしました。
大学生限定とさせていただきます。

やっていただくのは、天狼院の定義する「読書」です。
つまり、読んで、書いてもらいます。

それで、書いた記事が優れていると天狼院が判断した場合、Web天狼院書店の、今用意している新しいメディアに掲載し、その掲載料として、読んだ本の金額(1記事上限2,000円)を支給いたします。

「え? 本を読むのは好きだけど、書けるかな?」

とお思いの皆様、心・配・御・無・用でございます。

読んで書くための「リーディング・ハイ」ライティング講座(通常1回¥5,000)を用意しております。
スタッフ「読み人」の皆様には、これを無料で受講していただけます。

さらに、毎週日曜日朝に開催している天狼院の大人気読書会「ファナティック読書会」(通常1回¥1,000+1オーダー)にも、無料で参加できます。

さらにさらには、本屋をまるごと編集してしまう、おそらく世界の書店史上初めての試み「月刊天狼院書店」編集部に、編集者として参加できます。なんと、その参加費も無料です。

好きな本を読み、
それがWeb天狼院書店というメディアに掲載され、
プロに文章の書き方も教わることができ、
お客様と大好きな本について「熱狂的(ファナティック)」に語り合うファナティック読書会に参加でき、
さらには、今人気の書店の「編集」にも携わることができる。
しかも、掲載された分の本の代金が支払われる。

どうでしょう、これが天狼院が提示する「夢の部活」です。
僕の悲願です。

おそらく、応募が殺到すると思いますので、エントリー方式にしたいと思います。
お早めにご応募ください。

Web天狼院書店の「お問い合せ」フォームからご応募ください。

こちらから→ お問い合せフォーム

「題名」の欄には「読み人募集への応募」と記入ください。
「メッセージ本文」には、以下の項目を記入ください。

①履歴書に相当する記述
②応募動機
③課題文「自分が最も好きな本を一人でも多くの人に読んでもらうための文章(2,000字程度)」

選考後、一次審査を通過した方にのみ、担当者より、説明会への招待メールをお送りします。
その後、店主の面接を経て、正式に参加となります。

それでは、一人でも多くの、優れた「読み人」の皆様のご応募、お待ちしております。
お友達もお誘い合わせの上、ぜひ、チャンレジしてみてください。

どうぞよろしくお願いします。

【要項】
条件:大学生(大学院生)
読む時間帯場所:好きなときに、いつでも、どこででも
書く時間帯場所:好きなときに、いつでも、どこででも
ファナティック読書会:毎週日曜日朝9:00
「月刊天狼院書店」編集部:第1・3日曜日11:30〜13:30
*「ファナティック読書会」や「月刊天狼院書店」編集部が開催される毎週日曜日午前中〜昼の時間帯を空けられる方を優先します。
募集地域:東京天狼院(池袋)/福岡天狼院(福岡天神)に通える距離
*本部活のメンバーは、天狼院の正式なアルバイトスタッフが募集される場合、選考にて優遇されます。
*正式なスタッフではないので、対象となるイベント以外の天狼院のイベントには、無料で参加することはできません。

【天狼院書店へのお問い合わせ】

TEL:03-6914-3618

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2016-04-04 | Posted in 募集

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