ダイエットがうまくいく人はMっ気が強い人である
記事:高橋和雪 (ライティング・ゼミ)
「お腹周りが世紀末のあなたに!」
威勢の良いナレーションが聞こえる。
「救世主登場! これをお腹につけるだけで、自動でブルブル震え腹筋が鍛えられる。みるみるお腹が引き締まる。あなたも楽に理想のボディをゲーーット!!」
自動でお腹の肉を震えさせるダイエット機器の宣伝がされていた。
ダイエットをしようと思っていた時だったので、こういう宣伝がやたらと気になった。
その時はこの機械を買わず、週に2日間連続で、果物と水だけを食べて過ごす、というダイエットを選んだ。
他の日の食事は好きなように食べても問題はないし、果物も何を食べてもよかった。
季節は秋だったので、旬の果物、リンゴや梨をメインにみかんやバナナ等、色々な果物を食べた。
果物は美味しかったが、果物と水以外は口に入れられないことは、意外と精神的にきつかった。
なぜなら、仕事中に甘いものをつまむことが多かったし、コーヒーが大好きで1日に3,4杯は飲んでいたからである。
1日目は何事もなく終わったが、2日目になると白米や甘いもの、コーヒーが恋しくなってくる。
だが、2日目を何とか終えたその翌日、異変が起こった。
白米がとても美味しい。
白米の柔らかさ、炊き立ての白米の香りがたまらない。
おかずなしで茶碗一杯食べられる勢いである。
コーヒーもいつもより美味しく感じられた。
普段の食事が食べられることに感謝していた自分がいた。
制限をすることで、快楽が得られたのである。
Mっ気が少し開眼したようであった。
ダイエットを試みたことがある方は、何かを制限するという経験をしたと思う。
食事の量を減らす、1食抜く、炭水化物をとらない、カロリーが少ない飲み物で1食とする等、食事の種類や量の制限をしたと思う。
食事だけでなく、運動を始めた人もいると思う。
1日30分ランニングをする、ジムで水泳をする、最寄り駅の一駅前で降りて歩く等、普段行わないことを始めたと思う。
ダイエットをすると、普段の生活に何らかの制限や負荷をかけることになる。
職場の同僚の女性に、先述した果物と水のダイエットの話をしたことがある。
非常に興味を持ったらしく、さっそく翌朝、家で切ってきたリンゴを見せてくれた。
今日のお昼ご飯はリンゴだけ、と嬉しそうに語っていた。
だが、昼時にいきなり、すごく寂しそうな顔をして話しかけてきた。
「これだけじゃひもじい!」
と言い、外に出てしまった。
帰ってきた彼女が手にしていたものはとんかつ弁当。
とんかつを嬉しそうに食べる彼女の笑顔が、まともに見られないくらいキラキラと輝いていた。
とんかつ弁当が食べられることがよっぽど嬉しかったに違いない。
実は、彼女がダイエットを続けられるサポートをしたい、と思って同じ日に果物の日を決めていた。
とんかつの匂いが漂う中、一人むなしくリンゴをシャリシャリと食べていた。
彼女にはこの方法は合わなかったのだろうか。
実際、世の中にはダイエットの種類はたくさんある。
色々なダイエットが新しく現れては消えており、ダイエットの興亡は昔から続いているように思う。
また、雑誌の特集や、書店からダイエットの本が消えることもないのだろう。
薬局やインターネットのサイトから、食べてもカロリーはなかったことになる食品や、飲むだけで痩せるのでは、と思わせるようなサプリメントが消えることもないのだろう。
結果にコミットメント、と言うような宣伝をしているジムもあるが、トレーニングや食事はコーチの手でしっかり管理されている。
ある芸能人が、こちらのサービスを利用していた時に、チョコレートを食べたことをコーチに話したらとても怒られたという芸能記事を見かけた。
監視と言ってもいいレベルである。
もしかしたら、ダイエットはここまでしないと続かないのかもしれない。
また、ダイエットを続けるには意志が必要だ、とも聞く。
痩せて可愛い服を着たい、健康診断で引っかかって医者に勧めらたから痩せたい、海で6パックを見せつけたい等、その動機は何でもよいのだと思う。
ダイエットには、強い意志も必要なのかもしれない。
だが、それだけなのだろうか。
ダイエットを続けることは我慢すること、制限を受け続けるということである。
言い換えるならば、いじられ続けられて大丈夫かということになる。
そうであれば、いじられることを楽しめるMっ気が強い人ほど、ダイエットを続けられるのではないだろうか。
食事や運動、人の手による制限や我慢することの中に、喜びを見出すことができるからである。
逆にSっ気の強い人は、自分に制限をかけるよりも、他人に制限をかけたりいじったりする方が好きなのではないだろうか。
例えば、ダイエットを頑張っている人と食事に行ったとき、
「ダイエットしているんだ、すごいね!」
と言いながら、笑顔でデザートのケーキを美味しそうに食べる様子を見せつけるのと、
ダイエット中なのに一緒に食事に行って
「ちょっと、ダイエット中の私のそばでケーキを食べないでよー」
と言いながら美味しそうにケーキを食べる友を見て我慢をするのではどちらが好きだろうか。
きっと、前者の方が好きなSっ気が強い人が多いと思う。
だが、Mっ気が強い人は、後者を選べる。
やめてよーと言いながら、ニヤニヤしている。
いじられることが嬉しいのである。
Sっ気の強い人はいじることは好きでも、いじられることには慣れていない。
そんな強気な性格の人が、制限が必要なダイエットが続くかと言えば難しいのではないだろうか。
ダイエットがうまくいかないと落ち込んでいるあなた、他の方法がいいのかなぁ、と悩んだり、我慢強くないなぁ、と自己嫌悪に陥ったりする必要はない。
そんなあなたはただSっ気が強いだけである。
ダイエットに成功したければ、方法はきっと何でもいい。
もしかしたら、コーチも意志もいらない。
必要なのは、ほんの少しのMっ気である。
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