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【大人女子必読】大人の女性の栄光と挫折


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記事:小矢さま(ライティング・ゼミ)

今から30年以上前のこと。
「この頃シワが増えたみたい。嫌だわ、どうしよう……」と言う母に、私、ひどいことを言ったんです。

「別にいいじゃない。もう、年なんだから。誰も見ないって」。

娘から共感の言葉が得られなくて、母は悲しそうな表情をしました。
それでも、美容液をペタペタ根気よく塗っていた後ろ姿が忘れられません。

「今さら誰に見せるっていうの?」 と思っていた私は、ただの愚かな娘だったのです。

私の母は、専業主婦として3人の子育てと家事を一手に担っている昭和のお母さんでした。
両親のことを考えるとき、1970年代に一世を風靡したTBSの国民的ホームドラマ『寺内貫太郎一家』の貫太郎夫婦を必ず思い出します。昨年亡くなられた女優の加藤治子さんが、やさしく、家族をまとめる芯の強いお母さん役を好演していました。

私の母も、父を支え、子育てを全力で頑張った女性でした。自分のことよりも、家族を第一に考えて生きたのです。茶の間にはいつも母がいる。だから家族が集まるのであって、母がいなければ、みんなてんでばらばらでした。母は家族の太陽だったのです。

しかし、ずっと誰かを世話し続けてきた母も、末っ子の私が大学へ入ったころから、自分の生きがいを模索し始めるようになります。母は、ある頃を境に、狂ったように外出するようになりました。それは、婦人会や趣味の会、仲間たちとの旅行、ボランティアなど、たわいのないものでしたが、ほぼ毎日家にいなくなったのです。

母がいないと途端に機嫌が悪くなり、「お母さんがいないからメシを作れ!」という父の存在がうっとうしく、私は、内心母が外出するのを良く思っていませんでした。
だから、「今さら誰も見ないよ」という発言になったのでした。

そんな母に驚くほどの人数の仲間がいるとわかったのは、私たち子どもが企画した古希の祝いの数日前に母が突然亡くなったときです。母は他人の世話ばかりして自分のことは全部自分でしたがる人でした。母は、父が中国旅行へ行っている間に誰にも別れを告げることなく突然亡くなったのでした。頼りない子どもたちが大混乱に陥りながら葬儀の段取りをしました。

主婦の葬儀としては異例の人数が参列し、「ちょっとした会社の社長並の参列者数です」と葬儀場の人がわざわざ言いにくるほどでした。私は母がこれほど多くの人に愛され、必要とされていたのかと驚くとともに、母の存在の大きさを改めて痛感したのです。

女性は、主婦をしていても、仕事をしていても、ある程度の年齢になると人生を変えたくなるときが来ます。一人の人間として、自分が主役になりたいときが来るのです。

ですがその頃になると、若さや健康が足りないことも確かです。

よく、高校生くらいの子が、自分のことを「もうおばさんだ~」と言ったり、新入社員が独身の先輩を「お局様」と陰で呼んだりするのを聞いたことがあるでしょう。

若いころは、年齢に対して想像力に欠けるものです。「おばさん」などと言えるのは、本当は自分が若いと思っているからです。だって、どれほど疲れても一晩寝ればお肌も体力も復活するのですから。

私自身、あの頃の母の年齢に近づいていくと、母の気持ちが痛いほどわかるようになりました。焦りと希望。私などは、新しいチャレンジにも気後れしますが、母は常にチャレンジしていました。

一般的に、40代から60代くらいを、「人生の正午」と言うそうです。

正午は太陽が最も高い位置にある時間帯です。
それは勢いがあるという意味で、
輝かしい人生の「収穫の時期」をあらわします。

この年代は、若い頃から積み重ねてきた努力が結果となって見え始める年代なのです。仕事では役職がついたり、家庭では子どもの手が離れたりして、責任をもって頑張ってきた人であればあるほど、果実を受け取るのです。

でもそれは同時に、あとは衰退していくだけというイメージも含んでいます。
ピークがきたら、落ちるだけ。このイメージのために、老化は当たり前という発想から抜けられないのです。

確かに、私たちはある年齢を越えると、「生きる力が弱くなる」ときがあります。
持って生まれた若さ、健康、意欲が減退するように思える時期です。

それは、人生の大転換期の始まりの合図なのですが、女性の場合、だいたい40歳以降のいわゆる更年期と呼ばれる時期にあたるようです。

40~50代、この年代の過ごし方は女性にとってとても大切です。もちろん、若いころも就職や結婚など人生の転機は何度もあります。だけど、体力があるからなんとか乗り切れるのです。

でも、この転換期は、栄光と挫折が同時にくるようなもの。人生の収穫期は反面、残酷にも手に入れてないものに直面するときでもあります。そして、何かを得たいと思ったとき、女性としての美や健康がどうしても必要になるのです。女性は40を越えたら、いろいろな面でごまかせなくなります。

時代はぐるぐる回っていて、年上の女性(母)に対する年齢への信じ込み(偏見)が、そのまま自分を制限するのでした。

年齢や立場に関わらず、誰でも人生の主役になりたい。

だからこそ、あの頃の母のように栄光と挫折をかみしめながら、
私は今日もペタペタと美容液をぬっているのです。

***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、店主三浦のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

 

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2016-08-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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