今更だけど文芸誌を読む

伊坂幸太郎を特集した雑誌が、最高にクールで面白い件について《全力で文芸誌を売ろう 第二回》


ずっと、実在しない人間だと思っていた。

その人の名前は、「作者」として多くの小説に載る。

だけど、まさか本当に、この小説たちを書いた人が、人間だなんて。
神様や人工知能じゃなく、また何人もの人間の共同作業じゃなく、たったひとりの人間だなんて。

思ってもみなかったのだ。

この雑誌を読むまで。

―――彼の名は、伊坂幸太郎。
『重力ピエロ』『ゴールデンスランバー』『アヒルと鴨のコインロッカー』等の作者である、日本人男性だ。

 

***

こんにちは、京都スタッフ三宅です!
天狼院書店の企画「文芸誌を全力で売ろう」企画、第二回でございます!

ちなみに第一段はこちら。
4月20日創刊の文芸誌「小説BOC」が未だかつてないほどめちゃくちゃ面白い件について《全力で文芸誌を売ろう 第一回》

この企画の第二回を担当するにあたり、
川代さんから「何か面白い文芸雑誌ない?」と言われ。
「文芸雑誌って言っていいかわかんないですけど、
最近あっためちゃくちゃ面白い雑誌といえばこれです!!!!」
と、私が全力で推したのが、今回紹介するこちらの雑誌です。

 

『伊坂幸太郎—デビュー10年新たなる決意 (文藝別冊)』

 

文藝別冊が、まるまる一冊使って伊坂幸太郎を特集した雑誌。
なのですが、この雑誌、もう、ほんとに、めちゃくちゃ面白いんです。
伊坂幸太郎作品を一冊でも読んだことがあれば楽しめる。
あの緻密で完璧な伊坂幸太郎作品は、こういう風に作られたのか!
そんなことを知ることのできる、作家「伊坂幸太郎」の秘密を手に入れる魔法の書なんです。

 

 

個人的な話をしますと、私が伊坂幸太郎にはじめて出会ったのは中学生の時。
『ゴールデンスランバー』という作品で、ド胆を抜かれたことをよく覚えています。

「なにこの小説……世の中に、こんな小説があるんだ……!」

まず、伏線の回収の仕方が、やばい。どんでん返しも甚だしい。点でしかなかったものが、どんどん線になる感じ。あと、読みだしたら止まらない。目が勝手に文字を追う。最後の方になるにつけて、どんどんエネルギーが上がってゆく。

……とまぁ、私の貧弱な語彙力で語ったところで、あの小説の衝撃は表せないんですけれど。

私、ずっと思ってたんですよね。

「伊坂幸太郎は、ひとりの作家じゃないに違いない!!!!」

だってだって、ひとりの作家が書いたにしては、あまりに完璧すぎるんだもん。
読みやすくて面白いのに、ちょっとした伏線回収がうまくて、アクが強いと見せかけて実は皆に読んでもらいやすくて、どんでん返しもあって、音楽も映画も小説もたくさんの名作が引用されてて、
一人で書いてないでしょコレ!?
ハリウッドとかディズニーみたいに脚本家何人も用意して書き上げてるでしょ!?!?

ずーっとそう思っていたんです。
伊坂さん、長いあいだ公に顔を出しませんでしたしね(まぁ顔を出すようになってからも、「いやあれはリーダーに違いない」と思ってましたけど……!)

 

しかし、その幻想がずどんと破られたのが、この雑誌。
伊坂幸太郎の創作法から、はじめて書いた小説から、影響を受けた作品の紹介に至るまで、徹底して完璧な、ただひとりの「伊坂幸太郎」の秘密でしかなかった。

「なるほど、そういう練習をすれば、ああいうアクションシーンが書けるのか……」
「そうか、こういう作家から影響を受けてるからあんなに緻密な話になるんだ」
「あの映画化に対して、こんな感想をもってたんかー」

 

夢中でこの雑誌を読みながら、私は思いました。

「ああ、伊坂幸太郎って、ほんとに実在するのか……」

 

それはある種、敗北感に似たような感覚でした。
世の中には、あんなに緻密で面白くて完璧な小説を書ける人間が、いるんだ、と。
そしてその人たちも、コツコツ努力を重ねて、あそこまで緻密で面白くて完璧な小説にしているんだ、と。

 

それは、伊坂幸太郎という「神様」みたいな存在が、
急に私の目の前で、
「人間」として、にやり、と笑った瞬間だったのです。

 

現代のエンターテイメントに関わるすべての皆様。
伊坂幸太郎作品を一冊でも読んだことのある皆様。
この雑誌、読んだ方がいいです。

「神様だって、いろいろ考えて努力して、神様になってるんだな」
って思える、最高にクールで面白い雑誌ですから。

 

*当書籍のご注文は、天狼院書店で承っております。
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