冬にこそ行くべきはイルミネーションでもスキー場でもなく、あそこだと思うんだ
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:大村沙織(ライティング・ゼミ超通信コース)
「明日も早出かあ……」
誰ともなしに呟いた言葉は、無人のロッカールームに空しく響いた。
今日で終わるはずだった明日の報告会の発表資料作成が終わらず、早出しなければいけなくなってしまった。
週報会は午後だが明日午前中には別の会議があり、時間が取れそうにない。
朝の時間を活用して終わらせるしかなさそうだ。
まだ火曜日なのにこんなペースで週末まで体力は持つのだろうか……?
不安のあまり、気持ちは落ちていく。
負の感情を抱えたまま作業着から私服へ着替えて、ロッカールームから出口へ向かい、外へ出るドアを開けた。
「さむっ!」
思わず首にかけたストールをきつく巻き、冷気の遮断を試みる。
いつの間にこんなに冬の足音が近づいていたのだろう?
ついこの間まで「だいぶ過ごしやすくなったね」と同僚と言っていたような気がするのに。
寒さとブルーな気持ちのおかげで、早く車に入って温まりたいのに足が重い。
駐車場までの5分足らずの道がひどく遠く感じてしまった。
こんな寒い日には、あそこに行くに限る。
暖が取れて現実逃避ができて、しかも達成感も味わえてしまうあの場所に。
車を走らせること約30分。
ようやくたどり着いたその場所は夜9時を過ぎているというのに煌々とした灯に包まれていた。
まるで私を待っていてくれたかのようで、少し嬉しくなる。
手近な場所に車をとめて、早速建物の中へ向かった。
空調がきいた受付で入館登録を済ませ、奥のエリアへ進む。
カーテンをくぐると、いくつもの同じ顔をした扉が上下に並ぶ空間が広がる。
適当な扉を探し、中に上着とストールを入れる。
背中に背負った荷物は床に置き、必要なものを取り出す。
秘密道具達が入った耐水性のバッグ、タオル、水の入ったシェイカー、白い粉3種類。
シェイカーには白い粉を1種だけ加えて、よく振っておく。
そして耐水性のバッグから、いつもの3点セットを出して着替える。
今度着るのは作業服ではなく、水着だ。
水着にキャップ、ゴーグルをつけて、先程作ったドリンクを一口飲む。
疲労を抑えてくれる成分が入っており、飲むと飲まないとでは翌日の体の動きが違う。
「準備完了、さて、泳ぎますか!!」
内心で気合を入れ、私はプールに向かった。
泳いだ後に得られるものの大きさを思ってニヤつく口元を隠しながら。
冬場こそスポーツジムに行くのが良いと気づいたきっかけは、家にある体重計だった。
体重計に乗る時間帯やタイミングはバラバラで、ご飯を食べる前に乗る日もあれば、お風呂に入った後に乗る日もある。
ダイエッターに見られたら「正確な測定ができない」と怒られてしまうような使い方かもしれない。
それでも体重は健康のバロメーターになるような気がして、2,3日に1回は体重計に乗り続ける日々を過ごしていた。
我が家の体重計は裸足でセンサー部に乗ると、体重だけでなく体脂肪率や基礎代謝量、筋肉量なども出してくれるタイプのものだ。
何となくの傾向でも分かれば良いかと、ある日何の気なしに手帳にメモしたこれらの数字をエクセルで折れ線グラフにまとめてみた。
春先から記録し始めた数字は点の数は少ないものの、半年分以上ともなるとそれなりの傾向が見えてくる。
体重も体脂肪も変化がないことに安堵していたが、そんな中で目を引いたのは基礎代謝量のデータだった。
記録を取り始めた3月終わりから11月までの記録の折れ線グラフの形状がとても興味深かったのだ。
3月からは徐々に下がり始め、10月で底を打ち、11月に入ってからは増加傾向に転じているように見受けられた。
V字を描いているグラフは、果たして皆こうなるものなのだろうか?
ふと気になって調べてみると、どうやらV字になるのは日本人の特徴のようだ。
一般的には3月から10月にかけて次第に下がっていき、春から10月にかけて数字は上がっていく。
すなわち日本人の基礎代謝量には季節性があるというのだ。
外国人だと季節による基礎代謝の違いは見られないとの調査結果もあるらしい。
日本人の場合ダイエットは冬にする方が良いと言われているのが、春から夏にかけての基礎代謝よりも秋から冬にかけての代謝量が増加傾向になるからだということも、このとき初めて知った。
実際に自分の体もそうなっていたので、とても説得力がある。
冬場は寒くなり、どうしても運動が億劫になってしまいがちだ。
でも冬場の方が基礎代謝量が高いという事実を知っていれば、たとえ少し寒くても「ダイエットのチャンス!」とやる気になれるのではないだろうか?
この事実を知ったあなた、冬場は二重の意味でダイエットチャンスと言えることにお気づきだろうか?
前述の通り、大体の人は「寒い冬に動きたくない」、「家で温まっていたい」という心理が働いてしまい、なかなか運動するというアクションを起こせない。
しかしそれに逆らうように運動ができれば、どういう気分になるだろうか?
