大学受験は縁なのではないかと思う
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:白い紙(ライティングゼミ・夏期集中コース)
「あっすいません、あの……東口ってどこですか?」
高3の2月、私は渋谷駅の井の頭線改札口で駅員さんに声をかけた。予想に反して説明しづらそうな駅員さんの顔をみて一気に不安になった。
「えーっとですね、向こうの方なんですけどね、JRの方まで歩いていただいて……。こっちの階段を……」
今なら分かる。渋谷駅の東口は井の頭線からはそこそこ離れたJR側の方にあるため、説明しにくいのも当然である。しかし、渋谷に数回しか来たことのない当時の私には、そのことが分からなかった。
駅員さんに言われた通りに歩いてはみたものの、結局迷子になった。スマホで経路検索をしても、いまいちよく分からない。私は徐々に焦ってきた。なぜなら、この日は大学受験当日であったからである。
大学の案内を見ても、やっぱり「渋谷駅東口」と書かれている。駅の出口なんて、誰でも分かりやすい場所にあると思っていたのに。これが都会なのか。
どこを歩いているかも分からずさまよっていると、タクシー乗り場を発見した。これを使うしかない。とっさに思いついたタクシーを使うという判断のおかげで、試験開始時間には間に合った。でも迷子になったことで動揺していたことから、どうやって問題を解いたか覚えていない。「落ちたわ」と確信した。
しかし、私はなぜかこの日の試験に合格し、入学することになる。
正直な話、私は現在通っている大学のことは受験直前まで知らなかった。模試の志望校判定欄にも1回も書いたことがない。志望校判定欄に書いていた大学には1つも受からなかった。
少し私の高校時代の話をさせてほしい。
私は高校時代、県内のいわゆる進学校と呼ばれる高校に通っていた。高校1、2年生は、優しくてユーモアのある友人に恵まれ、充実した日々を送っていた。
雲行きがあやしくなったのは、高校3の春になって、周りが受験を意識し出したころである。みんないわゆる難関校だとか有名大だとか呼ばれている大学を目指して勉強していた。私もその一人であった。
正直なところ、私は1、2年生の段階であまり真面目に勉強してこなかった。そのため、遅れを取り戻そうと自分なりに必死に勉強した。朝7時頃に学校に行って勉強し、10分休みには単語帳を広げてページをめくりまくり、放課後は塾の自習室に通ってとにかく勉強しようと心がけた。
しかし、全然偏差値が上がらない。このままではやばいと思って自分をさらに追い込み、他の人より勉強時間を増やすことで、周りとの差を埋めようとした。
でも偏差値が上がらない。しかも、なぜか勉強に集中できない。内容が頭に入らない。
受験になると、周りの大人達は色々言ってくる。
「今努力できないやつは一生努力できない」
「偏差値の低い大学に入ってしまうと、就職するときに学歴フィルターにひっかかるよ」「去年の先輩達はもっと勉強していたよ」
「今勉強するかしないかが、今後の人生を決めるんだ」
「今頑張れないと一生後悔することになるよ」
その言葉を聞いてさらに自分を奮い立たせた。
でもダメだった。プレッシャーだけが大きくなり、ひどい倦怠感に襲われ起き上がれなくなった。
秋頃になって、うつ病ですねと診断される。
「休んでいいよ」と医者には言われたものの、受験は私を待ってはくれない。周りがどんどん受験に向けて努力していくなか、思うように勉強ができない自分に劣等感がつのるばかりだった。
ああ、私は努力ができない人間なんだ。もう人生終わったな、と本気で思っていた。
結果的に、クラスメイトが行くような大学に私は合格できなかった。
でも、私は、受験に失敗して良かったと思っている。なぜなら、新しいことに沢山出会うことができたからである。
受験に失敗したことで、自分には縁がないと思っていた女子大に通うことになった。
「女子大って出会いないじゃん!」と思って、今までの自分だったら絶対に足を踏み入れない恋活パーティーとやらものに参加したら、彼氏ができた。
大学で今まで仲良くなったことがないような友達や、心から尊敬できる先生に出会うことができた。今まで自分には縁がないと思っていた渋谷に通うようになった。渋谷を歩いていたら、偶然天狼院書店という書店に立ち寄った。そこでライティングゼミという講座を紹介してもらい、今、私はこうやって記事を書いている。
もし、この記事を見ている高校生がいたら伝えたい。
結局は、受験は「縁」であると私は思う。
私は、受験当日に迷子になり不合格を確信していた大学に通っている。受験直前まで、大学の名前すら知らなかった。
でも、今はこの大学にいる自分以外を想像できないくらい、充実した毎日を送っている。この大学じゃなければ、出会えなかった人や機会が沢山あると身をもって言える。
第一志望でなくても、望んでいた大学でなくても、結果として巡り会えた大学は、きっとあなたと縁があった大学だ。だから縁を信じて、自信を持って進んで欲しいと思う。
***
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