母が三人になる日
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記事:haruki (ライティング・ゼミ2月コース)
母の日 届いたよ。
LINEメッセージが届いた。
今年も無事に終わってよかったと思う。
母の日を意識するようになったのは、いつ頃からだろうか?
そもそも母の日って何? と思い調べてみた。
アメリカから始まり、1949年頃から日本でも徐々に広まっていったようだった。赤色のカーネーションを渡すようになったのは、花言葉が「母への愛」だからだった。
自分が中学生や高校生の時には、母の日は日本でも広まっているようだったが、まったく考えたことがなかった。親に反抗的だったことは覚えている。母親に愛情や感謝する気持ちもほとんどなかった。親は子供を育てるのは当然の義務だと思っていたからだ。大学生になり一人暮らしを始めて、これから何でも一人でやっていかなくてはいけないと決意をした。しかし、毎日の講義や試験の忙しさから何もできずに、結局、洗濯や食事の用意を母親に頼ることになっていた。今思うと情けなくなってくる。まだまだ母親がやってくれて当然と思っていたのだろう。
就職して、結婚してから妻の影響もあり母親に対する考えも少し変わったような気がする。
ある時、妻より
「母の日は何を送る?」
と突然聞かれた。
今まで、全く意識したことなかったので
「別に何もしなくてもいいんじゃない? 今までも何にもしてこなかったから」
すると
「それは、だめだよ。今まで、育ててくれたのだから。ちゃんと感謝の気持ちを年に1回ぐらいは示さないと!」
それから、妻の考えもあり自分の母親と妻の母親の二人の母にプレゼントを贈るようになった。毎年のように妻がプレゼントを考え、贈ってくれていたので母の日をあまり意識せずにそのまま過ごしていた。
子供ができて、子供も育ち幼稚園児になると幼稚園の行事で、母の日のプレゼントを作るようになり、子供たちは嬉しそうに母親にプレゼントを渡していた。これは、なかなか良いことだと思った。これから成長して、毎年母親に感謝の気持ちを自然に何も考えずに伝えてくれればいいと思っていた。
しかし、子供達も親に似るのか、中学生となると反抗期。
「なぜ 子供の日には何もしてくれないのに、母の日に何かしないといけないの?」
と言ってくるようになった。
幼稚園児の時のような無邪気な気持ちは全く残っていないように感じた。これでは、良くない! と思い母の日になると毎年のように、子供達と一緒に花屋さんに行き、赤いカーネーションを買って渡すようにした。
今年の母の日は、たまたま仕事の都合で家にいない日だった。子供達も高校生になった。そろそろ自主的に母の日のプレゼントを学校帰りにでも買ってきてくれるだろうと思い、何も触れずにその日を過ごした。
母の日の翌日に家に帰ってくると、妻より
「母の日、子供達から何もなかったよ。今年の母の日は終わったけど、まだまだプレゼントは受け付けていると伝えているけどね」
とちょっと寂しそうに言われた。
子供達から話を聞いてみると
「試験前だから忙しい! 友達は誰も母の日に何もしてないよ。ところで毎年何をしていたっけ?」
といった感じだった。
この調子では、自主的に母親に対する愛情や感謝をするには程遠いと感じ、翌日、仕事途中にこっそりカーネーションを買いに花屋さんにいった。母の日が過ぎて少し経っていたので、数は少なくなっていたが、花屋さんはたくさんのサービスをしてくれて、いつもよりかなり豪華になった。家に寄って、玄関横のガレージに妻に見つからないように豪華な赤いカーネーションを隠し、子供達にLINEメッセージを送った。
「試験良く頑張ったね。試験のご褒美にガレージに母の日のプレゼントがある。ちゃんと渡すように!」
すると
「おけ」
とだけ返事がきた。ちゃんとうまく渡してくれるかなと思ったが、その日の夜に妻よりLINEメッセージが届いた。
「母の日 届いたよ。ネタばらしをしながら、ニヤニヤとして、すっごい大きなカーネーションを渡してくれたよ」
せっかく妻にばれないように準備していたが、子供達はあっさりと仕込んでいたことを話して渡していた。何も考えてないのか、正直なのか。それでもよかった。よかった。と思いながら、いつまで三人の母親に母の日のプレゼントを送るのだろうかと思った。自分自身も同じだったが、本人が母親や父親になって親のありがたさがわかり、その愛情や感謝する気持ちがわかる。子供たちが母の日を自主的に意識する日は来るのだろうか? と思いながら、毎年母の日をむかえて、三人の母親の愛情や感謝を感じ、子供の成長も楽しんでいこうと思う。
***
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