「他の人が家でぬくぬくしている間にも、自分はしっかり運動して、健康に気を配れた」
「寒かったけど、きちんと運動の時間を確保できた」
寒い中少しでも運動できれば、自分に対する自信がわいて、自己肯定感が増すことは想像に難くない。
「秋に太っちゃったけど、この冬で運動を頑張って体重を元に戻せた」という経験ができればしめたものだ。
おいしいものに囲まれた秋に肥えてしまった己の体を見直し、だんだんと露出が増えてくる春に向けて体を絞れれば、相当な自信に繋がるはずだ。
言葉を選ばずに言えば、他の人よりもリードできたという優越感も持つことができそうだ。
冬場の運動は自己肯定感の入り口になり得る可能性をも秘めているのだ。
冬場に運動するのが良いのであれば、何もわざわざスポーツジムに行かなくても良いんじゃないかという意見もあるかもしれない。
確かに冬場であっても外でランニングをしたりする人達を見かける。
彼らと同じように自力で運動できれば良いのだが、残念なことに多くの人の意志はそこまで強くないと思う。
そこで「自分はダメだ」と責める前に、考え方を変えてみよう。
「意志が弱いからこそ、スポーツジムという場の力を借りる」と思考をシフトしてみるのだ。
自力だけで運動しようとすると、それこそ「今日は疲れたから」や「今日は天気が悪いから」などの理由で運動を避けて通ってしまいがちだ。
ただでさえ冬には「寒い」という運動を遠ざける大義名分があるのに、寒さ以外の壁も自分の意志の力で克服しなければならない。
きつい、相当きつい。
少なくとも私にはそんな芸当は難しかった。
なので最低限のゴールを「ジムに行く」に置き換えることにした。
ジムに行けば、当然運動している人がいる。
その人達を見て刺激を受ければ、自分も運動する気になれるかもしれない。
もしそれが知り合いだったならば、きっとより「頑張ろう」という気持ちを掻き立てられるはずだ。
もしもっと仲の良い人達ができれば、一緒にスポーツをすることで励まし合ったりすることができるかもしれない。
それはきっと冬の寒さや面倒臭さを上回るモチベーションになり、あなたをジムへと駆り立てる力になってくれるだろう。
仲間がいなくても、少しだけのつもりで始めてみたら気分転換にはなるし、仕事で嫌なことがあった日にもストレス解消ができると思う。
実際、夢中になって運動している間に怒りやモヤモヤした心が落ち着き、冷静になれたシーンは私の場合は相当数あった。
更にジムにはもう1つ、仲間や運動している人以外にも「場の力」と言える要素がある。
寒いと人は温もりを求める。
温もりとは人肌だったり暖炉の炎だったり常夏の島だったり、いろいろと考えられるが、日本人だったら多くの人が思いつくのではないかと思う―温泉の存在を。
そう、スポーツジムには温泉がある!
最近のスポーツジムは温泉付きのところも少なくはない。
温泉とまではいかなくても、少なくとも家よりも広い浴場があって、たっぷりのお湯がはられた湯船がある!
運動した後に疲れた体を心地よく湯船に沈める。
脱力して四肢を伸ばすも良し、疲れた部位をマッサージしてあげるも良し、水風呂と交互に入ってサウナ風に楽しむも良し。
いずれにしても湯船の中で過ごす時間は至福の一時ではないだろうか?
正直なところ、私はお風呂に入りたくてジムに通っている側面が少なからずある。
特にプールで泳いでいると当然全身水に浸かり、ダッシュの練習などで体は激しく使うものの芯は意外と冷えているような気がする。
そこにジャグジーや大浴場の湯船のお湯がとてもきく!
特に冬は芯まで温まればぽかぽかになれ、自分が鍋やおでんの具材にでもなったのではないかと錯覚してしまう。
そうなったら外の寒さも何のそのなこと間違いなしだ。
更にぽかぽかの状態から徐々に体温が下がると、眠気が自然と襲ってくる。
睡眠に深く関連する深部体温が体温の低下と共に徐々に下がるからだ。
運動の疲れも相まって、いつもより深く眠れるような気がする。
すなわち睡眠の質も良くなっているということではないだろうか?
冬にスポーツジム通いをお勧めする理由を挙げてみた。
ジムでする運動は泳ぐのでも走るのでも筋トレでも、何でも構わない。
冬場に代謝が上がるという事実を認識した上で根気よく運動すれば、痩せるのも夢ではないかもしれない。
その上気分転換(現実逃避ともいう)や睡眠の質アップにも繋がるのであれば、行かない手はないだろう。
そのための力が、スポーツジムには十分に備わっていると、私は思うのだ。
まずは家の近くのスポーツジムを探すところから始めてみませんか?
気に入ったのであれば、是非ともこの冬の間に(ここ大事)体験・入会をご検討いただきたい。
それがあなたの冬を素晴らしいものにしてくれることを祈ってやみません。
グッドラック!!
***
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