食べるシャワー
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:西片 あさひ(ライティング・ゼミ超通信コース)
仕事、プライベート、人間関係、何かと悩ましいことが多い昨今。
心も身体も癒やされたい。
前に進む活力がほしい。
そんな風に思う人も多いだろう。
そんな時、皆さんはどんなことをするだろうか。
猫カフェに行く、マッサージをしてもらう、温泉に入る。
様々な選択肢があると思う。
しかし、私がするのはそのどれでもない。
きっかけは、たしか2年前の春だった。
当時、職場の人間関係でとても疲れていた私。とにかく癒やしを求めていた。
温泉に行ったり、マッサージ店に行ってみるなど、いろいろ試してみた。
たしかに、行った直後はすごく癒やされたが、それも長くは続かなかった。
次の日には効果が切れてしまうのだ。
それ以外の方法も試してみたが、どうも疲れが取れなかった。
そんな姿を見た職場の同期が、私にある提案をしてきた。
「最近、スパイスカレー屋さんが職場の近くにできたから行ってみれば?」
スパイスカレー。
私がその料理の名前を聞いたのはこの時が初めてだった。
なんでも、同期の話によると、ニンジンやじゃがいもが入った、いわゆる給食に出てくるようなカレーとは違うものらしい。
「なんだか、よく分からないな」
それが正直な感想だった。
しかし、その同期は入社した頃からよくつるんでいたし、お互いに悩みを相談し合う間柄。
そんな彼からの提案を断る気になれなかった私は、そのお店に行ってみることにした。
そして、数日後。
私はその店の前に立っていた。
立地は、駅からも歓楽街からも離れた場所。
古い民家を改装したような店構え。
お世辞にも、入りやすいお店ではなかった。
しかし、入り口のそばにあった換気扇から立ちこめてくるおいしそうな香りが、私を店の中へと誘った。
奥に向かって細長い店内には厨房、等間隔に並んだカウンター席が4つ。
まるでウナギの寝床のような場所。
普段見慣れない光景だけに、とても不思議だった。
しかし、それより驚いたのは注文したチキンカレーだった。
ぱっとした見た感じは、これまで食べてきたカレーと同じ。
しかし、何かが違った。
まず、具材。
今までカレーの具材というと、にんじん、ジャガイモ、タマネギ、そして肉、と私の中では相場が決まっていた。
なのに、今回食べたカレーにはそれらがほとんど入っていない。
入っているのは、チキンのみだった。
そして、何より特徴的なのは香り。
カレーというと辛みだけかと思っていたが、このカレーは違った。
種類の違う様々な甘み、苦みを辛さと同時に感じたのだ。
後から、店の方に聞いた話だと何種類ものスパイスを使っているかららしい。
「なんじゃこりゃ?!」
思わず、そう口走りそうになってしまうくらい衝撃的な味だった。
同期の言っていたことがやっと分かった。
たしかに、これはカレーであって、カレーじゃない。
しかし、なぜだか嫌な感じはしなかった。
むしろ、スプーンがもう止まらないこと、止まらないこと。
気付いたら、目の前の皿はきれいになっていた。
初めて食べた料理を一気に平らげてしまったのだ。
そして、食後に残ったのは、「爽快感」と「また食べたい」という感情。
私はスパイスカレーの虜になってしまったのだ。
不思議だった。
自分自身、なぜこんなにもスパイスカレーにはまってしまったのか。
その日、家に帰ってから妻にその事を話してみると、こんな言葉が返ってきた。
「聞いていると、まるでシャワーを浴びた後の感じと似ているよね」
その言葉にはっとした。
べたついた感情を流してくれるようなスパイスの香り。
身体の中からぽかぽかする、味わい。
食べた後の半端ない「爽快感」。
私にとって、スパイスカレーは食べるシャワーだ。
それからと言うもの、私はスパイスカレーに目がなくなった。
時間を見つけては、SNSや雑誌でスパイスカレーのお店を探して、食べ歩くのが日常になった。
どのお店も、それぞれに特徴があった。
ドリンクに力を入れているお店。
少量多種類のスパイスカレーが食べられるお店。
スパイスカレーと一緒に食べる付け合わせが充実しているお店。
しかし、共通して言えるのはスパイスカレーの魅力には抗えないということだ。
食べるシャワーを浴びたくて、定期的にスパイスカレーを食べないと気が済まなくなっている。
もしかして、スパイスには中毒性があるんじゃないかとすら思ってしまう。
初めてスパイスカレーを食べてから、2年が経った。
相変わらず、仕事でもプライベートでも大変なことはたくさんある。
しかし、私にはスパイスカレーという食べるシャワーがある。
定期的に食べるシャワーを浴びれば、目が覚める。
心がすっきりする。
だから、きっと前に進めるだろう。
そう思えてならないのだ。
***
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
お問い合わせ
■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム
■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。
■天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)
■天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
■天狼院書店「京都天狼院」
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00
■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」
〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168
■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」
〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325