隣の地域は青く見える
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:土肥瑞希(ライティング・ゼミ超通信コース)
現在東京在住だが、生まれは四国の徳島、その後、山口県下関や栃木県宇都宮と都心ではない地域を転々としてきた。
20代前半までは地方と呼ばれる地域にて暮らし、まぁ何度も東京や大阪のような都市部に憧れた。
見上げるほど高く立ち並ぶビルや溢れる人々、お洒落なお店。
テレビから見える全てが輝いて見えたのだ。若い私にとってはすぐに行くこともできない場所での日常。その場所に強い憧れを持っていた。
地方での暮らしに退屈さと劣等感を抱き、都市部での暮らしに憧れの気持ちを抱えて生きてきたが、そうした日々も2年前に終わり、東京への転勤が命ぜられる。
当初はすぐにでも引っ越しをして東京で新しい暮らしを始めたかったし、実際に東京へ住みだしてからは友人との距離は縮まり、希望するものが容易に手に入り、どこにでも行きやすい便利な生活を得ることが出来た。
例えば、東京以前に住んでいた宇都宮では、お気に入りの服を探すのに自転車を30分漕いでようやく辿り着く郊外のデパートを目指すか、バスに乗って20分の所にある大型モールへ行かなければならない。現在のような仕事帰りにぱっと立ち寄れ買い物ができる場所のある生活は、かつての憧れであった。
過去から繋がりのある友人関係を継続することも頑張らなくてもよくなった。仲が良い友人の多くは関東の首都圏に住んでいる。宇都宮からも2時間半ほどかければ行けなくはないし、実際2週間に1回は首都圏に出ていたが、そうした生活を送ることは容易ではなかった。無理をして友人関係を繋ぎとめる生活に少し疲弊をしていた。だけれども孤独にはなりたくなかった。住んでいる地域で新しく友人つくればよいとも言えるのだが、車もなくどこにも行きづらい私には一から人間関係を構築することも難しかった。
そんな日々を送っていた中での首都圏への転勤。
圧倒的に喜びの気持ちが私の中の多くを占め、抱えていたストレスや不安、孤独から解放されるのが待ち遠しかった。
実際、想像していた以上に、東京での生活を通して私の環境は大きく変化した。
出会える人が圧倒的に増えた。友人にもすぐ会え、孤独を感じなくなった。
情報、モノ、コミュニティと手に入れたいものがすぐ手に入るようになった。
行きたい場所や美味しい食べ物の選択肢が大幅に広がった。
その他にも環境が変わった要素は多々あったが、過去の私がずっと抱えていた苦しみや孤独、劣等感が軽減されたように感じた。
そうした環境の中で過ごす日々。
一度立ち止まり考えさせてくれたのがコロナに伴う社会の変化だった。
都市部にいても断絶される日々。どこにも行けず、気を使いながら日常生活を行う。確かに憧れていた地域での生活ではあるけれども、本当に求めていたものはこれなのか次第に考えるようになった。
コロナが少し落ち着いた時期に久しぶりに以前住んでいた栃木県を訪れた。そこはかつて早く出ていきたくてしょうがなかった場所であったが、なぜかあの頃とは感じる思いや見える景色が少し違う。
人が密集しておらず適度に広々とした駅前。
だけどそこには温かく迎えてくれる人がいる。
時代が流れても変わらずそこに存在する安心感のある建物や自然。
地産地消の食材を使用した、安価だけども美味しく身体が喜ぶ料理の数々。
少しの滞在ではあったが、心が軽くなるように感じた。
かつて栃木にいた頃は、早く外に出たいと切望していたはずなのに、ここで過ごした日常を少し恋しく思うのだった。
もしかすると、一度手放したものだからなのかもしれない。
「隣の芝は青く見える」
というように、手放し、今は自分の日常じゃないからこそ憧れ、懐かしく感じ、そこに少し固執してしまう。
ただそれでもだ。かつてあまり好ましく思わなかったこの地での、暮らしの良さを知れたのは、自信の成長を感じられた瞬間だった。
手放したからこそ知れる良さに私は出会えたのだ。
この経験をきっかけとして、最近は他の地域についても見え方が少し変わってきた。
何を大切に人々がいきているのか、そこで私はどうなれるのか。そんなことを考えるようになった。
今の生活は好きだ。
コロナが落ち着いてきて、当初のような生活が東京でも少しずつ出来るようになってきた。きっと当分はこの地域で暮らしていくのだろう。
ただ、その先の未来に私はどこにいるか分からない。
この場所にいるかもしれないし、首都圏からは遠く離れた場所に移動しているかもしれない、はたまた海外の可能性もある。
きっとその時に大切にしたいものを求めて、新たな地域へ移り住むのだろう。
***
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