卒業する年長さんへ。 お母さん達の挑戦。
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:J子(ライティング・通信福岡会場)
「いよいよ年長さんも卒園するね、さみしくなるね」
ママ友のみずきちゃんとみほちゃんと会った時のできごと。
現在みずきちゃん、みほちゃん、私の子供たちは年中さんだ。
年少さん10名、年中さん9名、年長さん10名、全学年合わせても29名。
他の幼稚園よりも小さな規模の幼稚園だ。
田んぼの時期になるとどろんこ遊びをしたり、どろんこ遊びの後は、みんなで幼稚園にある手作りの五右衛門風呂に入ったり、保護者も一緒にどろんこ遊びをしたり。
まるで幼稚園に通う家族は、みんなひっくるめて大きな家族のような存在だった。
育児で悩んだときは、先輩の年長さんのお母さんが沢山話を聞いてくれた。
本当にお世話になった。
みずきちゃんが切り出した。
「何か私たちから年長さんの子供たちやお母さんへ卒園おめでとうの気持ちを込めた贈り物できないかな?例えば、卒園する保護者と子供たちに向けての音楽会はどうかな?」
みずきちゃんはバイオリニスト、みほちゃんはピアノ経験者だ。
その後、話はとんとん拍子に進み、みずきちゃんはバイオリンで何曲か演奏し、
みずきちゃんとみほちゃんは「旅立ちの日に」という曲を演奏することになった。
私はというと、楽器できないし、どうしようかな。
ま、今回は裏方で盛り上げようかなと思っていた。
すると、みずきちゃんから意外な提案が。
「あすかちゃんはダンスしたらどうかな?あすかちゃんの明るい雰囲気ダンスに活かせるんじゃないかな?いい声しているし!ダンスを子供たちやお母さんとやったらきっと盛り上がるよ!」
ダ、ダンス!?
ダンスはほぼド素人だけど、大丈夫かな?
不安もあったけど、私も何か感謝の気持ちを表したいとも思った。
話し合いの結果、私は子供達やお母さん達と一緒に楽しめるダンスと司会を担当することになった。
やると決めたのだが、
頭をフル回転しても、振り付けはでてこなかった。
時間はどんどん過ぎていき、本番まで残すところあと2週間となる。
我が家で悶々としてたとき、突然救世主が現れた。
「ピンポーン」
インターホンをとると、よく遊びに来てくれる近所の小学生だった。
「ねえねえ、あすかちゃん、今度ね、卒業する6年生のためにダンスおどるんだ!
見ててね!」と言ってスマイルという曲に合わせてダンスを踊ってくれた。
かわいい振り!
ダンスも簡単そうだし、この曲なら春の音楽会でも使えるかもしれない。
動画をとらせてもらい、その日から猛特訓が始まった。
何度も何度も動画をみながら、体に振りをしみこませた。
演奏会のことを同じ幼稚園の年少さんのお母さんのみきちゃんに話した。
「とってもいいアイディアだね。私も何か子供たちを喜ばせたいな。そうだ、家に着ぐるみがあるんだけど、その着ぐるみを着て子供達と一緒に踊るのどうかな?」
年長さんを喜ばせたい。
その想いが連鎖しとても嬉しかった。
着ぐるみの名前を「ごん太くん」と命名し、
演奏会の時にサプライズで出演してくれることになった。
いよいよ本番当日。演奏会がスタートした。
「じゃあ最初はさんぽの曲で遊ぼっか?みんな、こんなリズムで足踏みしていましょう。
せいのでジャンプ!手でパンパンパン!今度は小さくパンパンパン!
では、音楽スタート!」
子どもたちも年長さんのお母さん達もノリノリで鈴を振ってくれ、会場の雰囲気は和やかになってきた。
「みんな楽しかったかな?次の曲は葉加瀬太郎さんのエトピリカという曲です。希望の風にのって大空にはばたく海鳥をイメージして選曲しました。それではどうぞ」
みずきちゃん優しいバイオリンの音色は、瞬く間に子供達の心をつかんだ。
みすきちゃんは、少しでもお母さんや子供たち1人1人が間近でバイオリンを感じられるように歩きながらバイオリンを奏でてくれた。
いよいよ私のダンスの順番だ。
「今からスマイルという曲を踊ろうと思います!どんな時も笑顔で入れられたいいなと
思い選びました。お母さん達、日頃中々動く機会少ないですよね。この機会に体を動かして、肩こり解消しましょう!あとね、実は今日みんなの卒園をお祝いする為に来てくれた
お友達がいます。みんなでごん太くんと呼んでみよう!」
「せ~の、ごん太くん!」
「キャー!」
子どもたちはごん太君が登場するや否や抱き着いた!
ごん太くんも一緒にスマイルを踊った。子供たちはおおはしゃぎ!
みんなでごん太くんの隣を取り合いしていた。
「みなさん、振りも笑顔もばっちり!素敵でした!ありがとうございました!」
ダンスのパートが終わり、最後は「旅立ちの日に」の曲になった。
「最後の曲は旅立ちの日にという曲です。この曲は卒園、卒業、新級など、人生の門出の
お祝いと応援の気持ちを一番表せる曲だと思ったので選びました。
こどもたちおめでとう!お母さんお疲れ様でした!私たちは年長さんの子供達、お母さん達に出会えたことに本当に感謝しています。今まで本当にありがとうございました。
それでは演奏させて頂きます。歌詞カードがあるので、よかったら一緒に歌いましょう」
その後アンコールを2回頂き、無事演奏会は幕を閉じた。
演奏会終了後、お母さん達がサプライズで花束をプレゼントしてくださった。
また、沢山の温かいメッセージをもらった。
「本当によかったよ。想いが伝わったよ。森の幼稚園に通えて幸せだった。
最高のプレゼントをありがとう」
「本当に素晴らしい機会をありがとう」
ありがとうを伝えるつもりが、ありがとうを沢山頂いてしまった。
家に帰って娘に聞かれた。
「ねえねえ、ごん太くんの中にいたのはみきちゃん?」
「誰だろうね。みなこの卒園式にごん太くん来てくれるといいね」
私は少し笑いながら答えた。
***
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