月収1000万円
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:高橋久美(ライティング・ゼミNEO)
そのリンクは、愛読しているメルマガの発行者からやってきた。
「半年に1度きりの特大イベントが今日お昼12時から始まるので、高橋さんには先にお伝えしておこうと思って、今慌ててメールしています!
この教材を買ってくれた高橋さんなら、きっと興味があるんじゃないかなと思って」
きたよー、宣伝メール。
今までそういうの無かったのになぁ。
おうちで子供に英語教育しよう、っていうブログが好きだからメルマガ登録しているんだけどな。教材を作ったあたりから、メールが営業っぽくなってきたんだよな……。
そう思って最初は放置していたのに、毎日毎日、受信箱に届く「メルマガで、完全自動で稼げる!」「ランディングページ作成のテンプレート差し上げます!」など儲け心をくすぐる言葉の数々。
このままじゃ家計の収支がまずい…という主婦の悩みに【頑張るママを応援】という、ドンピシャなメッセージ。特別価格のご連絡まで……!
ついつい詳細ページのリンクをクリックしてしまい、そのうえ、説明動画まで見始めてしまった。この手の宣伝にありがちな7大特典も、ジックリと読んでしまう。
わかっている。
完全に、営業ライティングのテンプレートに乗っかって、その気にさせられているのだ。
わかっているのに、画面をスクロールする手が止まらない。
ふむふむ、仕組みはアフィリエイトというやつで、メルマガを書くだけで収益が上がり、開始して初めての月から月収50万円、3ヶ月後には100万円、1年後には月収1000万円を超える人もザラ!?
いやー、こんなの詐欺でしょう。でも○○さんからの紹介だしなぁ。あの人、最近なんだか羽振りがいいしなぁ。私もメルマガとかやってみたいしなぁ。それでお金になるならいいことづくしだなぁ。1000万円は言い過ぎだろうけど、月収プラス50万円というだけで相当、生活が潤うだろうな。
いやいやいや、でも受講料が。かかりすぎる。
7月から天狼院書店の「無限ラーニングZ」も受講するんだし。
他にも受講しているものあるし。もちろん仕事もあるし。
そもそも「ライティングNEO」講座を受けているのに、毎週、三浦さんに読んでもらえるなんて貴重な機会なのに、課題がギリギリになっちゃうし。もしこれがいい教材だったとしても、正直、やる時間が足りない気がする。
いや、時間の問題ではなく、意識の問題かもしれない。今の私じゃ、出来ない気がする。
でもなぁー。「収益の柱」かー、増やしたいなぁ……。
あ、これ、今日の23:59までなの!?
どうしよう……。
迷いに迷う私。その時点ですでに23:45。締め切りは刻一刻と迫ってくる。
うーん、これは、やってみるしかない…!?
いや、でも……。
迷いながらもクレジットカード番号を入れ始めてしまう。この教材で頑張れば、夜遅くまで仕事している家族にも、ゆとりを持たせてあげられるかも。子供に英会話レッスン受けさせてあげられるかも。下の子も留学とかさせてやれるかも……!
すっかり稼げる気になって画面をタップするところへ、思わぬジャマが入った。
「お母さーん、もう寝なさい。いつまで起きてるの? ケイゴには寝ろ寝ろって言うくせに。自分も寝なきゃダメでしょ!
あとさぁ、赤ペンがないんだけど。どこ?」
YouTubeを見ながら塾の宿題をしていた息子が、珍しく話しかけてくる。
お母さんは今、そんな場合じゃ無いんだよー!
カード番号が! あれ、承認されませんでした!? あ、そうか限度額…。今月、他にも大きい買い物しているんだった。限度額の設定をあげておかないといけなかったんだ……!
ああ、どうしよう、あと7分!
「ねえ! 赤ペン! ないんだけど! 探して!」
「ええー、(自分のでしょ、知らないよ、と答えると怒りだして面倒な事になるので、グッとこらえて)ちょっと待って……」
「もー!! お母さんのちょっと待っては、全然、ちょっとじゃ無いんだもん! 早く! もう!」
昨日も夜更かししたせいで眠さのピークなのか、機嫌の悪さがマックスの息子。だから睡眠は大事だよって言っているのに。思春期に入ってから時々こうなるんだよね、と心の中でため息をつく。
放っておくと余計にヒートアップしそうなので、さっさとその赤ペンを探して、早く他のカードの番号を入力しないと。
あと3分…!
「どこに置いたの? 机の前の棚とか? トイレとか?」
「うーーーん」
無くした本人が考えて思いつかないなら、私が考えても思いつかない気がするけど…。
いつものところは、大体探した。あとはどこだ?
はっ……。
つい今しがた見た、「赤い残像」を思い出した。
そして息子をみた。
シャツの襟首の真ん中に、赤いプラスチックのラインが見えた。
「もしかして、その首に付けてるペンのこと??」
「あ、そうだった……。ゴメン……」
携帯電話の画面を見ると23:59。終わった……。
申し込めなくて悔しい、ではなく、なんだかホッとしている自分がいた。
うまい話に乗ることに、やはり抵抗があったのだ。
1日でも、一刻でも早く収入を安定させたいが、それには、知らないビジネスに考えもせず飛びついても、ダメだと思う。ちゃんと調べたり、自分にとって堅実な方法で、やっていく方がいいと思う。
まずは毎週のライティング課題を、〆切前に提出しよう。
やろうと思ったことを、間に合うように段取り組んで。やりかけの色々を、回収していこう。
月収1000万円には届かなくても、着実に前に進んでいれば、望む未来に近づけるはず。
そんな風に感慨にひたっていたら、またジャマが入った。
「ねー、お母さーん。マシュマロが食べたいー」
あのね、前にも言ったけど、もう夜の12時だけどね??
***
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