メディアグランプリ

0.3の世界 


記事:谷合美香(ライティング・ゼミ)

*この文章は、「天狼院ライティング・ゼミ」の受講生が投稿したものです。
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幼稚園のころ、視力は0.3であった。
愛用しているシャープペンシルは0.3mm芯の製図用である。
ボールペンも0.3mm。
書いている文字まで0.3mmだったら米粒写経ができるかもしれない。
密かに挑戦を試みたいジャンルである。

覚えたいことは、ブルーのインクで、ノートにぎっしり文字を詰め込むと良いとの噂がある。
学生時代にテスト前対策などで公式を覚えるのに使用していたら、効果のリポートもできたかもしれない。

実践していないので、記憶に関する効果のほどは断言できないが、その昔、日記で余白がもったいなくてみっしりと書いたことがある。
大ぶりな字で、あまり米粒ではなかったが、妙に集中してガリガリ書けた気がする。
そして気づけば半日でペン1本使い果たす始末。

インクが出なくなって、はっと我にかえる。
次は手が握りしめている軸の付け根を視野に入れながら書き進めていく。
親指の付け根から飛び出していた軸の中のインクが、いつの間にか手の中に埋まり、中指にできたペンだこに並び、また終焉を迎える。

こうしてブルーのインクが軸の中でみるみる減っていくのは爽快感があり、ノートに余白なく文字だけが連なって青くなっているのは、壮観である。

そんなに集中して取り組めることというのは、限られている。
私にはそれが学生当時、日記であった。
不思議と、取るに足らない日常であっても、それなりに出来事はあるし、切り取っておきたい出来事にも恵まれていると知る。
読めばそれらが昨日のことのように思い起こされて、懐かしさが込み上げたり。
自分のことだから覚えているというものかもしれないが、案外、ブルーインク集中法の効果がこんなところで出ているのでは、との可能性も捨てられない。

人によって、ブルーインクは生活の糧としての文筆に費やされるだろうし、デッサンの一発描きに使用されるかもしれない。楽譜やコードチェックに使う人だっているかも。
このうち、趣味の文芸とデッサン・イラスト一発描きになら、自分も使っている。

しかし記憶効果に対して実践してみるのは、今からでも遅くない。
私が学びたい最後の砦、英語学習に活かすのだ。

日曜の夜、時差の関係で「Morning!」の第一声で始まる海外のラジオを毎週楽しみに聞いている。学習のつもりはなく、ただ選曲とDJの軽妙なトークが気に入っている。
趣味の域を出ないものだが、最近になって、もっとスラスラとDJトークが楽しめたらと思うようになった。

ザックリと分かる、人に概要をかいつまんで説明ができる、では何か物足りない。
また、そのDJの英語しかきれいに聞き取れないのもさみしい。
いろんなクセや訛りがあっても、すらりと理解できて、通訳ができたらと思うのだ。

今の時点では、聴いているだけ、書いているだけの、声のない修行。
発音ができなくて英語が話せない。気分は声を失った人魚姫である。

唯一の発声は、選曲されている歌の数々を、一緒になってシャウトするくらいだろうか。
自宅で一人、音なんか外してもいいやと歌にくっついて声を出す。

これはこれで楽しい。だが歌以外でもちゃんと声に出して発音できる言葉がほしい。
つまり欲が深くなっている。

例えば植木等の歌が好きだ。
歌を理解し、受け入れる人が、世界に広まればいいと思う。
そのためには青島幸男の作詞を英訳しなければならないし、仏語訳もできないといけないかもしれない。
道は険しそうだが、英語ができたら、願いが叶う手掛かりになる。

このくらいのことはとっくにしている人がいて、私の知らないところで成功しているのかもしれない。

いいや。「誰か」の仕事でなく、「私が」やってみたいのだ。
直訳でもいい。ネイティブが聞いたら噴飯ものかもしれない。そんな程度でも英語が書けたら。きっと自信になる。

一縷の望みをかけて、ノックしたい扉がある。
それは木製の枠にガラスのはまった、少し重い扉。
言わずと知れた、天狼院書店の扉である。

ここで英語のゼミが四月から始まる。

天狼院英語学習コーチング・ゼミ

だ。

講師の方の掲げるテーマ、
「いつでも、どこでも、好きなことで英語を使って世界を広げる!」
に、心ときめくものがあった。

じゃあ、植木等でもいいのね?
アメリカのラジオがもっと楽しくなるといいなでもいいのね?

もしかしたら手書きするなんて古典的なことは勧められないかもしれない。
そんな大変な苦行しなくても、大人には大人の覚え方があるかもしれない。
若い時とは違う勉強法でなければ、能率の面でも時間の面でも採算が取れないかもしれない。

それでも、私は手書きをするだろう。
手で書くアクションなしには覚えられない記憶法が身についているから、おそらく機械仕掛けにしてしまったら記憶できないからだ。
そしてまた、私は日記を書くのだろう。今度は、日本語と英語で。

今日も私は書いて(描いて)いる。
5mm方眼に0.3mmのブルーボールペンで日記を書き、0.3mmのシャープペンシルで、消しゴムに頼らないデッサンやイラストを。
シコシコと、コツコツと。

***

*この文章は、「天狼院ライティング・ゼミ」の受講生が投稿したものです。

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*この作品は、天狼院メディア・グランプリ参加作品です。
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2016-04-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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