誰かを洗脳したかったら参考にするといい話
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記事:青子さま(ライティングゼミ)
マヤ暦の大晦日と言われる日から、風邪をひいた。
初日にまず喉が痛くなり、2日目は咳が出始め、3日目には持続的な頭痛と尋常じゃない激しい咳の発作に襲われた。
油断をしているうちに、症状はどんどんひどくなり、声は葛城ユキのようになった。
せっかくなので「ボヘミアン」を唄ってみたくなったけど、そんな心の余裕もないほどに苦しい。
週末には体力勝負の仕事があるので、この数日で回復しなければ!
その日は、午後から友人ののりちゃんと会う予定になっていた。
残念だが、養生を優先するために彼女との約束は諦めることにして、朝のうちにキャンセルのメッセージを入れておいた。
「のりちゃん、風邪をひいてしまったの。今日はキャンセルさせて」
さて、どうやって身体をケアしよう。
風邪は経過を味わうものだと思っているし、自分の自然治癒力を信じている。
だから、今回も病院には行かない。自力で治す!
「そうだ、あれだ。あれをやってみよう!」
私は急に思いついて、がんがんする頭をなだめながら近所のドラックストアに行く。
こんな小さなお店に置いてあるかは疑問だったが、これ以上遠くに出向くエネルギーはないから、この店に懸けてみる。
全身がだるくて、意識もぼーっとして探す意欲も出ないので、直接お店の人に聞くと、店内の隅っこの誰も目にとめないような場所に、それはひっそりと陳列されていた。
いつも行っているドラッグストアで、隅々まで商品ラインアップを知っているはずだったのに、まさか死角があったとは。
聞けば、めったに出ないけど、昔からちゃんと取り揃えておく定番商品だそうだ。
そうだったのかー。
マニアな人しか使わないものだと思い込んでいたけど、こんな小さなお店でも定番化しているということは、意外とみんな使っているのかな。
これが私を救ってくれるかもしれないと期待を寄せて、会計を済ませた。
商品の入ったレジ袋をぶらんぶらん揺らしながら歩いていると、フェイスブックからメッセージが入る。
あ、のりちゃんからだ。
私のメッセージを見て、返信をしてくれたのだ。
「お灸で、咳止めのツボを刺激しな! このサイトに症状別にツボが載っているから、それを参考にね」
ビックリした。
私が手にしているレジ袋の中には、せんねん灸が入っていたからだ。
急に思いついて、生まれて初めてお灸を買ったというのに、のりちゃんはなぜそれを知っているの?
まるでエスパーだ!
さっそく教えてもらったサイトに行って、見よう見まねで咳止めと頭痛のツボにお灸を据えてみる
思っていたより簡単だし、じわっと温かくなって、なんだか気持ちがいい。
すぐに咳が止まるとか劇的な変化はないけど、いい感じ。
それにしても、身体を弱らせて、一日部屋の中でひとりでぼーっとしていると、精神状態も悪くなり、あらぬ方向に思考を巡らせていく。
「風邪だと思っていたけど、もしかして重大な病気にかかっているのでは? そういえば、健康診断サボってたし、知らないうちに病に侵されているのかもしれない。病院に行ったら、深刻な宣告を受けて、すでに手の施しようがないとかなんとか言われちゃうかもしれない……」
果てしなく暗い妄想は、どんどんと広がっていく。
そんな日に限って家族も帰宅が遅い。
ごちゃごちゃと考えないようにするために、早めにベッドに入り休もうとするが、咳がひどくて眠れない。
そういえば、ここ何日も、まともな睡眠がとれていない気がする。
そこへ唐突にエスパーのりちゃんからメッセージが届く。
「がんばれ! 負けるな!」
これまた絶妙なタイミングだ。
のりちゃんの応援がじわじわと胸に染みわたって、泣きそうになるじゃないか!
翌朝。
頭痛はましになったが、まだ咳は止まらない。
咳のし過ぎで全身が筋肉痛だし、夜通しゲホゲホしているので、睡眠不足から朦朧としている。
はぁ。こんなに長引く体調不良になったのって何年振りだろう。
午前中に打ち合わせがあったので、それをなんとかこなさなければ。
それにしても真夏日にマスクをして外を歩くという行為は、なんとキツイのだろう。
帰りにスーパーに寄り、ショウガを買った。
ショウガを食べて免疫力をあげよう、そう思ったのだ。
すると、またスーパーを出たところで、例のエスパーからメッセージが届く。
「むせかえるほどのショウガ汁を飲んで。番茶に、ショウガの絞り汁と梅干しと醤油を混ぜるの」
どうして今ショウガを買ったのを知っているの?
タイミングが良すぎて怖いじゃないか。
ここまで来ると、どこかから私の行動を盗み見ているとしか思えない!
でも、もうそんなことはどうでもいい。
とにかく元気になれるならなんでもする。
私は素直に言われた通りのレシピで作って飲んだ。
飲んだからってすぐに劇的な変化があるわけではないが、身体が温まっていい感じはする。
すると夕方にまたメッセージが来た。
「塩水で鼻うがいして!」
いやー、さすがにこれはどうなの?
塩水で鼻をうがいするなんて……と、もじもじ怖がっていると、すかさずのりちゃんから返信が来た。
「いまさら怖いものなんてないでしょ。やりな! 鼻から塩水吸って口から出すのよ。自衛隊と私は毎日やっている」
自衛隊の皆さんが本当にやっていらっしゃるとは思えなかったけど、のりちゃんは日常的に塩水鼻うがいを実践してから風邪をひかないそうだ。
鼻に水を入れるなんて。
しかも塩水なんて。
怖いよ。気持ちは、やりたくないと抵抗しているのに、身体はそのままキッチンに向かって塩水を作り始めた。
もはや彼女のメッセージが、何か大いなる存在からのお告げのように思えて無視できない。
純粋な親切心からアドバイスをくれるのりちゃんに大変失礼なのだが、これって一種のマインドコントロールのようだ。
心身が弱っている時に、絶妙なタイミングで、親身かつ具体的なアドバイスをもらうと、人は決して抗うことが出来ないのだと知った。
そんなことを冷静に考えながらも、私は真剣に塩水鼻うがいにチャレンジする。
へたれの私は、口まで水を流せずに失敗に終わった。
でも、びっくりなことにその翌日に劇的に回復して、なんとか3日間に及ぶ体力勝負のイベント仕事も乗り越えることが出来たのだった。
何が効いたのか正直分からないけど、エスパー的能力を持つ友人と自分の自然治癒力に感謝した次第である。
本当にありがとう、のりちゃん。
ちなみに、回復した日から、のりちゃんからはぴたりと連絡が来なくなった。
元気になったことまで彼女は察知しているらしい。
***
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